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研究室

「…………………………なんだコレ。」



俺は自分のクラスの教室で、黒板に書かれたものを見てそう呟いた。


黒板には様々な色のチョークで文字が書かれていた。


黒板に文字を書くことは別に不思議でもなんでもないが、その内容が問題だ。


黒板にはこんな事が書かれている、





「トール=グラノアよ、よくやった!!」「二年の誇り!!」「ざまぁ四年ざまぁ」「完全勝利」「オッズ五倍の大穴!!お前に賭けて本当に良かった!」「懐が潤いました。」「よくぞかました。」「男の中の男」「お前ならやれると信じてた」「あの剣くれ」「私も欲しい」「トール最高!!」



こんな言葉が黒板いっぱいに書かれているのだ。




「本当になんだコレ?」



なにやら昨日の自分のことを書かれているようだが、だがここまで持ち上げられる理由が分からず黒板の前で呆然とする。


そして、それを見ていたクラスメートがトールに気がつき彼の元にやってくる。


「昨日の決闘見たぞ」「お前すげぇな」「よくやった」「四年のあの先輩によく勝てたな」「かっこ良かった」「お前の御蔭で儲けた」



自分の周りに同級生が来て、肩やら背中を叩いて口々に褒める彼らにトールはわけが分からずされるがままだ。



「おいおい、昨日の英雄をそんなに乱暴にすんな。」



そんな彼を助けてくれたのはディースだった。


彼はトールをに向かって「よう」と声をかけてから、彼の傍に来る。そしてこの騒ぎの説明をしてくれた。


「昨日決闘を見てた奴が結構いてな、それでこの騒ぎだ。まぁ軽い戦勝気分だな。」



「…それにしたって騒ぎすぎじゃね?」



「上級生と下級生との決闘なんてめったにないからそのせいだ。」


「へー、そうなのか」


「決闘は大抵が同じ学年の生徒同士だからな。上級生と下級生が決闘なんてやった日には、まず間違いなく下級生が負ける。」



「なんで?」



「上級生のほうが学院にいた日数が長いから、学んだことが多い分有利だ。」


「…なるほど。」


例えば、武術部同士が決闘したら、長いこと修練を積んだ方が勝つということだろう。




ガラガラッ





トールがディースの言葉に納得していると教室のドアが開いてクラス担任がやってきた。





「あー、お前ら座れ座れ。これからHR始めるぞ。」



担任が教卓までやってきて、騒いでる生徒達を注意する。



教師からあんまりハメを外すなという小言と、そろそろ部活や委員会が本格的に始まるから所属している人間は頑張るようにという投げやりな激励をもらった。


教師が最後につけ加えるようにして



「あぁ、あとそろそろ教師達が自分の「研究室」に人員を募集し始めるようだから、掲示板とかよく見て置くように。」



といってから教室から出て行った。



「研究室か」「掲示板見にいかないと」「俺一年の後期で何個か単位落としたけど入れるかな」「さっそく薬学の先生に聞きにいかないと」「私は魔術学のところに」「人気の先生のところはすぐ締め切るらしいから早くしないと」



教師が出て行った後、生徒たちは隣の席の人間と先ほど教師の言っていた「研究室」という物について話し合っていた。



(何の話だ?)



そんな彼らをトールは首を傾げて見ていた。














「「研究室」ってのは、教師が自分の専攻している学問を研究している部屋のことだ。教師は自分の研究ために人員を募集する訳だ。」



「ようするにパシリが欲しいのか。」



「いやいや、生徒側にもメリットがあるぞ。まず、自分の欲しい知識を「研究室」に入ることでより多く学ぶことができるし将来の役にも立つ。あと、教師の授業はそいつの「研究室」に入ってれば、授業は受けなくても単位がもらえる。」



「両方にメリットがあるわけか。」


「そういうことだ。」


「へー」



「高名な学者なんかもこの学院には教師として在籍しているから、皆我先にと自分をアピールするためにレポートや研究成果を教師に見せたりなんかもする。」



「すげーな。そんなにいいものなのか研究室って」



「まぁ、「上」を目指すんだったら入っておいて損はない。」



「………「上」か。」



俺はディースに「研究室」について色々と話を聞いていた。



そして、ディースとの話の中に出てきた「上」という言葉を聞いて考えた。



皆が研究室に入るのは、自分の将来のためだ。




俺にだって将来の目指すべき夢がある。




人を「守る剣」を作ること。



そのために俺は学院に来た。





だが、俺は昨日の決闘の時からあることを考えていた。



確かにこの学院の授業は高度なものだ。



しかし、昨日決闘をしたクードはその授業を何年も受けたにもかかわらずその鍛冶のレベルは低かった。



その理由は、この学院では鍛冶を教えることのできる教師が少なく、うまく技術を生徒に還元できていないからではないだろうか?



その予想が確かだったとしたら、俺が鍛冶を教えている教師の研究室に入ることに意味はないだろう。



なぜなら間違いなく俺のほうが鍛冶の腕が上だからだ。



これは自惚れでもなんでもなく、ただの事実だ。


この学院には「ドワーフ」はいないのだ。


「人間」しかいない。


俺に鍛冶を教えることができるのは「ドワーフ」だけだ。


武具や装飾品を作ることに長けたあの種族でないと、俺に教えることは不可能なのだ。




教わる意味がなければ研究室に入っても意味がない。



自分の目標とする、「守る剣」を作れる日は遠い。



ならばどうするか?




実は一つだけ考えがあった。




ディースから「研究室」について話を聞いていた時からずっと思っていたことだ。



ディースに話によると「研究室」というのは実に便利なもので、研究室用に学院側が研究費用としていくらか費用を出してくれるのだ。


そして、研究に役立つことは「研究室」同士が情報のやり取りをして、研究に役立てていく。



これは俺にとって実に最適な環境だった。



例えば、剣の材料の高価な鉱石が費用でタダで使えるし、他国の武具の情報などを他の学部の研究室から知ることもできるだろう。魔術部に剣に魔術で何か付加してもらうのもいい。この他にもまだまだおいしい「特典」がありそうだ。



そこまで考えていると、隣にいたディースが俺のことを不思議そうに見ているのに気がついた。


俺はそんなディースに笑顔で声をかけた。


思いついたアイディアを聞いてもらうために



「なぁ、ディース。」


「ん?」


「ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?」


「まぁ、俺に答えることができる範囲ならなんでもいいぞ。」


「それじゃ聞くけど」























「「研究室」って生徒でも持てる?」





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