表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海のdoll  作者: 水菜月
4/16

*夕映 ④


 夕映さんは、歌う詩人だ。

 どの歌も優しく、弱き者を孤独から拾い上げる。心に隠しているものを掴まれてしまう。

 開いた心の奥の棘を抜いてもらって、ほっとして軽くなっていく。


 でも、近くに居られるようになって、私にはわかってきたことがあるんだ。

 誰かを楽にしたその分、夕映さんには無数の針が刺さっていくのが見える。

 待ち針を無造作に差し込んだ針山のようだ。クッションには血は流れないけれど深い刺し傷ができる。

 針は玻璃に変化する。錆びないように凍結したガラスの欠片。


 だんだんライブの後の回復が遅くなっている。笑顔になれるまでの日数が少しずつ長くなる。誰も救えないくらいにあなたの内情は重傷。どんな経緯を経てここまで来たの。痛々しいよ。 

 

 彼女の歌の中で飛び切りすきな曲『海のdoll』

 人魚姫のように最後には消えゆく女の子の物語。いちばん夕映さんに似ている気がして、せつなくなる。


 でも、その人魚姫は王子様から身を引くのではなく、謙虚でも可哀そうでもなく、世界中に烙印を残し続けることを計算して、心を燃やし続けた人形。

 泡になっていくのは、何も譲らない、欲望に身を任せた当然の結果。受け身では決してなかったんだ。


 私は、こんな風になりたい、なりたく、なりたくない。

 でも、それは本人が願うかどうかで決まる訳ではない。

 気が付けば引き付けられて網の中だ。もう止められはしない。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ