表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/87

いやです

「絶対、いやです」



トールはそう言って、学院長に竜人族の少女を研究室のメンバーにすることを断ろうとした。


だが、それに対して学院長は眉を顰めた。


「ふむ、相手が竜人族ということで少し偏見があるのかい? だったらそれは間違いだよ。『彼女達』は」


「かなりキテます」


トールは説得しようとする学院長の言葉を途中で遮り、「本人達」が聞けば激怒しそうなことを真顔で言った。


「…いや。君、それはちょっと」


そして、それを聞いた学院長は少し躊躇いがちにトールに注意しようとした。


しかし、


「あの人達は、マジでヤバイです」


トールはそれを無視するようにまた言葉を遮った。




ここまでくると学院長も違和感を持ち、ある可能性について考えつく。


学院長は興味心から、思い切って聞いてみた。


「…君は、もしかして『彼女達』と面識でもあるのかい?」


「…養父の仕事の関係で少しだけ面識があります」


学院長の言葉にトールは少し言いづらそうに答えた。


「なんだい、だったら問題なんてないね。面識があるなら彼女達との接し方も、他の生徒達よりもずっと知っているはずだ」


「…『だから』、いやなんですよ」


「む、その知り合いとはまさか仲が悪いのかい?」


「…微妙です」


「ふむ…、それは残念だ。あのような美しい人たちと仲が悪いとは…」


「………。」


学院長のその言葉に苦笑いしかでないトール。


だが、そんなトールを気にした様子もなく学院長は話を続けた。


「特に、今回の交流でやってきたキキョウ君はとても美しい少女なのに…」


「………………………え?」


学院長の台詞の中にとんでもない単語が聞こえ、トールは耳を疑った。


「が、学院長?」


「おや? どうしたんだいトール君?」


「…あ、あの、今、『キキョウ』って言いました?」


「? 言ったが、それがどうしたんだい?」


「………………やば」


トールは顔を横に向けて冷や汗を流した。


…なんと言うか、トールのよく知っている名前だった。


「ん? トール君? 顔色がなにやら…、それに、その汗は?」


「な、なんでもないです。そ、それよりも、その人に俺の名前とか教えてないですよね! ねぇっ!」


「…君の名前は言ってないが、研究室の責任者について素性は少し話をしたかな?」


トールのなんだか切羽の詰まった声に押されながら、学院長は何かを思い出すようにそう言った。


その言葉を聞いたトールはさらに焦りだした。


「どんな感じにですか!」


「簡単に、『ドワーフの養父に育てられた将来有望な男子生徒だ』と言う説明をしたが…、それがどうかしたのかい?」


「うわぁ…、ばれた…、絶対にばれた」


学院長の言葉を聞き、トールは絶望した。


顔を手で覆って、…なんだか今にも泣き出しそうだった。



「トール君?」


「………すいません。ちょっと、いきなりの話で少し混乱しているんで返事は後日でいいですか?」


学院長の自分を気遣うような声に、トールは少し考えるように眉を顰めた後、そう言ってこの場から退室しようとした。


「ふむ、どうやら具合が悪いようだね。まぁ、こちらもまだ手続きなど色々とすることがある事だし、いいでしょう。では、また明日にでも─」


学院長はトールの様子が普通ではないことに気がつき、この場は無理に引き止めずに退室を許可しようとした。



だが…、



『ガチャリ』



学院長室の扉が許可も無く開けられ、そこから柔らかそうな亜麻色の髪を持った少女が現れた。


少女は部屋の中にいた2人の内の片方を見て、嬉しそうにこう言った。



「あら! 懐かしい感覚がしたので来てみれば、トールちゃんじゃないですか!」



─この少女が現れた事でトールは退室をすることが出来なくなり、しばらくの間地獄を味わう事になる。


誤字脱字の報告や、感想を待っています。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ