勝負2
すいません。まだあと一話かかりそうです。
そして、時間がかかったわりにそこまで長くありません。
次の話はなるべく長くしようと思います。
「用意は出来たみたいだな」
俺はそう言って、目の前にある剣を見た。
目の前の剣は、子爵が作らせているミスリルの剣だ。
剣はバスタードソードと呼ばれる大型の剣で、刀身が1、4メートルほどと長く刃が狭い。
それを見ながら俺は手に持つ大剣を軽く何度か振った。
すでにミスリルは俺のマナと同調しているため剣は羽の様に軽い。
俺の剣の出来は申し分ない。
しかし、久しぶりに「使う」ので少し不安だった。
そうして少しの不安を抱えたまま、俺は子爵のミスリルの前に立った。
子爵のミスリルは抜き身のまま木製の台座に置かれ、地面に平行するように置かれている。
「これがアンタが作らせた『一級品』のミスリルで間違いないよな?」
俺はその台座の前で台座の横にいる子爵に確認をとった。
「そうだ。これこそ私が職人達の作らせた一級品のミスリルだ」
「……そうか。」
自信満々な子爵の言葉に俺は適当な相槌を打った。
すると、子爵が薄笑いを浮かべながら俺に言った。
「貴様本気か?」
「はぁ?」
俺は子爵の言葉に首を傾げた。
「何がだ?」
意味がわからず、俺が子爵に聞くと
「…っ。本気でミスリルで出来た剣で、同じミスリルの剣を斬るつもりかと聞いているのだっ!」
子爵が真っ赤な顔でそう言った。
「あー、そういうことか」
俺は子爵が言おうとしていることを理解した。
だからあっさりと答えてやる。
「本気だ。」
俺と子爵がこんな事をしているのは、俺が子爵に本物のミスリルの力を見せるためだ。
子爵が持ってきたミスリルの剣を、俺が持ってきたミスリルの剣で『ぶった斬る』
これによって本物のミスリルがどんなものかを見せ、子爵が作らせているものが紛い物だと証明する。
見事斬る事に成功すれば子爵は自分が作らせているものが紛い物だと認める。
だが、失敗した場合は子爵を侮辱した罰として俺は子爵の言いなりとなる。
これを剣を突きつけた状態で「交渉」したら、子爵は少し青ざめながらも了承した。
ちなみに、先ほどの子爵とのやり取りは子爵が俺にプレッシャーをかけに来ただけの意味のないやり取り。
その証拠に俺にプレッシャーがかからないと分かると「ふんっ」と鼻を鳴らし離れていった。
それを俺は見送ってから斬る準備を始めた。
「───ふぅっ」
俺は細く息を吐き呼吸を整えた。
まずは体中の魔力を一つに集める。
俺は魔術師ではないので魔力の複雑な操作はできないが、魔力を集めることぐらいなら出来る。
「…よく見ろよ」
俺は囁くようにつぶやいた。
子爵や多くの人間はミスリルを勘違いしているが、ミスリルはただの武器の素材ではない。
ミスリルで作った武器が使用者にどんな影響を与えるのか、そしてどんな事が出来るのかを多くの人間が知らない。
だからミスリルを単純な武具の素材としか見ていない。
俺は剣に「力」を込める。
だが、力と言っても腕の力ではない。
『魔力』だ。
俺は体中から集めた魔力を剣に集中させた。
ミスリルは体の魔力の流れをスムーズにする。
魔力がスムーズに流れるようになった体は、魔力を制御することが容易となる。
俺はさらにミスリルの力が最大限に発揮されるよう、剣の柄や刀身に補助のまじないを大量に施してある。
剣の形をした純粋なミスリルの塊と、それを補助するまじない。
これによって限定的だが俺は「魔術師の力」を得ることができる。
「魔術師の力」とは、つまりは優れた魔力制御力。
体に流れる魔力を自由自在に操作する力だ。
俺はその力を使って剣に集まった魔力を練り込む。
ただの魔力の集まりを一つの魔力の塊に。
ポゥ
練りこんだ魔力が発光し、剣が青白く光る。
「ふぅっ…!」
俺は青白く光る剣にさらに力を込めた。
頭の中にイメージを描き、魔力の塊を自分の思い通りの形へと変える。
これこそが魔術師の本領。
魔力の変化。
「これが、『本物』の力だ」
次の瞬間
俺は魔力を変えた。
ボォオオオオオオオオオオオウ!!
大量の魔力が『炎』へと姿を変える。
ミスリルで出来た武器は只の頑丈な武器ではない。
ミスリルは最強の魔力強化具だ。
落ちこぼれ以下の魔術師である俺が魔術を使うことが出来る。
魔術師でない人間が魔術を使う。
これこそがミスリルが『聖なる金属』と呼ばれる理由。
「「…………………。」」
周りの人間が燃える剣と俺を呆然として見る。
俺はそれを無視するように炎を纏う剣を上段に構えた。
俺は目の前の子爵が作らせたミスリルの剣を見た。
「………。」
剣は形も輝きも「普通」の剣としてならば上物として扱われる立派なものだった。
だが、ミスリルの武具としては失敗作。
ミスリルの良い点をほぼ全てなくし只の「頑丈なだけの剣」となっている。
俺はそれを見てやるせない気持ちになった。
「…最悪の気分だ」
俺は呟き、剣を持った手に今度は全身の『力』を込めた。
「…最初は牢屋に入れられた仕返しに少し懲らしめるつもりだった。でも『あのチビ』の泣き顔を見てぶっ飛ばしてやろうと考え直した。…だけど」
俺は上段に構えた状態から剣を、肩に「担ぐ」ように持った。
「…今、職人が培ってきた技術が蔑ろにされてるのを見た」
剣からは炎が立ち上り、俺の髪と肌をチリチリと焼く。
だが全く熱いとは感じない。
体が感じる熱さよりも、もっと熱いものが俺の腹の辺りでくすぶっているからだ。
「…もう限界だ」
ブワッと剣からは熱波が吹く。
それを感じながら、俺は広場の隅にいた子爵に向かっていう。
「プライド。今まで築いてきたモノ。この二つを奪う。」
その言葉を言った後、俺は背中が反るほどに剣を大きく振りかぶった。
そして、
ダンッ!!
石畳を割る勢いで足を踏み込み、肩に担いだ炎剣を残像が残りそうな勢いで振り下ろした。
ズッドン!!
剣と剣が衝突。
まるで、爆発のような音と振動が周りに響く。
剣を置いた台座はガラス細工のように粉々に砕け、子爵の剣が地面にめり込む。
そして、後を追うように俺の剣も地面にめり込んだ。
その光景を、俺は一番近くで見ていた。
文才が欲しい。
自分の頭の中をそのまま文にできる才能と知識が喉から手が出るほど欲しいです。
小説書くのが本当に難しいと改めて思い知りました。
色々と愚痴っぽくってなって申し訳ありません。
次回は締めというか結果と事後処理の話です。