月の願い事
皆知ってた?
お月様も願ったことがあるのをーーー。
それはそれは昔。
月食が近ずいていたときのこと。
お月様は、太陽と会えたら聞きたいことがありました。
ーーどうやったら太陽みたいに一人で輝けるのだろう。
月食の日。
わずかな時間に太陽に聞いてみました。
「どうやったら太陽みたいに一人で輝けれるの?僕も何かの役にたちたいんだ!」
すると、太陽は言いました。
「もう役にたててるじゃないか」
そう言われて訳が分からなくなりました。
「なんの?」
「人間の、さ。君がいないと夜道は歩けれないだろう。」
月はまた聞きました。
「それも君が僕を照らしてくれるからじゃないか。僕は何もしてない。」
太陽は言いました。
「ならば星は?君がいないと寂しいだろう。」
「僕がいるからあんまり輝けないよ」
月はしょんぼりして言いました。
太陽は少し悩んで、言いました。
「ならば、皆の夢が叶うように、一緒に祈ればいい!月が一緒なら皆も心強いだろう!」
太陽の提案に、月はまた弱々しく言いました。
「でも・・・」
太陽は、その言葉を遮って言いました。
「聞いてご覧!人間や星たちの声を!」
その言葉に月は、ようやく気付きました。
たくさんの、たくさんの気づけなかった言葉が、月の耳に届く。
それは、たくさんの星の声。
たくさんの人の声。
「こんなにたくさんの声。どうして気付かなかったんだ」
月はとても驚きました。
それでも月には、これが自分一人のものとは思えません。「やっぱりこれは、太陽と僕のものなんだよ」
月はそう言って、ある決意をしました。
「僕は、皆の願いが叶うように、祈ってみるよ。僕だけにできることを、一生懸命に!」
そうして、わずかな時間の二つの会話は終わっていった。
太陽は、たくさんのものを照らし続け、その小さな背を押していく。
月は、太陽に支えられ、そして、たくさんのものの願いが叶うよう祈り続けている。
月があんなにきれいで優しいのは、今もたくさんの願いを叶うように祈っているからなのかもしれない。
いつの日か、月にはこんなジンクスができたんだ。
『きれいな月夜の日に、たった一つだけの願い事を願うと、お月様が叶えてくれる』
ってね!
これは、本当は誰も知らない、太陽と月だけが知っている物語。
月夜の晩の、小さな物語。
感想や評価をしてもらえるとうれしいです。