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長命エルフの小さなカフェ〜今日はなに飲む?〜  作者: 藤 野乃


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白龍②


「一番可能性が高いのは卵がこの国内にあること」


「幼体ではなく、卵で?」


 シグマは意外そうに声を上げた。


「龍の中でも古龍に近いタイプだと、ワイバーンみたいな生態じゃないのよ。そもそも白龍の幼体なんて隠してたら大騒ぎになってるはずでしょ」


 隠した人も場所も無事でいるわけがない。

 龍使いみたいな特殊な仕事の人は別だけれど、それ相応の設備が必須になる。


「ふむ……」


「ああいう龍は、孵化後に一回だけ幼体に魔力を与えるだけ。基本産みっぱなし」


「ほう」


「ただし、最適な場所で産んだ卵が移動した場合、何があっても元に戻す習性があるの。だから龍の卵は絶対動かしちゃいけない」


 うーむ、と唸りながら食後のタンポポコーヒーを注文したシグマは、カウンターに肘をついて考え込んだ。


「他の可能性は?」


「無いと思う。宝物を盗んでいたら、この国はもう滅亡してるでしょうし……何より二頭で追ってきてるのがね。卵しかないと思うわ」


「だとしたら、卵を早急に探して返せばいいわけだな?」


「そうね。龍が去ればワイバーンも退いていくと思う」


「卵……卵か」


「大きさは一メートル前後あるし……大柄な大人でも、単独では無理」


「そのサイズなら、逆に探しやすいかもしれん」


「割ったら親龍は絶対に気が付くから、まだ割れてないと思うわ」


 街も危機のようだし、ここは貸しを増やしておきましょうか。


「どのあたりにあるか教えてあげてもいいけど、貸しは追加よ」


「背に腹は代えられん、頼むわ」


 ちなみに広域サーチの結果、龍卵は王宮内にあることが分かった。


「王宮内の、東側にあるみたいよ」


「東? あそこの宮にはアーイシャ妃が……」


「先王の妃?」


「いや、ルルブの正妃だがまだ八歳だな」


「となるとその正妃の意向ではなさそうね」

 

 侍女か、実家の者か。

 アーイシャ妃が卵泥棒のはずはないし。

 私はシグマの言葉を黙って待つことにした。


「龍の卵って、孵す以外に何に使うんだ? 割ったら襲われるんだろう?」 


「人里から離れた場所で、奴隷に割らせるという方法があるわよ。奴隷は親龍に殺されるけれど、割られた卵は回収しないから」


「割った物は何に使えるんだ?」


「殻から中身まで捨てる部分は無いわね。薬師、魔道術師、錬金術師……あらゆる層の垂涎の素材よ」


「確かに龍素材のアイテムは多いが……卵は聞いたことがないな」


 私はシンクを磨きながら、シグマの疑問に答える。


「卵はね、さっき言ったとおり入手がとても難しいのと、そのままの形では世に出てこないから。薬剤か薬の素材に加工されてるのよ」


「東の宮は特別通用門から近い。何者かが一時的な保管所として、アーイシャ妃の宮を使っている可能性があるな」


「どうするの? 犯人探しする? それとも先に卵返しちゃう?」


「うーむ、親父に相談してみるか。一時間ほど待っててくれるか?」


 私が頷くと、シグマは王宮に取り急ぎ戻っていった。

 高額な使い捨て転移陣を使っていたので、もう王宮に到着しているだろう。


 (一番不味いのは、卵が王国内で割れることよね……)


 成龍が掴んでも割れない卵なのだから、故意に割ろうと思わなければ割れないとは思うのだけれど。


「目的が何かによるのよね」


(政治的思惑なのか、単に密売したいからなのか)


 一時間も待たずしてシグマが戻ってきた。


「犯人探しはするが、まず卵を親に返すことになった」


「最適解ね」


「親に返すのを、王宮からの依頼でお願いしたい」


「え、私がー?」


 シグマは美しい大粒の宝石をカウンターに置いた。


「宝物庫から出してきた。見てくれ、ダイヤモンドの内包物として蝶の形のオパールが入っている」


 確かに透明なダイヤモンドの中に、オパールが入っている。

 見ようによっては蝶の形に見えなくもない。


「なにこれ、手数料ってこと?」


「ああ。後見人から許可はある」


 綺麗なものは大好きだ。

 龍の卵を回収して、親に返す手数料としては悪くない。


「じゃ、それでいいわ。今から行くの?」


「ああ、今すぐがいい」


 そりゃそうよね。

 私はシグマと一緒に王宮に転移し、卵がある方角へと足を向けた。

 ルルブ王はまだ成人してないので、専用の後宮はまだ持っていないのだとか。

 なので東の宮には限られた高位の者だけではあるが、男性も入れるものらしい。

 アーイシャ妃が成人するまではね。


「ねえ。物品庫でも何でもない場所にあるんだけど」


「どこだ? どこにある?」


 私は二階部分の燦然と輝いている部屋を指差した。

 シグマがそれを確認し、膝から崩れ落ちる。


「待て待て、あそこは──アーイシャ妃の部屋だぞ」



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