第10話『う~ん、空気がおいしい』
すいません、遅くなりました。
テスト・・・イヤです・・・
頭の上から声がする。
「・・・な・・・さ・・・」
「・・・う・・・にゃ・・・?」
「お・・・い・・・!」
「にゅ~~~・・・ん?」
「起きなさいっ!!」
「ん・・・あと5分・・・いや、4日・・・」
「どんだけ寝んのよ!?」
「1か月?」
「増えた!?」
「・・・う~・・・ん・・・冗談ですよ・・・起きました・・・」
目を開けるとフェリシアさんの顔があった。
目の前に・・・
「近っ!!なんでこんなに近いんですか!?」
「そりゃもちろん、するためよ」
「な、なにを?」
「おはようの・・・」
「わーーーーーーっ!!わっ!!わーーーっ!」
「どうしたの?」
「ダメです!それはダメです!」
「なんで?大丈夫よ」
「大丈夫なんですか?何をするつもりだったんです?」
「キス」
「鱚|(注:キス科の硬骨魚の総称。白鱚(シロギス)の身は淡泊で美味)?魚ですか?」
「さかな?ちがうわよ、キスよ」
「やっぱりダメです!!どうしてしようとするんですか!?」
「かわいいから?」
「ダメです!!それに・・・」
「それに?」
「それに・・・まだ・・・したこと・・・ないのに・・・」
言っていて顔が赤くなるのが分かる。
(キスなんて・・・キス・・・)
恥ずかしすぎて、顔を逸らす。
「あー!もぅっ!!かわいすぎっ!ぎゅーーーっ!」
フェリシアさんが思いっきり抱きついてくる。
「うにゃっ!?止めてください!!ダメです!!色々ダメです!!
胸とか・・・イヤっ、とにかく離してください!!」
「大丈夫よ、女同士だし、ぎゅーーーーっ!」
「それはそれでダメです!!それに僕は男です!」
「ほっほっほっ、よほどカオルのことが気に入ったようじゃのう」
「ゼイスさん!笑ってないでどうにかしてください!!」
「これフェリシアよ、離してあげなさい、カオルが困っておるわい」
「ぎゅーーー・・・ふぅ、もう、分かったわよ」
「ふぅ、助かった・・・んと、おはようございます」
「うむ、おはよう」
「ちょっと、抱き足りないけど・・・おはよー」
「まだするつもりだったの!?」
そうして、2日目の朝は始まった。
「よし、それじゃあ水を汲みに行ってもらおうかの」
「はーい、行くわよカオル」
「は、はい!」
と、いうわけで只今絶賛森の中だ。
両手に桶をもって、森の小道を歩いている。
「ん~・・・空気がおいし・・・」
「空気が?味なんかないでしょ」
「味っていうか、空気が、呼吸をするのが気持ちいいんです」
「ふ~ん、そうかしら?」
(あ、昨日起きた時なんでスカートだったか聞かないと・・・)
「そういえば、僕が昨日起きた時、なんでスカートを穿かされていたんですか?」
「スカートの方が似合ってたからよ」
「・・・そうですか」
「そうよ」
聞くまでもなかった。
さて、きれいな小川の前に着いた。
「きれいですね・・・」
「でしょ?ここの水はそのまま飲んでも大丈夫なのよ」
「そうなんですか?・・・じゃあ・・・」
(ちょっと飲んでみよう)
「つめたっ!!でも、おいしーーーっ!!」
「そんなに言うほどなの?」
「そうですよ!!僕の世界じゃ、なかなかこんなおいしい水飲めません!!」
「そう・・・よかったわね・・・」
(うっ、フェリシアさんとの温度差が痛い・・・)
(ちょっと・・・落ち着こう・・・)
「ふぅ~~・・・」
「落ち着いた?」
「はい・・・すいません・・・興奮しすぎました」
「え~と、まあ、いつもここで水を汲んでるんだけど、
ここから、ちょっと上流に行ったところに、カオルが倒れてたのよ」
「そうなんですか~、こんなところから僕をあの家まで運んだんですか、
大変だったでしょう?」
「そんなことないわ、私みたいな獣人族は人より力があるんだから」
「可愛い見かけによらないってわけですね~」
「なっ、ちょっ、そんなことっ、かわいいなんてっ!!あなたに言われたくないわよっ!!」
「え~?かわいいのに~、素直じゃないな~」
「そっ、そんなことよりっ、カオルが倒れてたところ見に行ってみる?」
「う~ん、どうしよう?・・・あっ!そういえば、僕の鞄がない!!」
「じゃあ、そこに落ちてるかもしれないわね、行ってみましょう」
はい、ただいま現場に来ております。
事故の被害者は17歳男性、猛スピードで走ってきた乗用車に撥ねられたものの、
異世界にトリップし、そこで魔法による治療を受け一命を取り留めた模様。
今は、怪我は完治し発見現場を、見物しております。
(・・・とかなんとか、キャスター風に実況してみたり・・・)
「どうしたの?黙りこくって」
「へ?いや、凄い血の量だな~~と」
「そりゃ、いろいろ飛び出すような、怪我だったんだから
服なんか、破れるわ、突き抜けるわ、地濡れになるわで、
そりゃ、着替えさせるわよ」
「納得しました・・・でもなんでスカート?
フェリシアさんズボン穿いてるのに?」
「似合うから」
「そうですか」
「そうよ」
どうやら譲る気はないらしい。
(っと、鞄、鞄・・・)
(ん?・・・なんか、光るものが・・・)
「ん~?あっ、あった、見つかりました」
「見つかった?」
「コレです」
そう言って見せたのは、黒い光沢があり、肩から掛ける紐のある、
いわゆる、エナメルのスポーツバッグだった。
「見たことの無い素材ね・・・コレは布?」
「ちょっと違いますが、似たような物です」
「で?何が入ってるの?」
「スパナ・・・道具とか本とか・・・色々です」
「道具?」
「物を作ったり、直したりする道具です」
「本は?」
「学校の教科書です」
「学校・・・あなた・・・学生だったの?」
「え?・・・これも学校の制服ですが?」
「・・・そういえば制服って言ってたわね・・・
あなた、何歳なの?」
「何歳だと思います?」
「え~と・・・12歳?」
こちらの世界でも日本人は若く見られるようだ。
「違います」
「う~ん・・・13歳?」
「もっと上です」
「15歳!!」
「もう少し!!」
「17・・・なわけ「正解です」って、
嘘っ!?私と同い年!?」
「フェリシアさんも17歳なんですね」
「嘘よ・・・有り得ないわ・・・こんな小っちゃいのが
私と同い年なんて・・・せかいの ほうそくが みだれているわ」
フェリシアさんが、凄く混乱してしまった。
どうしよう・・・ちょっと落ち着くまで待とうか・・・。
暫く待っていたら、フェリシアさんの混乱は治まったようだ。
「分かったわ・・・あなたは、12歳なのね?」
「17です」
「・・・どうやら聞き間違いじゃないようね」
「聞き間違いじゃないです」
「そう、じゃあ、あなたはカオル・サクライ、人間、17歳学生、
性別は女「違います」・・・男、と」
「そうなりますね」
「ふ~ん・・・じゃあ、敬語は無しね!!さんも無し!!」
「分かりました」
「違う!!」
「分かり・・・ったよ・・・これでいい?」
「もう一回」
「何回やんの!?」
「それでよし・・・ん、じゃあ改めて、私の自己紹介も・・・
私はフェリシア、犬狼族、17歳女、あなたと同じ学生よ、
これからよろしくね?」
そう言って手を差し出してくるフェリシアさん・・・フェリシア。
(ん?・・・あ、握手か・・・こっちでもあるんだ)
フェリシアさんの手を握り、
「うん、よろしく!!」
笑顔で言った。