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落ち込みました?

短めです。

「笑わないで聞いてくれる?」

「それは保証できない」

 

 ミラの態度は打って変わり弱弱しい。


「笑ったら殺すから」

「そうか。善処するよ」


 毒舌にも棘がなかった。だから嫌だってわけじゃないが……何となく調子が狂う。

 俯いた彼女は、か細い言葉を垂らし始める。


「実は私、貴族の生まれなの」

「ふーん。……それでもう笑っていいか?」

「まだ始まってもいないわよ!

 本当に馬鹿なの?」


 彼女の声に怒気が戻る。

 驚いたことも確かだが、それだけならば思いに留めておけばいい。

 わざわざ口に出したのには、もちろん理由がある。たまに理由もなく暴走しちゃうときがあるけども――今は置いておこう。

 どうやら狙い通りの効果があったらしい。


「それでいい。辛いことなのかもしれないが、いや辛いことだからこそ誰かに話すときくらいは気落ちしない方がいいんじゃないか?

 いつも通りで頼むよ」

「そう。まさか貴方が罵倒されて喜ぶ変態だとは思いませんでした」


 突き放すような丁寧語。……うん元通りだな。


「そっちの方が自然だ。続けてくれ」

「えっ罵倒を?」

「ちげーよ。紛らわしい言い方して悪かったな。話の方っ!」

「本当ね。もちろんわかってたけど。あと……」


 勘違いしないでほしいものだ。俺にそんな性癖はない。

 その後、何故かミラは俺に迫ってくる。

 そして、軽い拳が俺の腹を擽った。


「あの――」

「笑った罰。別に感謝なんてしてないからっ」


 吐き捨てると離れていった。

 いやいやもっと側にいて欲しかったとか、そういう感情はないから。

 ただ確かに、一瞬見せた仄かに頬を紅く染めたその表情は、同じく逸脱したものであったが、悪くない。

 心を掴まれる感覚まであった。

 それと、……ツンデレ属性持ちだったのか。もっとプッシュしてくれると嬉しいな、なんて。


「それで私は貴族だったんだけど、結婚が嫌で家を飛び出してきちゃったの」

「ああ。凄いしっくりくる」


 貴族なら婚約者がいて当然か。

 光景がすんなりと目に浮かんくる。これがもし一人娘だった日にゃあ相当な大打撃だな。ドンマイ、ミラのご両親。

 今ごろ……いかんいかん話に集中しよう。


「だけどへまをして、盗賊団に捕まった時には怖くなって、『私は結婚を控えた貴族の娘よ。下手に手を出して怒らせるよりは、金銭を要求した方が』とか言ってそのおかげで誰も手を出せれずに済んだんだけど、自ら捨てた親を迷いもなく頼る自分の姿が……って何で貴方がそんなに落ち込んでいるのよ」

「いやちょっとな――」


 俺は地に足をついて項垂れる。

 立っているだけの気力さえ喪失してしまった。


「今の自分を全否定された気がして。ぐはっ」

「なに?

 よく聞こえなった」

「いやそんな気にすることないと思うぞ。そろそろウェル戻ってくるころだろうし、俺は夜風を浴びて来ることにする」


 俺はふらふらな足取りで外に出た。


 ――ちっちゃいよ。気になっていることがちっちゃすぎるよ。

 だったら俺は何になるんだ?

勇者としての役割をこなす為に与えられた神さまの恩恵を、放棄した今もなお頼り続けている俺はどうなるんだ?

 ……沈みまくって埋まるな。いや貫通までいくかもな。


 新手の罵倒か。何にせよー今まで最もダメージをくらった気がする。

 駄目だ駄目だ。切り替えよう。俺も悪くないし、ミラも悪くない。

 そうだ。それでいこう。

 なんて声かけていいかわらず、飛び出してきてしまったが、あとでフォローを入れておくか。

 何かいい返しを考えないと。


 朧げな足取りで、徘徊する。

 

 冒険者ギルドにたどり着いた。

 思えば、ここに来る予定もあったような?

 ――何だっけ。

 よく思い出せないが、取り敢えず俺は中に入ることにした。

 酒場が盛り上がる時間帯なのだろう。中では、騒ぎ声が響き渡っていた。

 冒険者登録を済ませてしまおうと、俺は静かに受付の列に並ぶ。

 

 十分もせずに、俺の番が来た。

 カティアと刻まれたプレートを胸につけている。

 そばかすおさげの女性だ。あと、胸がでかい。

 しっかりとした服を着ているせいで、その豊満なボディラインが浮かび上がってしまっている。

 ただいまストレスカンスト中。癒された~い。

 俺の中で、飛び込みたくなる気持ちがごった替えしている。逮捕されるオチが見え見えなので、自粛しているけれど。

 ある意味で失敗だな。


「あの、冒険者登録をしたいんですけど」

「そうですか……止めておいた方がいいですよ」

「理由を教えてもらっても」


 すると、カティアさんは手招きしてくる。

 えっいいんすか?

 包まれに行きますよ?


「耳を貸してください」

「……はい」


 ですよね――。

 近くて遠い。


「実は魔物の動きが変なんです」

「そうですか」

「近日中にスタンピードが起こると言われています」

 

 スタンピードとは魔物たちの集団大移動を表す。

 パニック状態に陥っており、街に突撃してくることもあるそう。

 

「その中でも今回は、強大な魔物によるものだと推測されています」

「そうですか……」


 スタンピードにはいくつかの種類がある。

 今回当たるのが、強力な魔物の出現に住処が奪われ、引き起こされるものらしい。


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