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フィリ・ディーアが触れる世界  作者: 市境前12アール
第一章 先史遺跡に住む少女
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10.群像交錯 ~ 非常識との空中戦 ~

 国宝を手にしたまま、目の前を飛ぶ機械人形。その真後ろを追うように飛ぶ戦闘機、一六式イチロクシキ強襲偵察機(アサルトリコナー)。兄のジュディックの命を受けて、第十貨物車両から飛び立ったプリムを待ち受けていたのは、立て続けに起こる、理解不能な非常識の連続だった。



 壁に守られた車内から疾走する列車の上空へと、射出装置によって跳ね上げられる機体。襲いかかる風に姿勢を乱す機体に、操縦席のプリムは操縦桿を操りながら、魔法式を展開する。

 プリムが操る加熱魔法が、機体に搭載された循環型蒸気機関を駆動する。機首のプロペラが回転し、風を生む。操縦桿が機構を伝い、油圧装置が補助翼(エルロン)を、昇降舵(エレベーター)を駆動する。やがて機体は安定化し、翼は風をとらえ、大空高く舞い上がる。

 高速運動体からの射出は、(わず)かな操作ミスが墜落へと直結する高度な技術。それを危なげなくこなしたプリムは周囲を見渡し、特別貨物車両の片輪が次々と撃ちぬかれていくのを目の当たりにする。


(……やばい。あの精度、あの威力。ありゃあ、狙われたらアタイも一撃だ)


 姿の見えぬ狙撃手に、繰り出される銃撃の精度と破壊力。狙いがこちらに移れば間違いなく撃墜される。その前に、まずは狙撃手をどうにかしなければと、空から周囲を見渡しながらプリムは決断し、――その視界の端に映る「何か」に引っかかりを覚える。

 視線を向け、あまりに非現実なモノに対し、一瞬我を忘れるプリム。――低空を猛スピードで飛翔する機械人形という、おおよそ常識とはかけ離れた存在がそこにはあった。


(……何よ、アレ?)


 とても空を飛べるとは思えない、重量感溢れるその姿にプリムは唖然とする。なぜ空を飛べるのかすらわからない、空を飛ぶことを生業(なりわい)とする身では認めることすらできないその非常識は、大地を滑るように進む特別貨物車両に、轟音を上げながら追いすがる。――その様子から、空飛ぶ非常識が目指すものを悟ったプリムは、混乱のままに叫ぶ。


「何よ、何なの、何だってぇの! あのとんでもない精度の狙撃に、今度は空飛ぶ機械人形! おとぎ話じゃないんだよ! ……そう、そうよ、これは私に対する挑戦ね! いいじゃない! 受けて立つわよ!」


 大地を滑るように進む特別貨物車両をめざし、一直線に飛翔する機械人形。やがて特別貨物車両に追いつき、追い抜き、その行く手を阻むかのように立ちふさがると、まるで特別貨物車両と力比べをするかのように押し戻し、力ずくで停止させる。

 特別貨物車両に乗り込み、再び姿を現した機械人形。その手に「国宝」が握られているのを見て、プリムは笑う。その表情はどこかふてぶてしく、そこにいるのが敵だと認めたかのように。そのまま、宣戦布告とばかりに、どこかに飛び立とうとしている機械人形に向かって叫ぶ。


「……ざけんじゃないよ! 人のモン、勝手に盗ってくんじゃないよ!」



 国宝を手にしたまま、目の前を飛ぶ機械人形。その真後ろを追うように飛ぶ一六式イチロクシキ強襲偵察機(アサルトリコナー)。プリムは愛機を駆りながら、その愛機に搭載された唯一の兵装、百二十ミリ旋条砲の照準を、目の前の機械人形に定める。

 目の前を飛ぶ機械人形は、背後を飛ぶ戦闘機など意に介した様子も無く。その様子に、プリムは苛立ちを覚えながら。――そいつも、この目の前を飛ぶ理解不能の塊さえ落とせば万事解決さと、唇を舌で濡らす。

 標準を合わせながら、主砲発射のための魔法式を構築するプリム。――やがて構築が終わり、叫びと共に、主砲発射のための爆発魔法を起動する。


「落ちな!」


――一六式イチロクシキ強襲偵察機(アサルトリコナー)から直径百二十ミリの砲弾が放たれるその刹那。まるで発射を感知したかのように身体を回転(ロール)させる機械人形。だが、放たれた砲弾の速度に対して、その行動はあまりに遅く。飛来した砲弾は、腰の両側にぶら下げられた筒状の噴出孔(スラスター)、その内の一つに命中する。

 はじけ飛ぶスラスター、衝撃、片側を欠いた推進力は、機械人形の姿勢を大きく狂わせる。安定した飛行は不安定に、あらぬ方向へと針路を変える。

 地面にこすりつけるように墜落する機械人形。その上空を通り過ぎる戦闘機もまた、強力極まりない砲の反動に乱れた体勢を立て直しているところだった――


「――命中(ヒット)!」


 目標への着弾を確認したプリムは、愛機の体勢を立て直しつつ、墜落した機械人形の様子を確認する。砲弾を発射した一六式イチロクシキ強襲偵察機(アサルトリコナー)に襲い掛かる反動。速度を減じる機体、プリムの身体に食い込む安全帯(シートベルト)。操縦席を襲うその衝撃に耐えながら、機体を立て直すために操縦桿を操作する。

 やがて安定を取り戻し、地上でなおも立ち上がる機械人形を見て、再び砲撃するために旋回しつつ機首を上げようとして……


「だめーーー!!」


 どこからか聞こえる、場違いな少女の叫び声に、反射的に声のした方を見上げる(・・・・)。そこには、こちらに向かって急降下してくる見目麗しい巨鳥と、その巨鳥にまたがる少女の姿。

 その光景に、プリムは今日何度も味わった驚愕を再び味わう。青を基調とした美しい体毛に覆われた、神秘的ともいえる姿を持つその鳥は、プリムの知る限り、大空を舞うような鳥ではなかったのだから。


(なんだって、でっかい孔雀(・・)が人を乗せて空をとんでんだよ!)


 もはや驚きにも慣れてきたのだろうか、プリムは比較的短時間で我に返りながらも、対処に困ったように旋回動作を継続する。――巨大な孔雀の口から旋回中の機体に向けて、炎の弾が吐き出されるその時まで。



 メディーンが地面に落ちるのを見て、思わず叫ぶ。ピーコックも真っ直ぐに下の「飛行機」に、まるで落ちるような速度で向かっていることに気づく。


「フィリ!」

「大丈夫!」


 もっと速くても大丈夫! ピーコックの呼びかけに短く答える。グンと速く、ほとんど落ちるくらいの速さまで速度を上げるピーコック。


「一旦降りる! フィリはあ奴のことを頼む」

「わかった! ピーコックは!?」


 短いやり取り。わたしの言葉にピーコックは顔を「飛行機」の方に向ける。……ピーコックは飛行機のほう。わたしは一人。何かできる? ううん、何かしなきゃ! そう決心する。

 ピーコックが口から炎を吐き出す。大きく避ける飛行機を無視して、そのままの勢いでメディーンの方に向かう。

 ぐんぐんと迫ってくる地面。体二つ分、飛び降りられるぎりぎりの距離。速度もなんとか大丈夫。メディーンまであと少し。……よし! タイミングを見計らって、ピーコックから飛び降りる。


 空中で、正面からの風を身体全体で受け止めながら、勢いのままに着地する。転びそうになるのをこらえ、勢いを殺すように、靴底を地面にすべらせる。


「メディーン!」


 メディーンの横をすり抜けるように飛び去るピーコック。そのあとを追うように、飛び降りた勢いのままに、メディーンの方に走り出す。

 相変わらずわたしたちのことなんか気にもかけないメディーン。相変わらず自分のことだけをやり続けメディーン。わたしたちに反応しないメディーン。――そんなメディーンの様子に、胸の奥から、震えるような何かがこみ上げる。

 周りを見渡すメディーン、上を見上げるメディーン、手にした何かに視線を送るメディーン、通り過ぎたピーコックのことなんか気にしないメディーン、わたしの方を見ようともしないメディーン! ――仕事中は何も反応しない、いつも通りのメディーン!!

 ――バカ! バカ! バカ!! コッチ見てよ! 聞いてよ! 答えてよ!! にじんで映るメディーンに、しゃくり上げながら、すすりながら、まだ少し先にいるメディーンを、睨むように見すえる。――わたしの方を見て、目の辺りを光らせるメディーンを。


(……えっ?)


 こっちを見て、何かを伝えてこようとするいつもの(・・・・)メディーン(・・・・・)に、いつのまにか速度をゆるめていた足を完全に止め、その様子をただぼんやりと、眺める。


――困惑し、メディーンの方を眺めるフィリ。静かに立ち止まったまま、確かにフィリの方を見て、何かを伝えようとするかのように、光を発するメディーン。

 ……タンマツデバイスジョウタイカクニン……シュウリカノウ……アンゼンケンヘノリダツノヒツヨウセイヲミトム……カンリシャ、フィリ、ノ、アンゼ、ンカ、クホモ、カノウ……イチジテ、キニ、サイユウセ、ントシ、ドウジニ……

 それは、本当に伝えるための言葉なのだろうか。それとも自身の優先順位を自身の(・・・)意志(・・)で置き換えようと自身に語りかけているのだろうか。その様子は、感情を高ぶらせかけたフィリの中に、ほんの少しの静かな気持ちを呼び覚ます――


(……ひとりごと?)


 こちらに向かって、難しい言葉で何かを伝えてくるメディーン。仕事おわった? ううん、そんなことない、いつもとどこか違う。仕事中とも、普段とも。――とりあえず近づこう。ゆっくりと歩きかけて……

 突然響く重い音に、「きゃ!」と、思わず叫ぶ。

 ……メディーンの腰のスラスターが外れて、片方が地面にころがってる。さっきのはあの音? びっくりした! ……えっと、もう片方は、……えっと、手に持ってる? あれ、外せるんだ。――もっとそぉっと外してくれればいいのに。びっくりしちゃったよ! 改めてメディーンの方に歩きながら、そんなことを思う。


 そのままスラスターの先の方を持って、ちょっと腰をおろしながら、またがるような姿勢をとるメディーン。……えっと、おんぶ? もう子供じゃないんだけど、わたし! そう思いかけて、ふと気づく。――もしかしてメディーン、わたしを乗せて、あのスラスターで飛ぼうとしてるのかな?

 すこし足を速め、小走りに。右腕で顔をこすりながら。メディーンの元に駆け寄って、その背中に跳びつかまる。


 スラスターからの音がどんどん大きくなって。メディーンの背中にしがみつきながら、足元が熱くなってくのを感じる。大丈夫かな、なんて思ったところで突然、メディーンが加速して。後ろに引っ張られるような力に頑張ってしがみついて。ちょっと余裕ができた所で左右をみわたして、結構な速さで空を飛んでいることを確認する。

 とりあえず何とかなったのかな、そう安心しながらもふと思う。――空を飛ぶのはピーコックの方が良いな。こんな乱暴な飛び方しないから、なんてことを。



「ク・ジャ・ク・がぁ! 空を飛ぶなぁー!!」


 砲弾を装填し、空飛ぶ巨大な孔雀を追い回すように飛ぶ一六式イチロクシキ強襲偵察機(アサルトリコナー)。その操縦席で苛立ち叫ぶプリム。時折彼女の耳に入ってくる「カッカッカ」という、まるで人の笑い声のような鳴き声が、その苛立ちを加速する。


(ふざけんな! ああ、勝負になんかなりっこないなんてわかってる。だからって、引けるもんかい!)


 唇をかみしめながら、プリムは思う。運動性能が段違いだ。最高速から空中で立ち止まるかのような減速、時に来た道を戻るかのような自由な旋回。孔雀のくせに、まるで鳥のように自由に空を飛びやがると。相手の吐く炎が遅いのだけが救いか。ああでも、至近距離から撃たれたら避けようがない。ああ、まったく忌々しいと、プリムは苦虫をかみしめる。――本当に忌々しいと、先ほど飛び去った機械人形の方を眺めながら。

 地上に墜落した機械人形に再び砲撃をしようとして、乱入者に邪魔をされて。それでも、実の所、砲弾を撃ち込めなかった訳じゃないと、プリムは思う。そこにいる少女の姿に躊躇(ちゅうちょ)などしなければ。

 少女の姿に一瞬躊躇し、周りを飛び回る「お化け孔雀」に襲い掛かられて。吐き出される炎弾を(かわ)しながら、先にこいつを片付けようと、――少女に砲弾を撃ち込むという行為から逃げる口実を与えられて、乗ってしまったのだと、今ならわかる。


(飛ばれちまったからには当てられない。だからと言って、何もせずに引き下がるなんてできるもんか!)


 今まわりを飛び回っているこいつは、照準を定める隙なんか与えてくれない。どうにかしようにも武器が無い。あいつを落とすのに必要なのは正面にしか撃てない百二十ミリ旋条砲のような重火器なんかじゃない。もっと自由に撃つことができる一三式(イチサンシキ)魔法銃刀(マホウジュウトウ)のような軽火器だ。そのことをプリムは理解しつつも、なお引き下がれない。ここまでコケにされてただで済ませられるもんかと、――時折聞こえる「カッカッカ」というふざけた鳴き声に、さらにその思いを深くする。


――色鮮やかな羽根に覆われた巨鳥が、色とりどりの飾り羽根を後ろに流しながら、空を飛ぶ。時に戦闘機よりも速く飛びながらも、どこか優雅に、舞うように。沈みゆく太陽を背に、時に炎の弾を吐き、戦闘機を翻弄(ほんろう)し続ける。

 轟音を上げながら飛ぶ機械人形は速度に乗り、遥か彼方に飛び去ろうとしていた――


 飛び去ろうとする機械人形を追うように、進路を変える戦闘機。それを阻むかのように飛来する炎弾をかわしながら、プリムは叫ぶ。


「孔雀が! 火を吐くなぁーー!!」


 簡単に逃がす訳にはいかない。どれだけあの「化け物孔雀」が厄介だろうが可能な限りは追跡すると、執念めいた思いで操縦桿を操作するプリム。そのプリムを、戦闘機では味わう事が無い、横殴りの衝撃が襲う。

 慌てて振り返り、その光景に驚愕する。……そこには、プリムが飛び去る機械人形に意識を移した一瞬の間に、戦闘機の胴体を両足で掴むように取り付き、あろうことか、まるで戦闘機を横に引くように、強引に飛ぼうとする巨鳥の姿があった。


「追われても困るんじゃがのう。そろそろ諦めてくれんか?」

「……こんの、孔雀がぁーー!!」


 取り付いた巨鳥を引きはがそうと、操縦桿を操作するプリム。だが、あらぬ方向に飛ぶ戦闘機はいうことを聞かず。風をとらえる事なく、補助翼(エルロン)昇降舵(エレベーター)もむなしく動くばかり。


「……儂には『ピーコック』という、立派な名前があるんじゃが」


 操縦席のプリムの様子を軽く横目で見ながら、なおも戦闘機を引くように飛び続ける巨鳥。両翼から空気を生み出しながらの羽ばたきは、その見た目よりもはるかに大きな力を巨鳥に与え、あらぬ場所から生まれる空気はプロペラが生む風を阻害し、飛行するための力を戦闘機から奪う。


「そ・い・つ・は! 『聖典語』で孔雀って意味の言葉だーー!」


 やがて巨鳥は、その足で掴んだ戦闘機を力任せに投げ飛ばす。吹き飛ばした戦闘機を追うように、巨鳥の口から吐かれた液体が戦闘機に命中する。胴体、翼、至るところに付着したその液体は、空気を生み、気流を生み、プロペラの生む風を乱す。

 満足に得られぬ推進力に、やもなく追跡を断念するプリム。徐々に降下していく戦闘機の操縦席から周りを見渡し、着地地点を探し始める。――操縦桿と格闘しつづけることでどうにか安定を保っているような、もはや上昇することすらままならない機体では、それが精いっぱいだった。

 時折ふらつきながら、見通しの良い荒野を探し求め、行く手を変える一六式イチロクシキ強襲偵察機(アサルトリコナー)。はるか上空を悠々と飛び去る巨大な孔雀。

 山の向こうに隠れた太陽に赤く染まる空の下、列車を舞台とした一連の騒動は、こうして一時の小休止を迎える。軍人と無頼の徒との衝突は決着をみせぬまま、第三者にかき乱される形で。


――結果として両者の思惑を共に(くじ)くことなったフィリたちは、自分たちが成した事、一国の国宝を持ち去るという行いの重大さに、いまだ気付いていなかった――



「……だからね! 今日のメディーンはとにかくダメ! すっごい心配したんだから!」


 あれからもう少し空を飛んで。あたりが暗くなる前に着陸して、今はうす暗い森の中。――ほんとにね、今日のメディーンにはいっぱい言わなきゃ! いきなり飛んでったことでしょ? わたしたちのことを見ようともしなかったこともそう! 危ないこともしちゃダメだし! えっと、他には……って、ちょっとメディーン、ちゃんと聞いてる?! ……聞いてる、うん、じゃあいいよ。えっとあとは……


「……そんなことよりも、もっと言う事があると思うんじゃがなぁ」

「ピーコック!」


 良かった、無事だった! 羽ばたき降りてくるピーコックを見て、少し安心する。――まあ、多分だいじょうぶとは思ってたけど、ちょっとだけね、ちょっとだけ!


「まあ、とりあえず今日は大丈夫じゃろうて。この先のことは明日にでも考えればええじゃろう。……とりあえず、まずはメシでも食わんか?」


 ……ごはん! すっかり忘れてた! ……思い出したら急におなかがすいちゃったな、そんなことを思いながら、背負っていた(かばん)から果物を取り出す。


「肉はないんか、肉は。……見事に燻製肉ばかりじゃのぉ。ああ、朝に狩ったイノシシ、食うとけばよかったわい」

「ははは、ほんとだね~」


 イノシシ、美味しいのにもったいなかったかな? 外の世界に降りるときのために準備しておいた燻製肉を眺めながら、そんなことを思う。


「……ああ、丁度いい具合にでかい布があるのぉ。そいつで光が漏れんようにしとけ。……今日は大丈夫じゃろうがまあ、念のためじゃな」

「……光? ……漏れる?」


 えっと、なんで?


「あの様子じゃと、まだまだ追ってくるぞ、あ奴ら。この先どうするにしてもな、見つからんことに越したことは無いじゃろう」

「……追ってくる?」

「その辺の話も明日じゃな。今日はもう疲れたわい! とっとと食って、とっとと寝るのが一番じゃ。……まったく、こ奴は一体何をしでかしたのやら」


 しでかしたって、えっと、仕事じゃないの? 一瞬そう思ったんだけど。メディーンが胸の辺りから鍋を取り出して、燻製肉と水筒の水を入れて。ピーコックが鍋に向かって火を吐き始めた時点でどうでも良くなって。

 一応周りの木に布を張りながら、燻製肉がやわらかくなるのを待つ。――メディーンにはいっぱい言いたいことがあった気がするけど。ピーコックじゃないけど、今日はもう細かいことはいいや。おなかすいたし、疲れてる気もするし。ごはんを食べて、寝ちゃおう。そんなことを考える。


 こうして、ごはんを食べて、地面に布を敷いて横になる。今日一日、ほんとうにいろんなことがあったなぁなんてことを、ぼんやりした頭で考えながら。――そのままフィリがスヤスヤと寝息を立てるまで、さほどの時間はかからなかった。

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個人HPにサブコンテンツ(設定集、曲遊び)を作成しています。よろしければこちらもどうぞ。

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