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仕掛け

 花祭りは例年通り盛大な盛り上がりを見せて終わった。


 そして、祭りが終わり数日がたつと、街である噂が流行した。


 その噂はパレードで見た騎馬騎士の鎧についてだった。


 パレードに出てきた騎馬騎士の鎧はミスリルで出来ていた。しかも、その鎧は白銀に輝き無薬品加工で作った鎧に間違いない。


 しかし、それを作れる者はドワーフしかいないはずなのだが、王都にはドワーフは一人も居らず人々は首を傾げた。


『一体誰が作ったのか?』


 

 王都の人間は暇があればこの話を何度も話し、勝手な憶測をしあっていた。


 例えば、「学院が新しい加工技術を開発した」「王家秘蔵の鍛冶師が居てそいつが作った」「気まぐれなドワーフがやってきて置いていった」「ギルドがドワーフに注文して作った特注品だった」等様々だった。


 中には、「学院の生徒が作った」等という冗談の様な憶測もあった。


 様々な憶測が飛び交ったが結局のところ、誰にも真相がわからずに祭りから一週間がたった。





 そして、花祭りが終わり一週間が過ぎたある日、街の広場にある看板が立てられた。


 看板は木製の看板で白い張り紙が張ってあった。


 街の人間がなんだなんだと思い見てみると、張り紙にこう書かれていた。



『先日の花祭りで白銀の騎馬騎士の鎧を作った鍛冶師へ、私は貴公を探している。


 是非、私が所有する工房で働いて欲しい。

 

 貴公がその気ならば街で一番大きな工房に足を運んでくれ。


                      ガルギス=ヴァン=ラウンディ子爵 』



 看板は、例の花祭りで騎馬騎士の鎧を作った鍛冶師を探す内容だった。それも、貴族が探していると言う内容だ。


 これには街の人間は驚いたが、看板の一番下に書かれた貴族の名前を見て納得した。


 その貴族は、先代から爵位と良質のミスリルが採掘される鉱山の経営を引継ぎ、巨万の富を築いた人物だった。


 そして、その貴族は金に物を言わせ、腕の良い鍛冶師を自分の所有する工房で雇っているという話だ。


 おそらく例のパレードで見た騎馬騎士の鎧を見て、それを作った鍛冶師を雇おうと探しているのだと街の人々は理解した。


 看板を見た街の人々は、これで噂の鍛冶師は近いうちにこの貴族の工房に足を運ぶだろうと、どこか残念そうにその場を去っていった。



 一人、また一人とその場を去り、最後にそこに残ったのはたった一人の青年だけだった。




「……………。」



 青年は周りに人がいない事を確認した後、おもむろに懐から何かを取り出す。


 とりだしたのは小さな黒炭の切れ端。


 青年はそれを持って看板に近づく。


 そして。



ガッ!



ガリガリガリガリガリ!



 看板の張り紙に向かって黒炭の破片で、ガリガリと勢い良く擦り始めた。



ガリガリガリガリ!


ガリッガリッ!


ガッ!




「……こんなもんでいいか」


 看板に黒炭を擦り続ける行為は、青年が満足した事で直ぐに終了した。


 そして、青年は黒炭をへし折ってその辺に捨て、何事もなかったかのようにその場を去った。


 後に残ったのは、張り紙に黒炭で汚く落書きされた看板だけ。





 看板にはこう書かれていた。



『紛い物を作らせる主人の所で働く気は無い。他を当たれ        


                           噂の鍛冶師より』



 ――この看板は注目を浴び、瞬く間に噂となった。





 看板に落書きがされた次の日、怒った貴族は代わりの看板を立てた。


 内容は前に立てたものとは違い、このような言葉が書かれていた。




『…貴公は何か勘違いをしているようなので説明する。


 私が工房で作らせているミスリルの武具や装飾品は、決して紛い物などではない!


 私の工房の物は高品質のミスリルを材料に、腕の良い職人達に鍛冶をさせた一級品の物ばかりだ。


 それを紛い物などと呼ばれるなど実に不愉快だ!


 …通常なら貴族不敬罪で処罰したいところだが…、私は心が広い。


 早々に私の工房に来て謝罪と雇用契約をするならば許すことにしよう。


 …だが、もしこれを拒否するならば私は貴公を処罰する。


                      ガルギス=ヴァン=ラウンディ子爵』



 これを見た街の住人は、「貴族の怒りを買った」と騒ぎ、噂の鍛冶師はどうするのかとヒソヒソと周りで話し始めた。


 ある人は、「無礼を詫びおとなしく雇われるだろう」と言い、またある人は「面倒ごとが収まるまで王都を離れるのでは?」


と噂しあった。


 街の住民は、誰もが噂の鍛冶師が「謝罪」か「逃げる」かのどちらかの選択をするだろうと予想した。


 だが、鍛冶師がとった選択はそのどちらでもなかった。




『金と女でボケたアンタに『本物』を見せてやるから、明日の正午この広場に来い。


 

 追記 ついでにアンタが言うところの一級品も持って来い。


                             噂の鍛冶師より』




 鍛冶師がとった行動。


 それは「挑発」だった。


 広場の看板の一つに、いつの間にかこのようなものを書いて、貴族を挑発した。


 これにより、只でさえ頭に血が上っていた貴族はさらに怒り、興味を惹かれた街の住民は次の日、広場に溢れかえる事となる。



あと一話ほどでこの貴族とのいざこざの話を終わらせようと思っています。


色々と周り道をしてしまいすいません。


今後は気をつけます。




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