1話 半グレの俺とアイツ
ここは、街中にある東道高校
その中の2-4組、5月の少し暑い風が吹いている今日、井口駿は一番乗りで学校の教室に入った。駿は黒板にある事が書かれているここに気づく。
(んーそういえば今日は席替えか…後ろがいいな、サボれるし)
そんなことを思いながら駿は自分の席がどこにあるか、目をやる。そして自分の名前を見つけた。
(ラッキー一番左端じゃん、授業サボりまくれる)
ここで重要なのは周りの人間。隣に学級委員のやつが入ってきたら、サボるとえらいことになる。普通のやつがいいと願いながら隣の座席に目をやる
(ラッキー隣不登校で学校来ない女子じゃん)
ここまでは完璧だ。あとは前にいるやつ…ここで駿は驚くことになる。
(は!璃月ちゃん!?まじか…)
山元璃月、クラスにどこにでもいるような女子で大人しめの女の子だ。駿は去年からクラスが一緒の璃泉子に興味を持っていた。清楚なところ、綺麗なポニーテール。めちゃ大人しいところ、駿は山元璃月という女子に恋をしていた。去年は特に話したことも無く、咳も近くなった訳でもないので、あまり関係は無い。
(璃月ちゃんが前の席…余計に授業に集中出来ねぇじゃねぇか…けど、ラッキーだ!仲良くなれるかも)
そんなワクワクが駿を襲った。ってのもつかの間。駿はガッカリすることになる。
(そうだった〜恋愛は禁止だった…仲良くなれても付き合うことはできないのか)
駿はグレグループ「燐梧」の校内リーダーであり、校内にはグループが4人ほどいる。しかも全員同じクラスだ。
そのグループのルールの1つ。東道高の隣高、西道高校のリーダ作った恋愛禁止ルール
このグループは近くの4つの学校で形成されており、各学校には校内リーダーが存在する。2ヶ月に1回ほど行われるリーダー会議で去年の今頃にリーダーにこんなことを提案していた。
「ぐれるのに女は必要ねぇ、その方がかっこよくね?」
言い、リーダーたちは納得。そのまま恋愛禁止ルールが出来てしまったのだ。当時は璃月に興味はなかったからいいものの、今は違った。
できるものなら過去に戻ってそんときのリーダの顔面を思っきり殴ってやりたい。駿は強く思った。
(てかそもそもの話だ、俺はグレだぞ?そんな怖そうなやつが大人しめな璃月ちゃんと付き合う?無理無理、つきあえない理由、ルールにできてよかったのかもな〜)
璃月ちゃんを眺めれるだけラッキー、そう自分に言い聞かせた。
駿の日課は誰もいないシンとした教室でボーッとすることだ、特に何も考えることでもなく、ボーッと過ごす。この時間が駿の心を癒していた。
するとドアが元気よく開いた。
「うお〜おはよぉ〜 」
そこに入ってきたの葉露 司だった。つかさも駿のグループに入っている。
「おはよ、黒板見ろ、席替えの席あるから」
そう言うとコツコツと歩きながら黒板の方にかけよる。そして駿の方を向いてこういった。
「な〜んだぁ、席離れちゃうじゃ〜ん、悲しいねぇ〜」
「俺は嬉しいわ!授業中お前消しゴムちぎったやつめっちゃ投げてくるし、うっとおしかったわ!」
つかさ、そうコイツは4月の間、一日に50回は消しゴムをちぎっては俺になげつけてくる。つかさはめっちゃヤンチャなやつだ。
「そんなこといわないでよぉ〜次は誰になげよかな〜」
「投げんな投げんな、俺だから許してやってるんだぞ!」
「ふぅーんならまた駿に投げればいっか〜」
「どんだけ席離れてると思ってんだお前」
司は前右端、駿は左後ろ、駿は思わず突っ込んでしまった。
「そういばさぁ〜理科の課題やった〜?」
「やるわけねぇだろ〜?あんなんやったとこで身にならねぇよ」
駿は勉強なんてしても、将来役に立たない、そんなんで授業はサボりまくるし、課題もほとんど出していない。
「けどねぇ〜あれ今日出さなかったら補習だよぉ〜?」
これを聞いた瞬間駿の目の色が変わる。
「な、なんだと!つかさ、頼む見せてく
れ、」
つかさはニヤリとして駿に言う
「ん〜なら帰りにアイス|3個奢ってよォ、もちろんハーゲンダッスね〜」
「なっ、ただでさえ高いのに、3個も!?ぐ、しかし課題のためだ…わかった」
そしてつかさは駿に課題を渡した。駿も理科の課題をだし始める。
「理科は何限目だ?」
「1限目だよぉー?」
さらに駿の顔が絶望に染まる
「あと30分しかねぇじゃん!!よっしゃ写しまくる!」
「へへへ、頑張ってねぇ〜(アイス楽しみだなぁ〜)」
駿はものすごいスピードで課題を写し始めた。 ………………………………………………
(うっうそ…!!)
黒板を見て喜ぶ女子生徒が1人いた。彼女の名は山元璃月。高校二年生の2-4だ。
璃月は心の中で嬉しそうに呟いた。
(やった!しゅんくんの前じゃん!やっとなれた!)
実は璃月も去年から駿に興味を持っていた。仲良くなりたい。そんな気持ちが強いが、璃月には欠点があった。そう、男性と話せないのだ。璃月は男の人と関わりがほとんどないため、どう接すればいいのか、何を話せば分からない。けど璃月は駿のことが好きになっていた。
(は、話しかけられたらどうしよ…変なこと言っちゃって変な印象着いたら最悪だし)
そんな不安が璃月を襲う。
(でも、好きな駿君に話しかけられるなら、頑張ってみよ)
そうして、駿が座る席の前に話してくれるかなとウキウキしながら自分の席に座った。席替えは朝のホームルームでするので、それまで時間がある。璃月は駿の方をちらっと見た。
(理科の課題やってるのか…って私もやってない!!)
急いで璃泉子は理科の参考書を開く。残り5分で3ページいける!!
璃月は急いで課題を取り組んだ。
…………………………………………………
(ふぅ〜終わった〜マジでつかさありがとすぎる)
(ふぅ〜終わった〜少なかったから助かった〜)
駿と璃月は課題をなんとか終わらさせた。これで2人とも補習は間逃れた。
それと同時にチャイムがなり担任が入ってくる。
「おはようございまーす。黒板は見たか?新しい席に移動するようにしてください」
そう言うとクラスは一斉に席を移動し始めた。駿も璃月も席を動かす。駿が先に席につき、座った。
(マジで緊張する…あの璃月ちゃんが前なんだからな…)
そして璃月も駿の前に席を移動してき、自分の位置に合わしてから、席に着いた。特に話すなどはせずに前を向いている二人。しかし内心は違った。
(ま、前って璃月ちゃん近!?)
(う、後ろにしゅんくんが…?緊張するぅ…)
そんなに距離が近い訳でもない2人。今日のホームルームはドキドキして話が入ってこない2人であった。
いつの間にかホームルームは終わり、1限目開始のチャイムが鳴った。
ガラガラガラ
理科の先生が入ってき、号令をして、いつも通り授業が始まった。
「課題を集めますので、一番後ろの人集めて来てください」
後ろの席の奴らが立って集め始める。
しかし駿は課題が終わった達成感と璃月の後ろに入れる幸福感で頭が回っていたかった。
(あ、あれ、駿くん聞こえなかったのかな…私言った方がいいよね…)
伝えたかったが、なかなか声がでない璃月。しょうがなく、ジェスチャーで伝えることにした。
璃月は駿の方へさっと体を向けた。すると一瞬で駿が我に返る。
(ん?璃月ちゃんがこっち向いた?なにか伝えてる?)
璃月は理科の課題を指さし、その後先生を指さした。
「やっべ!」
そう小声で言うと、駿は慌ててたった。そして急いで課題回収へ回った。
(伝わって良かった…しゅんくん怒られてなくてすんだ)
駿が先生のもとから帰ってきた。
そして璃泉子の席を通る瞬間、駿は小声でこういった。
「さんきゅー山元さん、」
そう言うと駿は自分の席へ座った。
そのまま普通に理科の授業が始まった。しかし璃月は普通ではなかった。
(お、お礼言われちゃった、恥ずかし…)
男子からお礼、ましては好きな人から。璃月には刺激が強すぎたのか顔は熱くなり、理科の授業が全然入ってこなかった。
それは駿も同じだった。
(やっべぇ、必死にジェスチャーしてた璃泉子ちゃん可愛すぎる…)
その璃泉子の背中をずっと見つめている駿であった。
…………………………………………
〜放課後〜
ホームルームが終わり、誰も居なくなった教室には東道高校の半グレグループメンバー駿、|中田準、津田悠、つかさの4人が残って話をしていた。
「マジでつかさありがと、おかげで間に合ったわ。」
「いいよォ〜けどアイス奢ってよねぇ〜」
「ところで準は課題出したの?」
準という男、この男は去年から課題未提出連続記録を更新しようと去年から出していない。
「もちろん、出すわけなぁーい。」
「なら補習いってこぉい。」
つかさがサラッと突っ込む。
補習にいかなったら将来が危ない。けど謎のプライドが準に働く。
「けど補習って課題やるんだろ?ってことは課題するのと一緒じゃん?やだね」
それと同時に校内放送が流れた。
「津田、津田、補習があるので至急理科室前に来てください」
その口調は少し怒り気味だった。放送が流れると悠が慌て気味にこう言う。
「おーい呼ばれてんぞ、しかも高鳴キレてんじゃん」
高鳴先生。怒ると富士山の噴火と言われるくらい怖い先生。さすがに準もビビった。
「な、行くけど、これは課題したことに入んないからな」
「はいはーい早く行け〜」
駿が準の背中を押すと、準が急いで廊下へ出ていった。
少し無言が続いたあと、悠が口を開く。
「今日のしゅうさ、キモかったよ」
「あぁん?どういう事だ?」
俺は特に今日何もしていない。それなのにキモイ?駿の逆鱗に触れようとしいた。
「俺しゅんの二個隣じゃん、で、しゅんのことちょっと見てたんだけどずっと山元の背中ジロジロみてて」
駿の顔が熱くなった。確かに今日一日中無意識に見てたような気がした駿。つかさも口を開く。
「それはキモイねぇ〜しゅん〜」
駿はとっさに思いついたことを必死に言い訳をする
「ち、ちがうんだ!背中に虫ついてたからさ取ろうとしたけど触るとやばいよな〜ってあはは」
「6時間も背中に虫付いてたんだねぇ〜」
(うぐっ)
そして、悠が思いもよらぬことを言った。
「まさか山元のこと好きなのか?」
駿にとって図星だった。駿の顔が熱くなるり、恥ずかしさとやばいという気持ちが襲う
「んなわけ!確かに可愛いけど、好きまではいかねぇよ!」
つかさが真剣な目で駿をみる。
「恋愛はダメってルールでしょ?破ったら、みんなからボコられるからね〜?」
このグループでルールを破ると酷い目にあう、それは駿もよく知っていた。
「わかってるよ、好きな訳じゃねぇからな!じゃ俺は帰る」
これ以上璃月の話をされたらマズいと思った駿は、そう言うと駿は教室のドアを勢いよく開け、走ってで教室を出た。ため息をついたつかさは悠に語りかける。
「怪しいねぇ〜しゅん」
「大丈夫だろ、アイツああ見えてもリーダだし?、破ったらどうなるか、あいつがよく知っている。」
「だよねぇー僕たちも帰ろう。」
2人同時にたって教室を出ようとする。そこでつかさがなにかに気づく。
「あ、お、いアイスっっゥ!!!」
アイスを奢ってもらう約束を忘れていた。
そう言うと全速力で駿の後を追い始めた。
「ゆうごめん、これは、追いかけなきゃダメだ!!」
「おい待てつかさ!!!チクショっ置いてかれた」
つかさはダッシュで駿の所へと向かった。
…………………………………………
(なのかちゃん遅いな〜)
璃月は親友の浅海菜乃花を、待っていた。ロングヘアが特徴で友達も多い璃月とは真反対な人格。そんな菜乃花は委員会に行くと言ったきり30分は帰ってきてない
。だから、ひとりでキョトンとひとりでほのかを待っていた。
(これは当分帰ってきそうにないなぁ〜帰るか…)
諦めて帰ろうとしたその時。
コンコンコンコンコン
少しテンポの早い足音が聞こえてきた。
そして、璃月の後ろで足音が止まった。
(なのかちゃんかな!やっとだ!)
そう思い振り返った。しかしそこに居たのは、菜乃花ではなく、駿だった。
(り、璃月ちゃん?やっべぇ不意打ちかよ!!)
思わず駿は璃月の顔をじっと見てしまっていた。それは璃月も同じだった。
(し、しゅん君…やばめっちゃ目合ってる。)
3秒ほど目が合った瞬間、駿は無言で璃月を通り過ぎ、靴を履き替え、校舎を出ようとする。
(あーあ変な印象ついちゃったかな…なんか言えば良かった…なんで私はいつも)
下を向いてガッカリした璃月。と思ったその瞬間だった。歩き始めていた駿がとまり、顔が見えない程度で璃月の方を向いた。
「じゃっ、またな」
こう駿がいいと、右手をあげ、校舎を出た。
突然の挨拶、5秒固まった璃月だが、駿にさよならを返そうとした。
「っっ!バイバ…」
しかしそのこに駿の姿はなかった。
(嘘…挨拶返せなかった。で、でも…)
タッタッタッタッ
「りずき!!お待たせぇ!帰ろ!」
菜乃花が委員会から帰ってきた。長いロングヘアを揺らしながら走りながら璃月に近づく。
「いやぁ、委員会長引いちゃって〜あれ、りぃちゃん?、もしもしー…ってえ!!」
璃月の顔を見て、菜乃花は驚いてた。
「顔真っ赤だよ!どうしたの!」
璃月は少し嬉しそうにニヤニヤしながらこう返した。
「えへへ、なんか、変なものでも食べたのかな〜えへへ」
目が合ってから、駿が璃月へ挨拶をしてくれた。これは璃月にとって正気ではいられなかった出来事だったのだ
………………………………………………
(やっべぇ、めっちゃ格好付けちまった。変なやつだと思われた終わった。)
駿は変に挨拶してしまい、後悔をしていた。変に恥ずかしくかった。そして目が合ってしまったことを思い出してしまう。
(やべぇ、璃月ちゃんのことめっちゃみてしまった…大丈夫かな?)
すると後ろから足音が聞こえてくる。
「しゅーん!!!おい、アイス忘れるなぁ!!!」
急いでつかさが駿の横へ駆け寄るが、駿は璃月のことが頭いっぱいでつかさに気づいていない。
「おーい聞こえてるぅ〜?って、どうした!」
つかさは驚く声で言った。
「顔真っ赤ジャァーン、どうしたのぉ?」
駿も璃月に似たような表情でこういった。
「あはは、なんか、変なものでも食べたかな〜」
「そうなんだ、なんか怪しいねぇ〜
でもアイス奢れよハーゲンダッス3個」
「あっはい…」
現実に戻された駿。その後お小遣いのほとんどを使い果たしてしまった駿であった