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十話『ボス戦ってやつ?』

「はじめましてお客人。私、魔王軍幹部ピエロ紳士と申します」


 ……ネトゲで適当につけたような名前だなおい。しかも、やたら高レアの装備を身に付けてるタイプの。


「なにっ、魔王軍幹部だと!?」


 ピエロ紳士の言葉を聞き、目を見開いて驚愕の声を上げるカイン。


「魔王軍幹部って……あれだよな、魔王の直属の部下的なやつだよな?」


 ストーリーの中盤にボスとして出てきたり、ラスボスの手前で出てきたりするやつだよな。

 まだ始まったばかりなんだけど? 中盤どころか序盤も序盤なんだけど、なんでそんな中ボス出てくるの?


「魔王軍幹部は、魔王に従える魔族の中でも特に強い五体が任されていると聞く……つまりは、魔王に継ぐ実力者ということだ」


「今宵は客人が多い、先程のお客人も親切丁寧にもてなしてやったら、喜びのあまり全身から血を吹き出すほどに狂いもだえておった」


「やはり他の奴を殺したのはお前か……死体はどこにやった」


 背中の槍に手を伸ばしピエロ紳士を睨み付け、そう聞くカイン。


「ああ……それなら食った」


「食った……だと……!?」


「当然、もてなした後はスタッフが美味しく頂きますとも。無駄に殺すだけでは各方面の方々からのクレームが鬱陶しいのでな! 冒険者として鍛え上げられた肉体は実に美味であったぞ!」


「化け物め……かなり分が悪いが、逃がしてはもらえないようだな」


 戦う覚悟を決め、背中の槍を握る手に力を込めるカイン。

 俺の方は最初からやる気満々だけどねー。さーてぶちかますぞー。


「当然! 客人はもてなすというのが私の心情、帰りたければ自由に帰るのは構わないが、私を倒してから帰られよ! おっと、一つだけ忠告しておくが私は食した者の強さを吸収する事ができる。即ち、私の防御力も魔法耐性も人間のそれを大きく上回っている、人間程度の攻撃では傷ひとつ……」


「喰らえ! サンダァァァショットォォォ!」


 ピエロ紳士が動く前に、先制攻撃を仕掛ける。


「ぐあああああああああああ!!」


 俺の放った雷魔法は真っ直ぐとピエロ紳士に向かって飛んでいき当たった相手を感電させる。


「よし、いける!」


 魔王軍幹部というからどれ程のものかと思ったが、なんだ案外チョロいじゃねーか。


「ばっ……バカな……この体にキズをつけるなど……」


 片膝を着き、明らかにダメージが入っているピエロ紳士。俺は次なる魔法を放てるように準備しながら、奴に近付いていった。


「おとなしく宝を寄越せばこれ以上痛い目みないですむぞ」


「あの、台詞が盗賊なんですけど」


「ほら、どうした、まだ魔法を一発喰らっただけじゃないか。かかってくるか、大人しく宝をだすか選べよ。二つに一つだ。そんなに難しい問題じゃないだろ? さあ早く宝を出せ、ハリー! ハリーハリー! ハリー!」


「……盗賊の方がマシかも」


「ふっ、少し見くびっていたよ……まさか上級魔法をノーモーションで放つとは……中々腕の立つ魔導師のようだ」


 よろよろと立ち上がりながら呟くピエロ紳士。


「いや、今のは上級魔法じゃねぇ……初級魔法だ」 


「ばかなっ……魔法の威力は自身の魔力量に依存する……初級魔法でこの威力など……」


 驚愕の表情を浮かべるピエロ紳士。


「ナイス魔法だったねユウリ君、次は私の番だ」


 その言葉を遮るように、ヘルクスが俺の前に出て剣を抜き盾を構える。


「……ほぅ、見たところパーティーにおいて盾役らしい、いいだろう我が攻撃力も人間を大きく上回る……はたして、いつまで耐えられるかな!」


「無論、死ぬまで」


「ならば、一瞬で死をあたえてやろう! 耐えれるものなら耐えてみせよ!」


 一瞬でへルクスとの距離を詰め、目にも留まらぬ速さでへルクスの首もと目掛けて腕を振るうピエロ紳士。


「ふんっ!」


 そして、予想通りにそれを回避するへルクス。


「……え? あ、あれ? 避け」


 まさか避けられると思っていなかったのか、ピエロ紳士は攻撃を空振りして一瞬動きが止まる。


「防御力……スマァァァァッシュ!」


 その隙を見逃さず、へルクスのカウンターの拳が脇腹に突き刺さる。


「ごふっ」


 そしてそのまま飛ばされ、岩盤を打ち砕き土煙を上げる。

 なんで剣を抜いたのに殴るんだろう。


「私の防御力とそちらの攻撃力……どうやら、私の防御力が上回るらしい」


「先程の女程ではないが、中々の攻撃力だな、ほんの少しだけ痛かったぞ」


 土煙の中から、平然とした様子のピエロ紳士が出てくる。


「なにっ! 私の防御力スマッシュを受けて平然としている……だと……!」


 今ので勝負が決まったと思っていたのか、あまりにも平然としているピエロ紳士を見て兜の下の瞳が大きく見開かれる。


「言ったはずだぞ、我がステータスは人間を遥かに超越しているとな」


「ならば、攻撃が通るまでやるのみ!」


 へルクスは剣を投げ捨て、ピエロ紳士に向かって駆ける。

 いや待て、なんで剣を捨てるんだよ、斬れよ! 


「面白い、かかってくるがいい!」


「防御力ボンバー!」


 シールドを外し、両手で持って殴りかかる。


「効かぬ!」


 それをピエロ仮面は頭の上で腕を交差させて受け止める。


「防御力タックル!」


 盾から手を離して後ろに跳び退き距離を開け、再び猛ダッシュで距離を詰めて体当りを仕掛けるへルクス。


「退かぬ!」


 ピエロ紳士はへルクスの盾を使い、真正面から体当たりを一歩も下がらずに受け止める。


「防御力チョーップ! からの防御力スマッシュ!」


 チョップで盾を弾き飛ばし、体を沈ませて拳を斜め下から突き上げる。

 

「かえりみぬぅぅぅ!」


 顎に直撃を喰らうピエロ紳士だが、まるでものともせずに反撃に出る。


「サンダァァァショットォォォ!」

「ぐおおおおおあああああああ!」


 隙だらけだったので、初級魔法をぶちこんでやる。


「一体なんなんだ、あの二人は」

「なんなんでしょうね、本当に」

「あの魔法も、体術も……人間業とは思えない」


 そこ二人、突っ立ってないではよ来い。


「貴様、男同士の戦いに横から入ってくるんじゃない! 礼儀を知らんのか!」


「魔王軍相手に礼儀も何もあるかよ、バッカじゃねーの? 戦争にルールがあるかってんだ」


「ぐぬっ、この、ド正論を吐きおってからに……貴様もそこの男も面倒だ! 魔法で纏めて片を着けてくれるわ。エクスプロージョン!」


「どんな魔法も防ぐバリアーッ!」

 

 ピエロ紳士が魔法を放つ瞬間、防御魔法を全員を覆うような形で展開させる。


「そんなチャチな魔法で最上級魔法が防げるものか!」


 ピエロ紳士から放たれる小さな火球。


「それが防げるんだな」


 それは俺の張ったバリア触れた瞬間、何もかもを飲み込み燃やしつくす程の爆発を引き起こす。

 されど、俺のバリアには傷の一つも付かない。

 流石、名前は伊達じゃない。


「ば、ばかなっ!」


 ピエロ紳士は渾身の魔法を簡単に防がれ驚愕の表情を浮かべる。


「言った筈だ、どんな魔法も防ぐってな」


「くっ、おのれぇ、ふざけた魔法を使いよってからに」


「今度はこっちの番だ!」


「まだだ、まだ終わらぬ、アンチスペルシールド」


「どんなバリアも切り裂くカッター!」


「またそのシリーズか!」


 俺の放った魔法は鎌鼬のように飛んでいき、ピエロ紳士の張った防御魔法を紙のように切り裂く。

 魔法の名前を聞いた瞬間に守りから回避に切り替えたピエロ紳士だが、完全には避けきれず、左腕を切り飛ばされる。


「ぐおおおお!」


 傷口から止めどなく流れ出る血を抑えて止血するピエロ紳士。


「ちょっと待って、思ってたよりグロい」


 腕がもげたら血って結構ダラダラ流れるんだな。しかもやたらどす黒いし。


「いい流だ。このまま一気に決めよう」


 このまま押しきるべく、ヘルクスが片腕を失ったピエロ紳士に向かって突撃する。


「俺も行かせてもらう、双槍のカイン……推して参」

「邪魔だ」

「うぼぁ」


 へルクスに続き、背中に携えた槍を抜いて戦闘に参戦したカインだが、ピエロ仮面の凸ピンで飛ばされ戦闘不能状態になる。


「カインが死んだ! この人でなし!」

「いや死んではいませんから、虫の息ですけど」

「仇はとろう! 防御力スマッシュ!」


 ピエロ紳士は向かってきたへルクスの脇をすり抜けてちぎれた腕を拾い、後ろに飛び退いて距離を取る。


「私をここまで追い詰めるとは、少々駆け出し冒険者だからと侮っていましたよ……いいでしょう、私の本気をお見せしましょう」


 そう言った次の瞬間、ピエロ紳士の纏っているタキシードが弾け、マッチョな筋肉質な体が露になる。体型も数倍に大きくなり、かつて体験したことのないような威圧感を放っている。


「今まで食らったものの全ての能力を解放したDCSモード、このモードになった以上、貴様らに勝機ない……さあ諸君、はたしてこの私を止められるかな?」


「先手必勝のサンダァァァショットォォ!」


「ぐふっ……ふ、効かないな」


「なん……だと!?」


 魔法特化なの魔法が通用しないなんて。


「どうしよう! 俺役に立たねぇ!」


「いや、結構やせ我慢してるように見えるんですけど」


「そ、そうか? よしならもう一発」


「させるものか!」


 拳は音速を超え、発火した拳を突き出す。俺らはかなり離れているが、背筋に凍るような悪寒が走り咄嗟にバリアを張る。

 直後、火焔がソニックブームと共に俺に向かって放たれる。

 ねぇ、物理法則って知ってる?


「うわっ」


 バリア越しからでもビリビリと空気が振動し、その威力を物語っている。直撃された日には骨も残らないだろう。


「いかがかな、魔力は使わず純粋な身体能力のみを使って放つ究極の技のお味は?」


 いや、つまりただの力技じゃん。でもバカに出来ない威力だ。


「無事かい、ユウリ君?」


 前に出ていたへルクスが退いてきて、耳元で囁くように言う。


「おう、俺はピンピンしとるよ」


 魔法で防御できたからな。


「驚いたよ、まさかこんな奥の手を残しているなんてね」


「そうだな。あと二回、変身を残していない事を祈るよ」


「そうなると逃げるしかないですけど、それはないと思いますよ。大分追い込まれてましたから、向こうも出し惜しみはしてない筈です」


 巻き添えを喰わないように、俺のバリアーの範囲内に逃げていたらしいアルが会話に入ってくる。


「ならば、あれが全力というわけか……よし、私が時間を稼ぐからユウリ君は隙をついて全力の魔法をぶつけてくれ」


「僕も手伝います、力は及びませんが注意を引くくらいならできますから」


「アル、大丈夫か? 危ないと思ったらすぐに戻ってこいよ」


「子供扱いやめてもらえます? つぎやったらグーでいきますから」


「冗談だって、そうマジに怒るなよ……ま、攻撃は任せとけって!」


 そう言って前に出る二人の背中を叩き克つを入れる。


 さて、スーパーウルトラギャラクシーキャノンの出番だな。


「ならば……魔法を詠唱する間は俺が守ろう」


 頭から血を流し、足元もおぼつかないカインだが槍を強く握りながら歩いてくる。

 ただ……すまない、魔法の詠唱とか知らないし、多分必要ないから守ってもらわなくても大丈夫だと思うんだ。


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