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桜の樹の下で

作者: 星野紗奈
掲載日:2020/01/21

お久しぶりです、星野紗奈です(*^^*)


こちらは昔投稿した『桜の木の下で。』という作品の改版になります。

少し文章を足したり、表現を直したりしました。

数年前とは(良くも悪くも)感受性が変わってしまったので、昔の作品は素直なままとっておきたいと考え、新しい作品として投稿させていただくことにしました。


それでは、どうぞ↓

桜の樹の下で、僕らは出会った。

その瞬間、心に花が咲いてあたたかい匂いに包まれたような気がした。

この世界にはこんなに不思議な感情があるのかと初めて知った。

同時に、少し怖くなった。

いつか忘れてしまうかもしれない。

でも、忘れたくない。

心から、この日を大切にしたいと思った。

だから、写真で残すことにした。

「楽しみだね。」

四人でそう言って、笑いあった。

今でも覚えている。

また今年もその日が来る。


僕は、白井賢人。

一緒に話しているのは、菊田麻里、桜川和、青樹翔だ。

小学校六年生の時、僕らは初めて同じクラスになった。

でも、もう親友だ。

そんな僕らには、毎年恒例のイベントがある。

それは、『「出会ってから、〇年」記念』だ。

僕らが出会った桜の樹の下で、写真を撮る。

その写真を印刷して、「出会ってから、〇年」という文字をかく。

その他は自由で、ほぼ落書き。

でも、そんなふざけあう時間が、僕にとって、最高の時間だ。


小学校六年生の三月。

「出会って1年」卒業式のあとに集合した。とびっきりの笑顔が写真にうつっていた。

中学一年生の三月。

「出会って2年」和だけ別の中学に行ってしまったから、休日に集まった。みんな大人っぽくなってたな。

中学二年生の三月。

「出会って3年」もうすぐ中学三年生ってことで、盛り上がったな。勉強が難しかったり、友達関係がうまくいかなかったり、ネガティブなことばかり言っちゃった。

中学三年生の三月。

「出会って4年」卒業式がたまたま同じ日だったから、卒業式のあとにやった。いろいろ思い出しちゃって、みんなで泣いた。

高校一年生の三月。

「出会って5年」もう英語もだいぶ話せるようになって、なぜか英会話やってた。僕と翔は、麻里と和に勉強を教えてもらってた。

高校二年生の三月。

「出会って6年」テストや模試の点数が悪くなってきて、会う機会が減った。だから、久しぶりだったな。中学二年生の三月みたいに、もうすぐ高校三年生って、盛り上がった。

高校三年生の三月。

「出会って7年」もう卒業か、ってなったよな。いろいろあったから、卒業式で泣いた。

十九歳の三月。

「出会って8年」みんなアルバイトの愚痴ばかりこぼしてたけど、いろいろ話せて楽しかった。

二十歳の三月。

「出会って9年」もう付き合ったりして、麻里と和は恋バナとかやってたな。成人式でも会ったけど、僕たち、ちゃんと着物が似合う立派な大人になったよな。


あなたには、大切な思い出はありますか?

いつまでも心の奥にしまっておきたい大切な何かはありますか。

楽しかったこと、悲しかったこと、いろいろあるかもしれません。

でも、残しておいて。

消してしまったら、取り戻せなくなる。


僕は死んだ。

二十歳の四月に。

出かけるときにのったタクシーが事故にあったんだ。

だけど、まあ仕方ないのかなって思ってた。

(誰も悲しむことはないだろうから、別にいいか。)

(僕が居なくても世界はちゃんとまわるわけだし。)

初めは、そう思っていた。

でも。


僕のお葬式には、もちろんあの三人も来ていた。

麻里は子供みたいに大声出していた。

和もぽろぽろしずくを落として泣いていた。

いつも笑顔の翔でさえ、顔が涙でぐしゃぐしゃになっていた。

みんな、泣いていた。

「もどってきて。」

そんな声が聞こえた気がした。

だから、僕も泣いた。


僕は今も桜の樹の下で三人と会えるけど、もう一緒に笑うことはできない。

話しかけてもらっても、その返事はみんなには届かない。

それでも、「ずっと忘れないよ。」と声をかけてもらえることが嬉しくてたまらない。

それなのに、こんなにも近くにいるのに、自分は何もできないことが悔しくてたまらない。


僕は死んでから、とても幸せだったんだと、ちゃんとわかった。

みんなの輪の中には、紛れもない、この世にたった一人の僕がいたんだとわかった。

だからもう、自分が居なくてもいいないなんて思わない。

僕は、今を一生懸命生きていたかった。

だから、その願いを、


あなたに託します。

最後までお読みいただきありがとうございました(^^)

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