夢の中の宗教勧誘?
「…ソ………ラ…タ…」
ーー思考がハッキリしない
「ソラ…タ……ソラタ…」
ーー身体の感覚が定まらない
「ソラターー。」
ーー聞こえる。
ーー誰かが俺を呼んでる。
「ソラタ…ソラターー。」
ーーそっと目を開くと
ーーあたりは闇、闇、闇、暗闇
ーーだけど一点だけ光がさしてる。
ーー光の中心に人影が見える、俺は確信する
俺を呼ぶ声の主はこの人影だろう、と。
ーー光の中心に視線を集中する。
ーー声からして女性なのは間違いないだろうが。逆光で良く見えない、顔なんて暗いモヤがかかってるのかまったく認識できない。
ーーだけど一ヶ所だけハッキリと見える。
逆光の中ひときわ輝く薄桃色のーー
ーーとても、綺麗な髪が…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ソラタ…。」
彼女が呼ぶ
「…君はだれ?」
ソラタが問う
「待ってる…」
彼女が答える
「…だれ?」
ソラタが問う
「…待ってる」
彼女が答える
「……っーーイヤイヤ答えになってない」
ソラタはツッコみを入れる
「え…(・・;)」
彼女が少し困惑する
「君はだれ?…名前を聞いてるんだけど。」
ソラタが再び問う
「待ってる…(・_・;」
彼女が困惑しながら答える
「まってる?まってるって名前なの?
それはどこまでが苗字でどこからが名前なの?
まっが苗字?てるが名前?それとも苗字は無くて
まってるが名前なの?」
ソラタはすかさず問う
「え、あの…その、…まっ…てる…。」
彼女はさらに困惑しながら答える
この空間に慣れてきたソラタがさらに追い打ちをかける。
「だから答えになってない、まってるで良いの?
君の名前は?俺は名前を聞いているですよ。君は俺の名を知ってるからいいけど俺は君の名前すら知らないのですよ。不公平だと思わないか?
そんな状況で「待ってる」なんて言われたって困るんですよ。ーーもう1度聞きますよ?あなたの名前は?」
「……ふぅ…うううぅー.(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`).」
もはや彼女は泣顔である
「え、ウソ…泣いてる?そんなに泣くほど?
名前を聞いただけなのに?」
ソラタが困惑する
(そもそもここはどこなんだ?現実?夢の中?
誰の?俺の?わからんーー、夢の中だとしても意識がハッキリしてるし、現実だとしていったいどこなんだ?)
(…まさか寝てる間にどっかの宗教団体なんかにさらわれて今まさに勧誘と言う名の
茶番劇に付き合わせれてるのか?だとしたら結構凝った芝居するな…。)
ソラタが少しだけ関心する
彼女を見ると
「うぅぅ……グスっ…グス…ーー」
まだ泣く彼女
周りを見渡すソラタ、…暗い空間、壁も無ければ天井もない、ただ暗いだけで見えないだけかもしれない、唯一彼女の背後にさしてる光だけが彼女の周りを少しだけ照らしてる、その光の元へ行こうとするとーー。
(ーーんん?……ンンン?)
再び困惑するソラタ
(歩いてる、歩いてる筈なのにいっこうに彼女との距離が縮まらないーーどうしてだ?
壁にぶつかってる感触もなければ、床が動いてる感覚もない…そもそも俺はちゃんと地面に立っているのか?歩いてる感覚わあるが地面に立っている感覚がない…。
そして彼女との距離は4メートルほどだろうかーーだけど)
歩いても歩いてもいっこうに距離が縮まらないーー
やはり夢なのか?
泣き続ける彼女
そしてソラタは吹く
「ーー俺にどうしろと…」
そのとき
彼女が口を開く
「グス……っ、なんで…っ」
「ん…?」
ソラタが彼女を見ると少しだけ泣き止んだ彼女が、だがそれと同時に少しだけ…イヤかなりご立腹の彼女が。顔はよく見えないが確実に怒っている彼女がまくしたてる。
「なんで…なんで!そこでツッコんでくるのよー!?そこは普通、「必ず迎えに行く!」とかそのまま何も答えずにブラックアウトするのがテンプレでしょ!?名前を聞くのはまだ良いとしても
名前を答えない事に関してツッコミを入れないでよ!察してよ!空気呼んでよ⁉︎これじゃあ始まるものも始まらないよぉぉお。゜(゜´Д`゜)゜。」
彼女が怒りながらまくしたてたと思うとまた泣き始めた。
完全に困惑したソラタは思う
(逆ギレかよ…この人一体なにをいってんだ?
ブラックアウト?テンプレ?なにが始まるん?
ダメだ、訳がわからん)
そしてソラタは彼女に落ち着くように話す
「とりあえず落ち着いて下さい、はい深呼吸!」
「ぁあぁぁ…グス……うぇ…?」
「深呼吸!息を鼻から大きく吸ってー…
口からはくー…はい深呼吸!」
「グス……スー…はー…すー…はぁー…」
「落ち着きましか?」
「…はぃ…取り乱してごめんなしゃい…」
落ち着いた彼女を見て少し安心したソラタは
彼女を刺激しないように問う
「なら良かった…それで話を戻したいのですけど、いくつか質問してもよろしいですか?」
「はい…良いですよ、答えられる範囲でよろしければ。」
何故か敬語になる二人
「まずはこの空間は一体なんですか?夢の中?
それとま何処かの倉庫か宗教団体の滞在地かなにかですか?」
「ごめんなさい答えられません」
(いきなりかよ…しかも即答かよ、)
「なら…君は何者なんでしょうか?」
「答えられません」
「………」
だんだんイライラしてきたソラタ
(なら少し彼女の要望に応えるように質問をしよう)
「…じゃあ『待ってる』って言っていたけど、どこに行けば良いんですか?」
「…迎えに来てくれるの?」
(おっ!食い付いたぞ!)
「あぁ!迎えに行く必ず迎えに行く!」
「ホントに…?」
「本当に!絶対に行く!だからどこに行けば良いんですか⁈」
「……知りません。」
「………………………………。」
…………………………………………。
まさかのナレーションまでもが完全沈黙
そしてとうとうソラタに限界がきた
「ーーっふっざけんなぁあああー!!!アンタ答える気ないだろ⁈全くもって無いだろ⁈
やっぱ宗教の連中なのか!?そうなのか⁈
そもそも迎えに行くってなに⁈
いま目の前にいる奴を迎えにいくってなに⁈
アンタ俺をからかってんだろ⁈」
今度はソラタが壊れたようにまくしたてる。
「あの…あのあの…ごめんなさい!落ち着いてください!ーほら深呼吸!深呼吸ですよ!!」
困惑しながらもソラタと同じように落ち着かせようとする彼女
「はぁ…ハァ…はぁ……っもういい、…帰してくれ。」
「…え?」
「アンタがどこの誰かも、ここが一体どこなのかも。
もういい、…家に帰してください」
「家に帰す?」
「そーだよ、もう疲れたから早く家に帰してくれ。
それともまだこの茶番劇をするのか?言っとくがどんな勧誘がこようとも俺は絶対に宗教なんかには入団しないからな。」
ソラタが完全否定した目を彼女に向ける
「宗教…?ーっそんなじゃありません!私はあなたを勧誘してるつもりはありません!ただあなたに迎えに来て欲しいだけなんです!」
彼女が切実な目をソラタに向ける
「だから、迎えに行くとしてどこに行けば良いのかわかんないだろ、この空間の構造からして今、目の前にいるアンタと俺は別の空間にいる、もしくは思念体かなんかって事はなんとなく分かるが、実際のアンタがどこにいるのか知らないんじゃ迎えに行きようがないだろ。」
「そう…ですけど。」
「それとも日本中、もしくは世界中捜し回われってか?」
ソラタは彼女の綺麗な薄桃色の髪を見て考える。
(日本ならこの薄桃色の髪は目立つから探す事はできるかもしんないけど、ーー世界中ってなると正直無理だな。)
そして彼女は発するソラタがここへ来て1番困惑する言葉を。
「日本?…そんな地名の場所は知らないですけど…、
世界中ってなると私は多分どこかの王都に幽閉されています。」
「え?」
ソラタは今まで以上に困惑する
(コイツハナニヲイッテイルンダ?)
「ごめんなさい、今の私にはそれぐらいしか情報がありません。実物の私は封印された状態で幽閉されているので。」
さらに困惑する
(ホントに何を言っているんだ?王都?幽閉?封印?wats?)
(日本知らない?何を言ってるん?)
(見た目からして日本人なのに?)
顔はよく見えないが。
(でも服装は着物ぽい物を着ているぞ?)
逆光でよく見えないが。
(そもそも日本語話してるじゃん、日本語ペラペラじゃん、会話通じてんじゃん、ホントに何を言っているんだこの子は?……………。)
カナタの思考は完全に停止した
「…あの…そらたー?」
「…………。」
返事がないただ思考を停止しているだけのようだ。
「……そらたーー!」
「…………。」
返事がないただ思考を停止しているだけのようだ、…もしくはもうめんどくなって返事をしないだけのようだ。
「むー…!そ・ら・たー!!」
「………!おっと、なんだ?」
還って来たソラタ
「もー…やっと返事した、大丈夫?」
「あーいや…大丈夫…なのか?」
「どうして疑問形?、……あのねソラタ?私ソラタに沢山の恩があるの、たくさん幸せをもらったの。だから今度は私がソラタに返す番、ソラタに私のすべてを捧げる番なの!。」
「そのためにはソラタに私を迎えに来てもらわないといけないの!だから私を迎えに来て。」
(…はて?俺はこの子に何かしてあげたのだろうか?全く身に覚えがない、私のすべてを捧げる?
なんかお高いお店のお姉さんが言いそうなフレーズだな(営業フレーズ)、これはあれか新手の詐欺なのか?私のすべてを捧げる詐欺、てきな?……。)
ソラタは再び思考が停止するのをなんとか首を振り食い止める。そして彼女に向けて言い放つ
「んー。ーーわかった。俺がお前を迎えに行く。どこに幽閉されてようが、封印されてようが必ず助けに行く。」
ソラタは真っ直ぐに彼女を見つめ曇りのない眼でそう言い放つ
「…本当に?…ちゃんと迎えに来てくれる?」
彼女は涙ながらにそう言い放つ
「あぁちゃんと迎えに行く!」
だがソラタは、(めんどくさくなったからそれとなく応えてサッサと終わらせよう。)と考え はじめた。
「…うん!待ってる!!」
すると彼女の背後の光が暗闇の空間を覆い尽くすほどに眩く光り始めた…、影で覆われていた彼女の姿がだんだんと鮮明に見えてくる、ーー透き通るような白い肌、東洋風な整った顔だち、長いまつげに覆われた大きく綺麗な朱色の瞳、
そして何よりもあの一点の光しか刺さなかった暗闇の空間でさえもその存在が鮮明かつ眩く光りを浴びていた、腰まで伸びたとても綺麗な薄桃色の髪、100人の人に聞いても、控えめに言って美少女と答えるだろう容姿、それはソラタも例外ではなかった。
(( ゜д゜)………………1億年に一度の美少女が宗教勧誘してきた。)
少し違うが、やはり例外ではなかった。
「ソラタ…。」
1億年に一度の美少女がソラタを呼ぶ。
「( ゜д゜)…………っ!はい!!なんでしょうか⁈」
ソラタがまた敬語になる。
「クス…また敬語になってるよ?」
1億年に一度の美少女がソラタに微笑みかける。
「」
「………っ!」
一瞬意識が飛びそうになるソラタ。
とんでもない破壊力だったが、なんとか持ちこたえたソラタ、…イヤ実際は数秒意識が飛んでいた。
「ーーもう行かなくちゃ。」1億年に一度の美少女がそう告げる、すると1億年に一度の美少女がゆっくりと、光に引き寄せられて行く。
「…そうか」
ソラタが名残惜しく吹く。
ふとソラタが考える、これだけは知っておかないといけない事を。
(これだけは絶対答えてもらえないと厳しいよなー、ナレーションてきにも…)
意を決してソラタが1億年に一度の美少女に冒頭の質問を問いかける。
「最後にもう一度だけ…ーー君の名前は?」
某有名アニメ映画のような台詞を問いかけるソラタ。……良く言ったソラタ!(ガッ)。
確かに主要キャラになりそうなヒロインを
毎回『1億年に一度の美少女』と称すのは
少しばかり厳しいところがある、……イヤかなりキツイ。
(ナレーション、ぶっちゃけたな。)
ソラタが思う
だが1億年に一度の美少女にはその問いかけを一度している、問いかけて答えてくれなかった。
2度目はほぼ皆無だろう、それはソラタも恐らく同じ考えである、1億年に一度の美少女が1度断った回答は……ーーん?
あの質問は本当に1億年に一度の美少女は断っていたのか?なんだか言えないというよりかは、[段階を踏んでくれ。]
そんな意図に聞こえたような?……ん?…んんん?
ついにナレーションの思考が停止するかと思われた時ーー。
『オウカ』
「ふぇ?」
ソラタがふぬけた声をもらす。
「オウカだよ!私の名前。」
ふぇ?
ナレーションがふぬけた文を晒す。
「………………。」
……………………。
(普通に答えるのん?)
普通に答えるのん?
ソラタとナレーションが同時に心の中に巡らす
「もう、ホントにお別れだね…。」
オウカが告げる、
オウカの姿が光の中に吸い込まれて行く、それと同時にソラタの意識が遠のいていくーー。
「っ!オウカ!!必ず!必ずお前を迎えに行く!
そして絶対に助ける!!約束する!だから少しだけ待っててくれ!!」
ソラタが最後の気力を振り絞って声に出して告げる。
「…うんーー待ってる。きっと来てくれる事を信じてる。」
ソラタの意識が途切れていくーー
ーーもう身体も動かない
ーー声も出ない
ーー視野が狭まっていく
最後の瞬間ソラタの目にそれは写った、オウカの背後に佇む巨大な何か。影で覆われていて何なのかは分からないーーだけど邪悪なものではない、それよりも何か暖かいものを、ソラタは感じた。
ーーそしてソラタの意識は完全に途切れる。
あなたにすべてを捧げる…たとえ、
私があってはならないものだとしてもーー。