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近衛師団

 王族近衛師団


 魔術、剣術、体術に秀でた猛者達が所属する王族お抱えの武装組織。


 光り輝く銀色の鎧と国花が刺繍された真っ白なマントをつけた団員達。


 団員は高名な武門の家の者や魔術師の家系の者、殆どが上級貴族だ。


 王族の護衛や国の重要人物の身辺警護が主な任務で、まず街中では見かけない。


 だが、その近衛師団が数人、街の広場に現れた。


 まるで騒ぎを聞きつけた憲兵のように、人垣を掻き分け、トールと子爵の前にやってきた。


「これは何事ですか」


 まず、トール達の前にやってきたのは二人の女性だった。


 一人は赤髪の長身の女性、もう一人は金髪のツリ目の気の強そうな女性。


 その片方が、子爵に向かって問い詰めるように声をかけた。


 それに子爵の方はトールのほうをチラッと見てから、ニヤリと笑った。


 そして、


「おぉ! 近衛師団のユリア殿とリース殿ではありませんか! このようなところで奇遇ですな!」


 先ほどまでトールの形相に怯えていた事など忘れたかのように、気味が悪いほどの笑顔で二人の女性に詰め寄る子爵。


 その子爵の態度に、赤髪の女性は目を細め、金髪の女性は眉をしかめた。


 だが、子爵はその様子がわからなかったようで、饒舌に二人の女性に話し続けた。


「いやなに大したことではありません! この若造が私の工房の商品を『まがいもの』といったばかりか、私に暴力を働こうとしたのでこの様に拘束しているのですよ!」


「暴力、ですか?」


 金髪の女性が気になる言葉を聞いて、さらに眉をしかめた。


「そうです! あろう事かこの若造は貴族である私の胸倉を掴み、暴力を振るおうとしたのです!」


 やや興奮した子爵は身振り手振りで、先ほど起こったことを金髪の女性に語った。


 だが、それを聞いた金髪の女性は胸の前で腕を組み、少し考えるそぶりを見せた。


「ふむ、我々がここに来たときに聞いた話と少し違うようですね。我々が聞いた話は魔術を使うテロリストが広場で暴れているという話だったのですが…」


「そ、それは」


 それに少し口ごもる子爵。その間違った情報に心当たりはあるのだが、詳しく話すと自分の所の商品があっさりと壊された事を話さなければならない。


 自尊心の高い子爵には、その話を自分から話すことは若干憚られた。


「…ふむ。まぁ、話は見ていた住民やそこの若者に詳しく聞けばいいでしょう」


「は?」


 口ごもる子爵を見て、金髪の女性はそう言って拘束されているトールのもとへと行った。


 トールを拘束していたふたりは徐々に近づいてきた近衛師団の団員に困惑する。



「あー、君達? その子をこちらに明け渡してくれ。子供だがテロリスト疑いがある」


「え、いや、でも、こいつは…」


 金髪の女性の命令に戸惑う男達。


 子爵に暴力を振るおうとした奴を渡していいのか、と隣で同じ顔をして戸惑う相方とチラチラとアイコンタクトをする。


 だが、そんな事をしていると、金髪の女性が「ちっ」と小さく舌打ちしてから


「…いいから、渡せ。うすのろ共が…!」


 と言ってから、まるで鬼のような形相で二人を睨んだ。


 …どうやら先ほどの子爵とのやりとりではネコを被っていたようだ。


 とにかく怖い。これは子爵の不興を買うよりもよほど怖ろしいと感じた二人の護衛者は「ど、どうぞ!」とどもりながらあっさりとトールの身柄を金髪の女性に渡した。



「あぁ、それでいい」


 金髪の女性はトールの身柄を渡され満足そうに頷きながら、すばやくトールの持っていた剣を取り上げ、両手に金属製の手枷をつけていく。


 そして、手枷を付け終わると、赤い髪の女性に手でこっちは終わったと合図した。


「終わったか」


「あぁ、後は取調べと、ここで何があったのか聞き込みだな」


「よし。では行こう」


「あぁ行こう」



 そう言って子爵も回りもポカーンとする中、二人は広場を後にしようとする。


 だが、さすがにこのまま何もせずに行かすわけには行かないと思った子爵が二人を止めた。


「ちょ、ちょっと待ってください! お二方!」


「む?」


「ん?」


 その声に手枷のついたトールを挟む形で連行しようとしていた二人は動きを止めた。


「なにか御用ですか? ラウンディ子爵?」


「な、なにか御用ではないでしょうユリア殿! 突然現れて、私に暴力を働こうとした若造の身柄を横取りして! だ、だいたい何故近衛師団が貴方達がこのような場所にやってきたのですか!」


 子爵は赤髪の女性に向かい、そもそも『何故貴方達がここにいるのか』と聞いた。


 こんな街中の貴族と平民の若造の争いに近衛の人間がしゃしゃり出てくるなど、子爵には訳がわからなかった。


 だが、その質問に対して二人の女性は冷たく対応した。



「ここで何があったのか詳しくは知りませんが…。街中で魔術を使うような危険人物を、貴方一人だけの力で拘束できると思っているのですか?」


「あ…!」


 そこで子爵は思い出した。目の前の若造が自分の公房で作らせたミスリルを炎の魔術で破壊した事、そして自分を殺しそうな目で迫ってきた事。


 あのまま、あの若造を追い詰めていたらどうなっていたのだろう?


 その事を考え、子爵は背筋をぞっとさせた。


 なので、子爵は赤髪の女性の言葉に首をふり、身を震わせながら「い、いいえ」と答えた。


 それを聞いた赤髪の女性は頷き、「わかってもらえればいいのです。それと、」と言ってうすく微笑んだ。


 そのまま、うすく笑いながら何故自分達がここにいるのかを話した。


「今回の話は、『たまたま』城下を見学していた姫様が騒ぎを聞き、我々に騒ぎの鎮火をご命令したに過ぎません」


「なっ!」


 その言葉に驚く子爵。


「…ほ、本当の話ですか」


 ありえないことに子爵は驚愕し、赤髪の女性にだけ聞こえるように小声で囁いた。


 さすがに周りで人がいる中でこんな話をするのはまずいと思ったのだろう。びくびくと怯えながら小声で話している。


 その様子に女性は苦笑しながら、


「本当です。城下を見学中にここでの騒ぎを聞き、只ならぬ様子だと思った姫様が我々にご命令しました。『騒ぎを収めよ』と」


「で、ではあなた方がここにいるのはその護衛で?」


「はい、いかにも」


「なんと…!」


 赤髪の女性の言葉を聞き、冷や汗が止まらない子爵。


 王女の近衛が何故ここのいるのか疑問だったが、これで合点がいった。


 おそらく、好奇心旺盛な第二王女辺りが家臣や王にわがままを言って城下を見学していたのだろう。


 そして、ここでの騒ぎの間違った情報を聞いて、慌てて近衛の人間に騒ぎを収めるように命令したのだ。


 なるほど、近衛の人間がここにいる理由はわかった。


 ならば、後は出来る事など限られている。


「な、なるほどわかりました。で、では姫殿下には手をわずらわせて申し訳ないと後日謝罪に参りますとお伝えください」


「…姫様は必要ないとおっしゃると思いますが。わかりました、伝えておきましょう」


「よ、よろしく願いします」


 そう言って子爵はせめてこの機会にコネを作ろうと、謝罪と称して王女との面会を取り付けた。


「では、我々はこれで…」


「は、はい。お手を煩わせて申し訳ない」


 そう言って子爵は二人の近衛団員とあの若造を見送った。


 そして、近衛の人間が去った後、地面に唾を吐き、早々と馬車で広場から去っていった。


 後に残った街の住民はあまりに急な幕切れに困惑を隠しきれなかったが、これ以上この場にいても仕方ないと、徐々に自分達の生活に戻っていった。



予定が狂いました。

何とか早めにこの話を終わらせて、書きやすい話を書きたいです。

でも、次話は自分の好きな話をかけそうな予感がします。

そして、ごめんなさい。

タイトルと全く違う主人公で。

書いててコイツキレすぎだと自分でも思うけど、さすがに「キレる鍛冶師」はあんまりなタイトルだと思って変更しません。

そして、自重しません。



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