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呪いの一族と一般人

想いの卵



『主人。そろそろ来られますよ』


 唐獅子(からじし)の前足でポムポムと左腕を叩かれて、壮太郎(そうたろう)は顔を上げる。どうやら、また時間を忘れて呪具作りに没頭していたようだ。


 室内の時計を確認すれば、十八時前を示している。

 椅子から立ち上がって伸びをした後、作業部屋を出る。玄関に向かうと、呪具の気配が近づいて来るのを感じた。壮太郎は玄関のドアを開ける。


「いらっしゃい。チビノスケ。ピヨ子ちゃん」

「壮太郎さん。こんばんわ」

 笑顔の日和(ひより)と、不機嫌顔の碧真(あおし)。対照的な表情を見て、壮太郎は小さく笑いながら、二人を家の中に招き入れた。


 二〇二一年、一月二十日の水曜日。

 今日は壮太郎の家に日和と碧真を呼んで、一緒に夕飯を食べる約束をしていた。


 人外が見えるようになるブレスレットの呪具を二人に手渡して、リビングまで案内する。

 頭にお盆を乗せた唐獅子が、ニコリと笑って二人を出迎えた。


『お二人とも、ようこそいらっしゃいました。寒かったでしょう? まずは、お茶を飲んで温まってください』


 ソファ前のローテーブルの中央に置かれた卓上コンロの上で、グツグツと煮えているすき焼き。美味しそうな匂いと見た目に、日和は食べる前から頬が緩んでいる。

 二人にテーブルの前に座るように促す。壮太郎が部屋の奥の方、テーブルの妻手(つまで)側に一人で座る。碧真と日和はテーブルの長手(ながて)側に二人で横並びに座った。


(チビノスケ。わざわざ僕からピヨ子ちゃんを離すように座ったね)

 壮太郎に近い左側の席に碧真が座っている。今までの碧真なら、壮太郎を(わずら)わしく思って離れた位置に座っていただろう。会う度に、日和への独占欲が強くなっている気がして、壮太郎は苦笑した。


「じゃあ、早速食べようか」

 壮太郎が手を合わせると、日和も(なら)う。


「「いただきます」」

 日和と壮太郎が声を合わせて言う。碧真は少しだけ頭を下げた。


『お肉もいっぱいありますので、たくさん食べてくださいね』

「はい! ありがとうございます!」

 

 日和は肉を口に運んで咀嚼した後、目を見開く。


「お、お肉が甘い……」

「すき焼きだからだろう?」

「違うの! お肉そのものに甘さを感じるの! しかも柔らかい!」

 牛肉は好きでも普段はあまり食べない日和にとって、今回のすき焼きの肉は別次元のものだったのだろう。えらく感動している。


「喜んでもらえてよかったよ」

 壮太郎はニコリと笑う。食事を作った唐獅子も嬉しそうに笑顔を浮かべていた。


「すき焼き、すっごく久々です。やっぱり美味しいですね」

『普段はあまり召し上がられないのですか?』

「一人暮らしだから、すき焼きとか、おでんとかは作らないんですよね。お鍋なら一人用で作るんですけど」

『ご友人とか、恋人の方をご自宅に呼んで振る舞う事は?』

「……ははは。そういうキラキラしたイベントは、私の人生に存在しないです」

 日和はどんよりした顔で落ち込む。


 日和は友人が二人いるらしいが、滅多に遊ばないと話していた。恋人もいた事が無いと言っていたので、手料理を振る舞う機会は無かったのだろう。

 人間は誰かと一緒に生きる物だと思っている唐獅子は、キョトンとした顔で首を傾げた。


 全員が食べ進めている中、壮太郎は日和を見て首を傾げる。

 日和は感動していた割には肉をあまり食べていない。どちらかと言うと、豆腐や野菜を食べていた。


「ピヨ子ちゃん。どうしたの? お肉も遠慮しないで食べていいよ」

 また面倒臭い遠慮をしているのかと思って声を掛けると、日和が悲しそうに眉を下げた。


「美味しいんですけど、お肉の脂を胃が受け付けてくれないんです……」

 どうやら、霜降り肉の脂に参っていたらしい。碧真が呆れた顔で日和を見る。


「あんなに喜んでおいて、加齢でダメとかダサすぎだろ」

「加齢って言わないでよ! 私より胃が若いからって調子に乗って!」

「胃だけじゃなくて、実際、日和より若いからな」

「こんな時にだけ年下を発揮しないで! 年下なら、もっとあざとく振る舞って、周りに可愛がられるようになってよ!」

「ピヨ子ちゃん。あざといチビノスケを見たいの?」

「…………スーッ。……っいや、怖いですね」

「おい。今、何を想像した?」

「待って、碧真君。頭を掴まないで! 何も想像してないから! 碧真君が両手を頬に添えてキャピってするところなんて……痛いっ!!」


 碧真は左手で日和の頭を鷲掴みにして指先で締め付ける。いつもの光景だなと壮太郎が適当に流していると、向かいの席に座っていた唐獅子がソファの上に乗って移動し、碧真の背後に回った。


『食事の席でそんな事をしたら危ないですよ。碧真さん。めっ!』

 唐獅子が碧真の背中に前足をポムッと添える。小さな子供のように怒られる碧真を見て、日和が堪えきれずに吹き出した。碧真はギロリと日和を睨む。


「日和。後で覚えとけよ」

「ひっ! か、唐獅子さん。今日、碧真君の車に一緒に乗って行きませんか? 私の家に泊まって頂いて……」

『お断りします。主人を一人にしておくと、(ろく)な事になりませんから』

「あれ? 唐獅子。どういう意味かな?」

『そのままの意味ですよ。坊ちゃん、かつての自分をお忘れですか? 大学生生活が始まる前、生活力が無さすぎて死にかけていた事!』

 

 唐獅子に過去を持ち出されて、壮太郎はスイッと視線を逸らす。



 大学生になる前の春の事。

 壮太郎と丈は実家から離れた大学に通う為、一人暮らしを始めることになった。マンションの隣り合った部屋を借りる事が出来たのは良かったが、契約や引っ越し業者の関係で、壮太郎は丈より四日早くマンションに入居する事になった。

 初めての一人暮らし。誰にも怒られる事なく、呪具作りに没頭出来る環境。丈が来るまで暇だった事もあり、壮太郎は呪具作りにのめり込んだ。


 引っ越しから三日後。

 心配して様子を見に来た唐獅子が発見したのは、食事を摂る事を忘れて低血糖状態になって倒れた壮太郎の姿だった。

 そこから一人と一匹の暮らしが始まり、現在まで続いている。壮太郎は唐獅子のお陰で、人間的な生活を送れていると言っても過言では無い。



『坊ちゃんを一人にしておくのは危険ですので。日和さんが碧真さんに血祭りに上げられても、私は助ける事が出来ません。せめて、心残り無く成仏出来るように、しっかりと食べて帰ってください』


「え? これが私の最後の晩餐?」

 唐獅子に真剣なトーンで語られて、真に受けてしまった日和はショックで固まる。真面目な一匹と一人の可笑しさに、壮太郎は笑った。


「まあ、好きなのを好きなだけ食べていってよ」

 壮太郎は器によそった肉を食べ進める。日和に見られている事に気づいて、壮太郎は首を傾げた。


「どうしたの?」

「壮太郎さんは、お肉をそんなに食べても平気なんですか? 胃もたれとかしないですか?」

「んー? 僕はそういうの無いかも。唐揚げとか天ぷらも平気だし。このくらいの脂でダメージは無いかな」

「え」

 自分より年上の壮太郎の方が胃が若い事が信じられないのか、日和は目を丸くする。碧真は小馬鹿にした顔で、日和を鼻で笑った。


「老いているのは、日和だけだな」

「待って!? 私だけ老化とかヤダ!! 何で!?」

「本当に謎だよな。見た目も中身もガキなのに、内臓だけ老化とか」


『……全ての老いを内臓が請け負っているという事ですかね?』

「やめて! 怖いこと言わないでください!」


『すみません。でも、体質だと思いますよ。主人が若いだけです。決して日和さんの内臓だけが急激に老化しているわけではないです。きっと、ゆっくり老化していっているんですよ』


「微妙な優しさが痛いぃっ!」

 日和は両手で顔を覆って俯く。壮太郎は声を出して笑った。


(本当、ピヨ子ちゃんがいると、周りを巻き込んでコントみたいなやり取りが自然発生するのは何でだろう?) 


『胃をスッキリさせる為にも、レモン湯を作りましょうか! 待っていてくださいね』

 良い慰めの言葉が見つからなかった唐獅子は、逃げと優しさを発揮してキッチンへ向かう。ひとしきり笑った後、壮太郎は碧真を見る。あまり箸が進んでいないようだ。

 

「チビノスケ、もっと食べなよ」

「食べてますよ」

「そう? あまり食べていないように見えるけど」

「壮太郎さんが食べる量が多いから、そう見えるだけでしょ」

 日和は箸を止めて碧真を見る。


「碧真君。もしかして、味が濃い?」

「ん? どういう事?」

「碧真君、濃い味付けの物が苦手みたいなんですよ。すき焼きも最初より煮詰まっちゃっているので、味が濃くなって食べづらいのかと思って。お茶も無くなってますし」

 言われてみれば、碧真は器に卵を追加している上に湯呑みが空になっていた。


「ちょっと、薄める物を貰って来ます」

 日和はそう言って立ち上がると、唐獅子のいるキッチンへ移動した。


「ピヨ子ちゃん。すっかりチビノスケの事に詳しくなっているよね。それだけ一緒にいるんだろうけど」

 壮太郎がニヤニヤ笑いながら言うと、不機嫌顔の碧真にジロリと睨まれた。


「何が言いたいんですか?」

「別に。ただ単に、仲がいいねって言ってるだけだよ。それとも、(かん)()られるような仲にまで進展したの?」

 碧真は更に目を鋭くして壮太郎を睨みつける。碧真の瞳の中に様々な想いがあるのを見て、壮太郎は溜め息を吐いた。


「鬼降魔のしがらみは確かにあるだろう。だけど、それをどうするかは、結局はチビノスケ次第だよ。チビノスケは、もう周りに翻弄されるだけの子供じゃない。僕も丈君も、昔より出来る事は増えた。何か話したい事があるなら聞くし、力になれる。だから」


「昆布水を貰って来ましたよ。これで薄めましょう! お茶のおかわりも……」

 明るい笑顔で戻ってきた日和は、空気の違いを感じ取って気まずそうな顔をした。

 

「す、すみません。もしかして、何か大事な話をしてましたか?」

「いや。ただ、チビノスケが濃い味が嫌いなの知らなかったなって話してただけ」

 日和はホッとした後、苦笑する。


「碧真君、苦手な物でも残さないように食べようとしますからね。私も最近見ていて知りましたし」

 日和は計量カップを傾けて、鍋に昆布水を注ぎ入れる。自然な動作で碧真の湯呑みにお茶を注いだ後、席に座った。


「そういえば、チビノスケとピヨ子ちゃんは最近よく一緒にご飯に行ってるみたいだね」

「はい。碧真君が知り合いの方に無料の食事券をもらったらしくて、明後日も一緒に」

 碧真が右手を伸ばして日和の口を塞ぐ。碧真の気まずそうな表情を見て、壮太郎は吹き出した。


(チビノスケ。僕が提案した方法を本当に使ったんだ。どんだけ、ピヨ子ちゃんと出掛けたかったの)

 碧真が壮太郎をギロリと睨む。一人だけ何もわかっていない日和は困惑していた。


(これなら、僕が今日お節介を焼く必要はなかったね。まあ、楽しいからいいか)

 壮太郎が今日食事に誘ったのは、碧真が日和から食事の誘いを断られたという話を聞いて、二人が会える時間を増やす事に協力しようと思ったからだ。


(ピヨ子ちゃんは美味しい物で簡単に釣れるし。チビノスケはピヨ子ちゃんと僕を二人にしたくないだろうからついてくる。本当に誘い出しやすい二人だよね)


 ついでに、もう一つ面白い事を思いついて、壮太郎はニヤリと笑う。


「ねえ、ピヨ子ちゃん。卵焼きって作れる?」

「はい。作れますよ。お弁当を作ってた頃は、毎回おかずに入れてましたし」

「じゃあ、僕の為に卵焼きを今から作ってくれない? 急に食べたくなっちゃったんだ」

「え? でも、私、唐獅子さんみたいに料理上手じゃないですよ」

『坊ちゃん。お客様にそんな事させちゃダメですよ。私が……』

 丁度キッチンから戻ってきた唐獅子に、壮太郎は圧をかけてニコリと笑う。


「唐獅子、調味料の場所を教えてあげてね。材料も自由に使っていいから」

『……わかりました。日和さん。行きましょうか』

 唐獅子は壮太郎の考えを察して苦い顔をしつつも、日和を促してキッチンへと向かった。


 暫くして、日和がお皿に卵焼きを載せて戻って来た。

 謙遜している割には、綺麗な形で美味しそうな見た目の卵焼きだった。


「美味しそうだね」

 壮太郎が誉めると、日和は照れた顔をした。


「ちゃんと味見はしてますけど、口に合わなかったら後で私が食べるので。無理して食べるとかはしないでくださいね」

『それは大丈夫で……』

 唐獅子は不自然に言葉を止めると、何かを思い出したかのように『あ!』と声を上げた。


『そうです! 日和さん、お菓子をいくつか持って帰りませんか? 主人宛にたくさん贈り物が届いていて、食べきれなくて困っているんです』

「え!? 本当ですか!? 欲しいです!」

『では、客間の方へ行きましょう。主人、作業部屋に置いてたお菓子もありましたよね? 持って来てもらっていいですか?』


「うん。わかったよ」

 唐獅子に言われて、壮太郎は立ち上がる。日和が好きそうな菓子が入った段ボール箱を客間に持っていく。キッチンのストック棚に入り切れずに客間のクローゼットに押し込んでいた菓子の山を見て、日和は嬉しそうに目を輝かせていた。


(さてと、ピヨ子ちゃんの卵焼きを使って、チビノスケを揶揄(からか)おうっと。目の前で食べられたら、チビノスケも悔しがるだろうな)

 上機嫌にリビングに戻った壮太郎は、目の前の光景にポカンとした。

 

 碧真が日和の作った卵焼きを一人で黙々と食べていた。


「え。ちょっと、チビノスケ? 何で食べてるの? それ、僕の為にピヨ子ちゃんが作ってくれた物なんだけど?」

 まさか、壮太郎が席を外した間に食べるとは思っていなかった。碧真は卵焼きを咀嚼した後、壮太郎を見てツンと顔を逸らす。


「”好きなのを好きなだけ食べろ”って言ったのは、壮太郎さんでしょ」

 碧真は卵焼きの皿を手に持って、取られないようにガッチリとガードしている。どうやら、独り占めするつもりらしい。


(これは、唐獅子もグルだね。やられた)

 作業部屋には作りかけの呪具があるから勝手に動かさない方がいいと判断して菓子を取って来るように頼んだのだと思っていたが、どうやら違ったようだ。


 壮太郎は、やれやれと溜め息を吐く。


「チビノスケ、味はどうだったの?」

 卵焼きを完食した碧真は、知らん顔をしてお茶を飲む。


「人の物を食べたんだから、味の感想くらい答えてもいいじゃん」

「卵でした」

「いや、そうじゃなくて、美味しいか美味しくないかだよ」

「答えたんだからいいでしょ」


 菓子が入った紙袋を抱えてホクホク顔の日和がリビングに戻って来た。空になった卵焼きの皿を見て、日和はパアッと明るい笑顔を浮かべる。


「よかった。味は大丈夫でしたか?」

「うん。美味しかったんだよね? チビノスケ」

 話を振ったが、碧真は無言だった。唐獅子が再びソファの上を通って移動し、碧真の肩に前足を乗せる。


『碧真さん。作ってくれた料理に何も反応が無いのは悲しいものですよ。それに、女性の記憶力を舐めてはいけません。もう二度と、作ってもらえなくなりますよ』


 人の世を長い間見てきた唐獅子の言葉の重みを感じ取ったのか、碧真は苦々しい顔で葛藤しながらも口を開く。


「……う……ま、あまあだった」


 碧真は日和から顔を逸らして言う。唐獅子は『何故そこで誤魔化すのだろう?』と呆れた目で碧真を見上げた。碧真の面倒臭い性格に、壮太郎も苦笑する。

 

 日和は特に気に留める事もなく「よかった」と笑う。日和がいいのなら、いいかと壮太郎と唐獅子も流す事にした。


 食事を終えて、三人と一匹でトランプで遊びながら談笑する。日和が明日も仕事がある為、小さな食事会は二十時でお開きとなった。


「今日は本当にごちそうさまでした。美味しかったです」

「よかった。こっちも楽しかったよ。ありがとう」

『また是非来てくださいね』


 壮太郎に呪具を返した後、碧真と日和は帰って行った。玄関のドアを閉めようとした時に見えたのは、手を繋いで帰る二人の後ろ姿だった。壮太郎は微笑みながらドアを閉める。


『今日は楽しかったですね』

「うん。楽しかった。というか、唐獅子。ピヨ子ちゃんが卵焼きを出した後、僕にわざと席を外させたね?」


『うっ。いや、だって、碧真さんが凄く恨めしそうに卵焼きを凝視していたんですよ! 主人がいつものように揶揄いの道具に使っていたら、絶対に邪気を飛ばされています! 主人を守る為の行動です!』


 唐獅子は真剣な目で訴える。壮太郎はその時の碧真の顔を見ていなかったが、相当嫉妬深い目をしていたのだろう。


「でも、一切れくらいは食べてみたかったなあ。チビノスケが独り占めしちゃうくらい美味しかったみたいだし。いや、ただの独占欲なのかな?」


『美味しかったからだと思いますよ。私もキッチンで味見させてもらったんですけど、甘味と塩味のバランスも良くて卵の味もしっかりして、優しい味わいでした。私は醤油入りの卵焼きを初めて食べたんですけど、結構合いますね』


「え。唐獅子も食べてたの? 僕の為に作ってもらったのに、僕だけ食べてないのか」

『でも、日和さんが卵焼きを作っている時は、碧真さんも食べるかもしれないから食べやすい味付けにしようって話していましたよ? 主人はオマケですね』


 オマケ扱いをされて、壮太郎は苦笑する。日和にそんなつもりは無いのだろうが、すき焼きをあまり食べていなかった碧真に配慮して作ったのは事実なのだろう。


「まあ、当初の目的は達成したんだから良しとしよう」


『あのお二人、本当に微妙な関係ですよね。人間の命は短いのですから、自分の想いにそっぽを向いている暇なんて無いのに』


「人間は臆病だからね。僕達は温かい目で見守るとしよう」

『絶対に面白がっているでしょう?』

「否定はしないよ。実際、面白いからね」

 唐獅子が呆れたような目で壮太郎を見上げる。


「でも、幸せであって欲しいとは思うくらいの情はあるよ……」


 近づけようとしなくても、きっと近づいていく。

 本人達が止められないくらいに、想いを(かさ)ねて壊れてしまうのか。


 それとも、その(かさ)ねた想いの中から何かが生まれるのだろうか。


 

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