到着
結構、話が飛びます
「……これが学院」
そこにはくすんだ金髪の青年が背中に皮のバッグを背負って目の前の建物を見上げていた。
(思っていたよりでかいな)
「トール君! そんなところに立っていないで早くこちらに来てくれ!」
青年がボーっと立っていると、彼を大声で叫ぶ大男がいた。
ダラン=コードリス
それが大声で青年を呼ぶ大男の名前であり、青年をこの学園に勧誘した人物である。
「…今行くよ。ダランさん」
大男の声に耳をキンキンさせながら、くすんだ髪の青年――トールは学院の敷地内へと足を踏み入れた。
――トールは学院に行くことを決めてから、驚くほどの速さで町を出た。
育ての親であるドワーフからは、保存食の干し肉や乾パンを大量に持たされて、最後に犬が一匹入りそうな道具入れを押し付けるようにして渡された。
……渡された道具入れの中身はトールが長年使っていた鍛冶や細工をするときに使う道具だった。全て綺麗に手入れがされており、不器用なドワーフの親心が窺われた。
トールが学院へと出発する時もヴォガスは涙目になっていた。トールはそれに気づいていたが、知らないふりをして元気に手を振ってから家を出た。
旅の道中、そして今学院に入ってからもダリスは学院について説明してくれた。
学院にはどうやら『学部』と言うものがあり、その学部によって受ける授業も生徒の格好も変わってくるらしい。
――武術学部。
主に、剣術や体術を学ぶ学部で将来軍属や騎士になる人間が多い。
――魔術学部。
魔術を学び研究する学部。将来は魔術研究か「魔道院」に入るものが多い。
――一般学部。
平民が多く、主に手に職を持ちたい生徒や資格を取りたい生徒が在学する。実家の家業を継ぐ者や文官になる者など卒業後の生徒の職業は一番幅広い。
学部のほかにも『学科』が存在し、自分がなりたい職業に必要な勉強をさらに詳しく学ぶことができる。
学院は16歳から入学可能で、卒業は在学する学部で必要な『単位』と『成果』を見せれば何時でも卒業ができる。
ただ、留年を2回連続繰り返すと問答無用で退学。
ちなみにトールは二年生から編入することとなった。
その理由は、一応の入学試験としてトールは一般的な読み書きと自分の得意な事をしてみせる面接試験をやったのだが――トールはそこであることをやった。
試験の時、トールはおもむろに針金をポケットから取り出すとグニャグニャと針金を曲げ始めた。
「「?」」
面接官である学院長もそれぞれの学部の学長も、最初彼が何をしているのか全くわからなかった。
しかし、しばらくすると彼が手を止めて何かを学院長に差し出した。
「ん?」
「お近づきの印に差し上げます」
トールが差し出したのは、針金で作った梟が本を咥えるこの学院の紋章だった。
「なっ!!」
それは見た学院長達は驚いた。
他の教師達も驚き、みんな目を丸くしていた。
学院にまだ通っていない青年がこんな技術をもっていることにまず驚き、次に彼が今まで作っていた作品も見たがった。
彼がベルトのバックルや護身用の短剣を見せると、学部長達は顔色を変えて猛烈な勢いで彼のことを勧誘し始めた。
学部長達は、彼の能力を「一年も腐らせるのは惜しい」といって二年からしか在籍することのできない『研究室』に入れるために、彼を強引に二年生からの編入としたのだった。
少し編集しました。
~部を~学部に変更しました。
こちらのほうが語感がいいと思いましたので申し訳ありませんが変更しました。
後もう一つタイトルを鍛冶屋から鍛冶師に変更しました。
重ねて申し訳ありません。
作者がこちらのほうがタイトルとしてふさわしいと思い勝手に変更しました。
こういったことがあまりないように今後気をつけます。