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十五話『想像してた姫様といろいろ違うんだけど』

「では早速だが、彼らと協力して魔王軍幹部を撃退してほしい、異世界の勇者をここで失うわけにはいかない。無論、相応の報酬は支払おう」 


 俺が引き受けると、早速俺に依頼を出す国王。


「りょーかい」

「国王陛下からも、お許しが出たし私もどれだけ自分が硬いか試してくるよ!」



 そうい言うと、剣を抜き放ち嬉しそうに鬼の元へと駆けていくヘルクス。一番強そうな相手に迷わず向かっていく辺り、流石としか言いようがない。


「さて、俺も行くとするかな」


 クラスメートのほとんどが大して仲がいいわけでもない他人みたいなもんだが、それでもクラスの連中とはこれまでやって来た仲だからな。ここで死なれては後味が悪い。

 いっちょ、俺が守ってやるとしますかね。そんでもって圧倒的な力を見せつけて度肝を抜いてやるぜ。


「ぐあぁぁぁっ」


 一人の男子生徒が鬼の攻撃を受け、地面に倒れる。


「大丈夫だろ!」


 そこは大丈夫か? って心配するところじゃないのか?


「おう! 思ったより痛くねえ! まだ戦えるぜ!」


 何事もなかったかのように立ちあがり、剣を握り直し再び突っ込んでいく男子生徒。


 いや、腕変な方向に曲がってるけど!? なんなのお前らタフすぎないか。


「ひゃっはー! なんか楽しくなってきたぜ!」


 骨が折れても諦めず果敢に戦う--とかならまだ良かったのだが、むしろ笑いながら楽しそうに斬り合う男子生徒。


 おかしいな、度肝を抜かそうと思っていたのに、逆に俺が度肝を抜かされてる。


「全員で囲め! 逃げ場を作らせるな!」


 司の指示で首なし騎士を取り囲む。


「袋叩きだフゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

「ボッコボッコだぜイェェェェェェェェイ!」


 そして四方八方から殴る蹴る。挙句の果てには首なし騎士が小脇に抱えている首を奪い、剣の鞘でゴルフやら野球やらを始める始末だ。

 傍から見れば、もうイジメにしか見えない。


「ちょ、やめっ、貴様ら騎士道はないのか!」


 首なし騎士……デュラハンといえば、ゲームではよく超強くて誇り高いボスとして有名だが、彼らを前にしてはそれもまるで形無しだ。


「俺はボブ、ボブ 幹部代表 この腐った人間へのアンチ代表 この世界を変えるは魔王様だ それを邪魔するお前は何様だ?」


「YEAH! YEAH! 俺は地球生まれ の日本国育ち バカそうな奴は大体友達 バカそうな奴と大体同じ 突然飛ばされやってきたこの町」


 司のパーティーは大分余裕がありそうなので、どこか苦戦している所から助けようと思い周囲を見渡すと、なぜか黒人ラッパーとラップ対決を繰り広げているのが目に留まった。

 なぜかやたらと白熱しているが……異世界に来てラップ対決ってどうなの?


「あそこも大丈夫そうだな」


 もっと絶体絶命って感じのところはないのだろうかと、ほかのパーティーの様子を伺う。


「ハハハハハ、私の防御力の前ではそのような攻撃は当たりもしない!」

「なんなんだコイツ! さっきから攻撃がまるで当たらねえ!」


 素早い動きで鬼のこぶしをかいくぐり続けるヘルクスの姿が見えた。


「防御力スマッシュ!」


 攻撃が当たらない事に対するイライラが募り、拳が大振りになった鬼の隙をついたヘルクスの拳が鬼の水月に深く沈み込む。


「ぐおぉ」


 体を折り、膝をつく鬼。


「すげーな、あの人」

「でも防御力ってなんだっけ?」

「わからんけど、マジヤバない?」

「わかる、めっちゃヤバい」


 クラスメート達もヘルクスの回避もとい、圧倒的な防御力を前に流石に驚いている様子だ。

 うん、余裕そうだ。というか、見た感じだとどこもかしこも余裕のある戦いを繰り広げているので、別にわざわざ俺が出ていく必要がないように感じる。


 俺はお茶でも飲みながらゆっくり見物でも……いや、国王から依頼受けてるから何もしないわけにはいかないか。 

 しかし、あいつらも俺と同じで異世界に来たばかりで戦闘経験がないはずなのに、魔王軍幹部を圧倒してるから俺の出番がまったくない。


「まぁ、ピエロ紳士も割りと楽勝だったし、なんかこいつらにも勝てそうだよな」


「え? ピエロ紳士倒したのお主なの?」


 俺の独り言が聞こえていたのかピタリと動きが止まり、恐る恐るとそう尋ねてくるケモミミロリ娘。


「そうだけど」


「な、なんと! たった一体で国を滅ぼし、魔王にも匹敵しうる力をもつかもしれない事で知られる魔王軍最強の幹部を倒しただと!?」


 王座から立ち上がり、再び驚愕の声を上げる国王。


「あれ最強なの!? てっきり最弱なのかと思った!」


 消滅する間際に『私は魔王軍の中でも最……』とか言ってたけど、あれ最強って言おうとしてたってこと?

 四天王の中でも最強だとか言っちゃったら、残り全部ただの消化試合じゃん。物語ほとんど終わっちゃうじゃん。

 あ、そうか、ナンバーワンが早々にやられたから、残りの幹部で纏めてかかってきたって訳か。でもこっちの方が頭数が多いからボコボコにされてっけど。


「ウィンドブラスト!」


「ふぶっ」


 突然、顔面に強烈な風を浴びせられる。魔法だろうか、魔法体制が高いおかげで特にダメージらしいダメージはないが、いきなりやられて少しイラっとした。


「おい、いきなり何すんだよ」


 魔法をぶつけてきた犯人を睨みつけてそう言う。


「ひっ!」


 怯え、腰を抜かして地べたに座り込むケモミミロリっ娘。どうやら犯人はこのガキンチョらしい。  


「痛ぇだろうが、魔法耐性が高くなかったら今ので死んでたぞ」


 相手が小さい子供だからか、あまり怒る気にはなれず軽くたしなめるようにそうい言う。


「ご、ごめんなさい」


 頭を両手で庇い、小さく縮こまるケモミミロリっ娘。

 そんなにおびえられると、なんか俺が悪者みたいじゃないか。しかし、こんな幼い子供が幹部とはな……化け物みたいな外見なら躊躇うことなくやれるんだけど。


「待て!」


 どうしたものかと頭を悩ませていると、一人の男子生徒が飛び出てきてケモミミロリっ娘を庇う。

 クラスの全員が鎧やらローブやらそれっぽい服装をしている中、単ランを着込む目付きの悪い男。たしか不良として有名だった筈だ。名前は知らんけど。


「だれだか知らんが、邪魔だ」


「俺はケモナー。名前は内山祐也うちやまゆうやだ」


 なんで性癖を先に言った。


「内山、危ないぞ」


「待て、こいつには手を出さないでくれ!」


 両手を広げ、俺の前に立ちそう言う内山。


「お主、敵である妾を庇って……」


「いや、でもそいつあれだぞ? 魔王軍の幹部で敵だぞ?」


 小さい子供でも一応は敵だ。


「……別にいいだろそれくらい!」


 少し考える素振りを見せた後、気持ちのいいくらいに清々しくそう言う内山。


「大問題だバカ野郎」


「俺は、ケモミミっ娘が大好きなんだ! ケモナーなんだ! 俺の目が黒い内は、ケモミミっ娘に手はださせない!」


「お主……いや、そこを退け! 妾は魔王軍幹部、タマモ玉森であるぞ! 齢ここのつじゃが、人間に庇われる通りなどない!」


 縮こまってガタガタと震えていたケモミミロリっ娘が勇ましく立ち上がりながらそう言う。


 随分と適当な名前だな。語呂合わせみたいだ。


「魔王軍幹部として、仲間であるピエロ紳士の仇……取らせてもらうぞ!」


「サンダーショット」


 俺に向かって飛び掛かってくるタマモに向かって、気持ち弱めの魔法を放つ。 


「ピャアアアアアッ」


 悲鳴を上げ、白目を剥いて仰向けに倒れるタマモ。


「気絶させただけだ」


 人外といえど、可愛らしい少女をいたぶる真似は流石にできないからな。


「感謝するぜ」


 タマモを抱きかかえ、頭を下げる内山。


「言っとくけど、後でどうなっても俺はしらねーからな」


「ああ、その時は俺が責任を取る」


 そう言って俺に向けてくる眼差しからは、覚悟のようなものが感じ取れた。

 後の事はコイツに任せるとしよう。


 これで最低限の仕事はしたか。

 残りは皆に任せていても良さそうだが、そろそろ文字数的にも押しはじめてきたし、さくっと片付けるか。


「HEY! 無事に成功したYO」


 どいつから先に仕留めようかと獲物を選んでいると、唐突に陽気な黒人ラッパーがそう叫ぶ。

 成功? なんのことかはよくわからないが、なにか企んでいたらしい。


「とっ捕まえて何やったのか吐かせてやる」


 戦っているクラスメートを巻き込まないように、ジェイソンタキシードに狙いを定める。


「やれやれ、ようやくですか」

「ならば長居は無用」

「逃げるぞー!」


 魔法を放とうとした時、黒人ラッパー、首なし騎士、鬼の三人が戦うのを止めて、ジェイソンタキシードの元に走っていき彼の体に触れる。

 その直後に四人の姿が一瞬にして消え去る。


「転移魔法か、逃げられてしもうたの」


 疲れた様子のテレロが呟く。転移魔法って瞬間移動したみたいに一瞬で消えるんだな。


「爺さん、なんでそんなに疲れてんだ?」


 戦ってなかったから、別に疲れるようなことしてないと思うんだが。


「なにもしてない訳でもない、ちゃんと国王を守っておったわい。それにお主とやり合った直後に長距離移動の転移じゃぞ? 疲れるに決まっておろうが」


「そうなのか?」


 魔法使って疲れたことねぇからわからないけど。


「むしろ、あれほどの魔法をポンポン放つ上に、まったく疲れておらぬお主がおかしいのじゃよ、お主の魔力量はどうなっておるんじゃ」


 驚きを通り越してやや呆れ気味にそう言うテレロ。


「回復魔法を使える人は怪我人の治療に当たってくれ、無事な人は手を貸してやるんだ」


 敵が引き、一先ずの危機を乗り越えたクラスメートが床に腰を下ろして休む中、司がそう指示を出して回る。

 俺も回復魔法使えるし、手を貸してやるか。


「それ、大丈夫か?」

 

 先ほど、腕が変な方向に曲がりながらも、笑いながら敵に突っ込んでいった男子生徒の所に行き、しゃがみながらそう尋ねる。


「えっ、あ、うっす! へ、平気っす!」


 なぜか顔を赤らめ、どもりながらそう答える男子生徒。

 どう見ても平気な怪我じゃないんだけど。なんか赤黒くなって腫れてるし。


「ヒール」


 折れた腕を手を添え回復魔法をかけてやる。痛々しいほどに腫れ上がっていた腕は一瞬んで元に戻る。


「おぉ」


 それを見て感嘆の声を上げる男子生徒。


「あんまり無茶すんじゃねーぞ、ほかに怪我人はっと」


 ちゃんと元に戻ったことを確認した後、ほかに怪我をしてる奴がいないか探そうと立ち上がった時。


「魔王軍はどこだぁ!」


 突然、武装した一団が室内に流れ込んできた。

 特効服を身に纏い、カラスマスクで顔の半分を覆い隠し、モーニングスターやメリケンサック、メイスといった凶悪そうな得物を手にしている怖そうな女性の集団。

 むしろ、あんたらが魔王軍なんじゃね? と言いたくなるような格好だ。


「このアルトリア=ヴェーラが直々にシメてやる!」


 武装集団のリーダーだろうか、白い特攻服の背中に黄金の刺繍で掲げられた天上天下の文字。さらしでも隠し切れない豊満な胸。黄金のように品のある輝きを放つ瞳に、日本刀のように鋭く、っして煌びやかな銀髪をなびかせた、凛々しさのある顔立ちをした女性だ。


「姫姐さん、もう終わったようですよ」

「なにぃ? ちぃっ、出遅れたか」


 補佐の者だろうか、こちらも中々の美人にそう言われ、舌打ち交じりにそう呟くアルトリア。

 いま姫って言わなかった?


「姫様、まだここは危険です」


 司が姫姐さんと呼ばれている女性の前に出てそう言う。

 おいおい、マジで姫なのか?

 姫っていったらヒロインの代表格のはずだろ? 敵に攫われるというより、ヒロインを攫った敵にメンチ切って殴り込むような熱血主人公じゃん。


 恰好的にも姫というよりはレディースの総長と言われた方がしっくりくる。


「あぁ? 国の一大事にアタシの騎士団が動かねぇで誰が動くってんだ? ぶっ殺すぞ」


 見た目は相当な美人なのに、口悪いな。

 しかも騎士団って……レディースチームにしか見えないんだけど。

理解が進めば勉強も楽しくなる。

おろそろレビューが欲しいね。

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