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嵐の予感

 俺が建物の中に入ると、真っ赤に熱した金属を金槌で叩く生徒やドロドロになった金属を鋳型に流し込む生徒の姿が見える。


 俺がその姿をもう少し近くで見ようと、足を進めた瞬間。


数人の上級生らしき生徒が後ろからいきなり俺の肩を掴んで「お前がトール=グラノアだな?」と聞いてきた。


俺が振り返り「そうだけど。あんた達誰?」と答えると上級生は俺の肩を掴んだまま、俺の疑問には答えず建物の奥に連れていった。


俺が奥に連れて行かれると、そこには一人の男が手に一本の剣を持っていた。


男は俺とは違い光沢のある金髪で青い瞳のいかにも「貴族」らしい男だった。


「そいつが「例の二年生」か?」


「はい。話に聞く特徴と一致しますし、本人が認めました」


 俺を連れてきた上級生の一人が、剣を持った男と何かを確認するように話し始める。


 どうやら剣を持つ男も上級生のようだが、俺を連れてきた奴よりも立場は上のようで敬語を使われている。


 俺はだんだんとよくない予感がしてきた。


「おい貴様」


 そんなことを思っていると、剣を持った男が俺を見下ろすようにして話しかけてきた。


「貴様がトール=グラノアか?」


「そうですけど」


「ふん。どんな奴かと思えば…」


「?」


 男はなんだか拍子抜けしたように俺を見た後、いきなり剣を鞘から抜いて俺の目と鼻の先に突き出すように見せ付けてきた。



「見てみろ。そして何か言え」


 剣を突き出したまま、男は俺を見下ろして命令する。


 とりあえず、俺は言われたまま剣を見てみる。


 剣は、鞘や柄などに細かい細工や宝石が散りばめられた豪華なものだった。


 俺はそれを細かいところまで、じっくりと見る。


「……………。」


 その様子をどう思ったのか、男は「ふん。言葉もないか!」と言って得意顔だ。


 だが、俺は男の言葉など聞こえていなかった。


 ただ衝撃を受けていた。


 俺は、肩を掴まれたまま一言つぶやいた。


「…ひどい」


「「は?」」


 俺の言葉に、俺を掴んでいた上級生も剣をまだ突き出したままの男も、俺の言葉に間の抜けた声を出す。


 俺はそれに気づかず、思ったことを次々と言ってしまう。


「なんだこれは? なんだコレ? なんで剣をこんなに宝石や細工でいっぱいにすんだ? これだとまるで女の子の持つ宝石箱みたいじゃないか。それに剣もひどい。こんな鋳造で作った剣に最高級の玉鋼使ってる! なんてもったいない! 今すぐ剣は溶かして宝石や細工は剥ぎ取って売れ!」


 俺は目の前の剣を持った男が実は王都でも有名な鍛冶師の息子で、俺が散々にこき下ろした剣がその息子の作った作品だとはこの時は思いもしなかった。







「んで、お前はそのままぼこられそうになった所を教師に助けられて、鍛冶の授業は受けられず教室に帰ってきたわけか」


「まっ、そういうこと」


 俺が教室に帰ってきて鍛冶の授業で起きたことをディースに話すとディースに呆れられてしまった。


 今は五限の授業の最中なのだが俺はなんだか授業を受ける気が起きなくて五限はサボることにした。ディースはそんな俺に付き合って同じくサボった。


「つーか、なんであいつは俺に自分の剣を見せたんだろ?」


「多分、昼に話したお前が鍛冶師だと言う話に尾ひれがついて上級生に伝わったんだろ。それでそれを聞いた上級生がちょっとへこましてやろうとでも思って…」


「いや、でも噂が早すぎないか?」


 昼休みにその話をして授業に行くまでの時間など間は三十分もなかったはずだ。


「お前は自分が思ってるより有名人なんだよ」


 異例の二年生からの新入生。


「話題の人間の情報ってのはみんな知りたがるものなんだよ」


「…そんなもんか?」


「そんなもんだ」


 俺はディースの言葉にとりあえず納得する。


 だが俺の悩みはまだ解決はしていない。


「これからどうすっかなぁ」


「ん?」


「いやだって、このままだと俺は鍛冶の授業に参加できない」


「あぁそれなら大丈夫だ。すぐ解決する」


「…なんで」


 俺が悩み事を話すとディースは俺の悩みは直ぐ解決すると言う。俺はそれに疑惑の目でディースを見るがディースは笑いながら「放課後になればわかる」と言って教えてくれない。




放課後──



 授業が全て終わり放課後になると生徒達が教室からどんどん出ていく。


「なぁまだか?」


「まぁもう少し待てって」


 俺は、ディースに言われた通り放課後まで教室に残っている。


 だが、いい加減に何もせずに座っているのも飽きてきた。


 欠伸をかみ殺しながら言われたまま待っていると「そいつ」は来た。


「そいつ」は学院の生徒が着る指定の白い制服とは違い、黒い制服を着ていた。


「そいつ」は俺の名前を呼ぶと、手に持っていた封筒を破って中に入った紙を取り出して抑揚のない声で読み上げる。


「トール=グラノア。四学年一般学部武具鍛冶学科所属クード=フォセスが貴殿に決闘を申し込む。日時は明日。勝負方法は両者が作った剣の出来で決める」


 黒い制服の「そいつ」はそれだけ言うと、教室を出て行ってしまった。


 俺がぽけーっとしていると、隣にいたディースが俺の肩を叩く。


「なっ解決したろ?」


「何アレ?」


 意味がわからなくて、先ほどのことをディースにたずねる。


「決闘の申し込みだ」


「決闘?」



 ディースの話を纏めると、この学院では問題があると問題のあった当人同士で決闘をすることが出来る。


日時や方法は生徒会が決めて両者が争う。


敗者は勝者に揉め事を起こしたことを謝り、二度と同じ事で決闘することはしないと誓う。


「つまりはさっきの黒いのは生徒会の人だったわけか」


「そうだ。多分お前に突っかかった上級生が生徒会の人間に決闘の使者を頼んだんだろ」


「へー」


「決闘で負けた奴は勝った奴に二度と文句なんて言えないから、これに勝てば鍛冶の授業に参加したってもうあの上級生に文句は言われないぞ」


その言葉に、まさかと思う。


「…もしかして「すぐ解決する」ってこれのこと?」



俺の疑問にディースは笑顔で頷く。


対して俺は面倒なことになった、と教室の天井を仰いだ。




誤字脱字の報告、感想を待っています。


次は主人公鍛冶するとこ書きます。


ちょっと超展開っぽいけど許してください。


文才が本当に欲しい…


若干訂正しました。刀剣鍛冶学科を武具鍛冶学科に変更しました。


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