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四話『男ならおっぱいがあったら揉むしかねぇ』


「お、あんた達、山崩れは大丈夫だったか? あんたらの向かった山が急に崩れたからな、心配してたんだ」


 山を降りて来ると、俺を見かけた守衛さんがそう話しかけてくる。


 スイマセン、犯人は多分俺です。ごめんなさい。


「街にも土石が流れてきて、街を取り囲んでいる壁が壊れちまってな」


「それ、この人が犯にうぐっ……」


 おっと、すまないアル君。肘が当たってしまった。


「ぐう……みぞおちに…… 」


「まぁ、幸いにも怪我人は出なかったから良かったよ、あんたらも無事で何よりだ」


「街の方も怪我人がいなくて良かったよ、本当に」


 それなら、器物破損だけで済むからな。


「あんた、いいやつだな。今度おごらせてくれよ」


「お、じゃあその時を楽しみにしてるぜ」


 守衛さんにそう言い、街の中に入れてもらいギルドに戻った。



「これで仲間になる気にはなったろ?」


 ギルドに戻り、報酬を受け取った俺は少し早めの食事を取りながらアルに話しかける。


 このジャンキーチキン、ヤクキメてんのか思うくらいに煩かったが、食ってみると意外と旨い。

 どうりで、肉が喜ばれる訳だ。


「逆に聞きますが、あの有り様で仲間になりたいと思う人がいると思いますか?」


 チキンのから揚げを食べながらそう答えるアル。


「でーすよねー」


「ただ、魔法の威力は素直に凄いと思いますし、僕も助けられて借りを作ってしまいました。まぁ、原因はユウリさんが作ったものですが」


「それは否めない」


 酷いマッチポンプだと思うよ、自分でも。


「ただ、命の恩人であることには変わりないので……一つだけなんでも言うことを聞くことにします」


 ん? 今なんでもって言った?


「……ということは、仲間になってくれって頼んだら仲間になってくれるってことか?」


「そうですね」


「なんだよー、それならそうと言えば良いのに、回りくどい言い方しやがって」


 ツンデレか? 俗に言うツンデレってやつか? 仲間になりたいなら最初からそう言えっての。


「じゃあ、これで借りは返したので、貸したお金はちゃんと返してくださいよ」


「……そういう事か」


 借り作って借金踏み倒されないように、別の事で借りを返す……こやつ、策士だな。


「六万レンス、早く返してくださいね」


「六万……意外と高いのな」


「仲間になったからって負けませんから、利子もトゴですよ」


「わかってるよ」


「まぁ、話は変わりますけど、パーティーを組むとなると、問題は前衛ですね、僕が前に出てもいいですけど本職の人には及びませんし」


 確かに、俺は物理面が貧弱すぎる。それを補える盾役が必要だな。


「アル、前に出ても戦えるのか」


「一応これでも魔法剣士ですから」


 なにそれかっけえ。俺も魔法剣士路線でいってみよ……いや、無理だったわ。ステータスが貧弱すぎたわ。


「まぁ、仲間募集の張り紙でも出せば……」


「君達! 話は大体二割くらい聞かせてせてもらった! パーティーに盾役が欲しいそうだね! 私なんて如何かな?」


 アルと仲間の相談をしていると、一人の男が話しかけてくる。


 二メートルはありそうな巨体をフルプレートのアーマーで覆い、背中に巨大な盾を背負い、腰に一振の大剣を携えている。見るからに盾役といった感じの男だ。


「いかにもって感じで強そうだな」


「私はヘルクス! 冒険者ランクはシルバーだが、防御力には自信があってね! 防御力だけなら、ダイヤクラスにだって負けない自信はあるさ!」


 なんだろうこの喋り方。すっげぇデジャヴ……まるでどこぞの筋肉マッチョな神のようだ。


「ちょっと、冒険者カードを見せてもらってもいいですか?」


「ああ、構わない」


 ベルトに備え付けられたポーチから、シルバーの冒険者カードをアルに渡す


「うわっ、防御力と体力は本当にダイヤクラスの冒険者並ですね、その代わり魔力と攻撃力が平均より低いですけど」


 こいつも俺と似たような特化型か。まぁ、俺よりはマシだな。


「どうしますか、ユウリさん」


「え、俺が決めるの?」


「そりゃ、このパーティーのリーダーなんですから」


「あ、リーダーは俺な訳ね……じゃあ、とりあえずその防御力を見せてもらってもいい?」


「今からでは日がくれて危険なので、明日適当なクエスト受けていきましょうか」


「そうだね! では、明日の朝にここ集合でいいかな?」


「はい、それでよろしくお願いします


「じゃあ、僕もそろそろ帰ります」


「ああ、じゃあ俺らも帰るとするか……アル、宿って何処にあるんだ?」


「案内しますよ」


 アルの案内でギルドを出て近くの宿に向かった。


「ここが宿屋ですけど……」


 のはいいのだが、その宿は綺麗に建物の半分近くが崩れており、とてもやっているようには見えない。


「……半壊してるな」


「そうですね……とりあえず、泊まれるかどうか聞いてみます」


 アルはそう言って宿の中に入り、店主に声をかける。


「一人部屋を二つ? 悪いけど一人部屋は空いてないね。二人部屋なら一つあいてるんだけど、それでいいなら安くしとくよ」


 本を読みながら、ダルそうにそう答える店主。


 こんな状況でも特に問題なく営業していることに驚きだ。原因は俺にあるんだが……大丈夫なのか? 朝起きたら瓦礫の下に埋もれてましたとかないよな?


 二度も埋まるのはごめんだぜ。


「ちなみに、他の宿は何処にありますか?」


「んー、どこも一杯だと思うよ。なんせ隕石で殆どの建物は壊れてしまったからね」


 ……俺のせいだけど、悪気があったわけじゃないんだ。


「二人部屋ですか……どうしますかユウリさん?」


「空いてないならそれでいいだろ」


 男同士なら、別に気にすることはないしな。


「……まぁ、いいなら別に構いませんが」


 微妙な顔でそう呟くアル。

 なんだよ、そんなに嫌なのか。ちょっと傷つくぞおい。


「とりあえず、二泊分だけお願いします」


「部屋は二階の奥だ、あと料金は先払いで三千レンス」


「はい」


 金を支払い鍵を受けとるアル。そしてそのまま階段を上がり奥の部屋に向かう。


 安いビジネスホテルよりも質素な部屋だ。雨風を凌げて寝らればいいといった感じか。

 掃除はされているのかベッドや床は綺麗にされている。


 やはり、綺麗なベッドに勢いよく飛び込みたくなる。


「あー、疲れたー!」


 ジャンプしてベッドに飛び込むが、思ったよりも硬かったらしい。顔をぶつけて痛い。


「そうですね、余計なトラブルのせいで余計に疲れましたよ」


「悪いとは思ってるよ、ホント……ところで風呂はどこだ?」


「大浴場ならギルドの隣ですよ」


「……また戻らなきゃならんのか」



◇◆◇◆


「おー、ここがそうか」


 結構デカいところだな、日本の旅館って感じとはまた違うけど、古代ローマの風呂はこんな感じだったのかな。


 周囲を見渡しながらアルの後ろを着いていく。


「ちょっ、なんでこっちについてくるんですか?」


「え? ダメなの?」


 アルの後ろに付いて中に入ろうとしたら何故か止められた。なんだろう、異世界特有のシキタリというか、タブーみたいなものでもあるのかな?


「当たり前じゃないですか、女湯はあっちですよ?」


「女湯?」


 なんで女湯に……あっ、忘れてた。

 俺、性別変わっとるやんけ。


 異世界で魔法やら、冒険者やら色々と目新しいものばかりですっかり忘れていた。


「じゃあ、後で」


 そう言って男湯に入っていくアル。


「おう、後でな」


 女湯……か。


「入っていいものか」


 アルに女湯へと追いやられた俺は、扉の前で入るのを躊躇っていた。


 性別的には問題ないとしても、精神的には色々と問題が……いや、逆に考えるんだ。目の前に女湯があり、そこに合法的に入れるというのだ。


 一体そこになんの問題があるというのだ?


 いや、ない!

 

 むしろ、問題が無さすぎて怖いくらいだ。待ってろおっぱい天国。

 その光景をこの目にしかと焼き付けてやるぜ!


 というわけでユウリ、行きまーっす!


「ええ湯やねぇ」

「そうやねぇ」


 婆さんしかいねぇ……だと……。


「なんでだよ!」


 なんで婆さんしか居ないんだ! もっと若い女の子が居ても良いだろバーカ! 俺が見たかったのはこんなんじゃないんだよ、もっと、おっぱぷるんぷるんな光景が見たかったんだよちくしょーめ!


「……ん?」


 絶望に打ちのめされ、床に膝を付いて嘆いていると視界の端で若い女性の姿を捉えた。


 ありがとう神様、俺はあんたに感謝するよ。


 心の中で祈りを捧げながら、その女性の方に目を向ける。


 金髪に隻眼の美人さんだ。上下ともに黒く丈夫そうな服で身を包んでいる。

 ああいう服を見ると、地球の学ランを思い出す。

 ほ金色のボタンとか襟首のバッチとか、もう俺が着ていた学ランそっくり。


 おい待て、なんであの女性は俺の学生服を着てるんだ?


「あ、あれ鏡か!」


 じゃあ、なにか? あの美人さんは俺な訳か?


 ……よし、とりあえず揉んでおくか。


 勢いよく服を脱いで、鏡の前に立つ。


「ぐっ、なんというスタイルだ……」


 鏡に映る抜群のスタイルに、思わず鼻から赤い忠誠心が溢れ出しそうになるのをグッと堪える。


 だが、俺はこんなところで倒れる訳にはいかないんだ……そう、おっぱいを揉むまでは倒れるわけにはいかない!


 カッと目を見開き、露になったおっぱいに手を伸ばす。


 直後、俺の中で革命が起こった。


 なんという柔らかさだろうか、車の窓から手を出したときとは比べ物にならない、この心地のいい感触!

 最早、我が生涯に一片の悔いなし!


「鏡の前でなにをやっとるんかね、あの嬢ちゃんは」

「疲れでもたまっとるんかね? 若いもんのすることは、ようわからんからねぇ」

「変な子やねぇ」


 お婆さん達のヒソヒソと噂する声が聞こえてくる。


 自分のしていることを冷静になって考えてみると、確かに鏡の前に立って鼻血流しながら自分の胸を揉みしだくのは可笑しな事だ。


 だがそれでも、そこにおっぱいがあってそれが揉み放題ならば、はたして揉まずにいられるか、いやいられない。

 これは男としての性、抗えない業なのだ。もはや呪いと言ってもいい。


 異世界にまで来て、一体俺は何をやっているんだろうかと思う。

 何が悲しくて、自分の胸を揉みしだいてるんだと。


 うるせーよ! 揉むなら俺だって彼女とか、美人なお隣のお姉さんとか、そっちがいいよチクショウ!

 でもしかたねーだろ、彼女は居たことねーし、美人なお隣のお姉さんは変なオッサンと結婚しちまうしよ! 


「……はぁ、普通に風呂に入ろう」


 感動と悲しみ、そしてなんとも言えない虚しさに涙を流しつつ、ゆっくりとお湯に浸かり体と心の傷を癒した。



「ところで……お隣の美人なお姉さんは、フランクフルトをチ○コっていうオッサンの何処に惚れたんだろうか」


 湯船に体を沈め、水泡を吹きながら気だるげにそうこぼした異世界初日。

「ねぇ……なんか、20兆くらいに増えてるんだけど」

「……マジだ」

「残りの二十億も株に使ってみる?」

「残りは二十兆と二十億だよ」

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