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000 BM プロローグ
薄暗く細い階段を、一人の少女が駆け下りていく。
何段かをまとめて飛ばして、落ちるように駆け下りていた少女の目の前に、突然闇が広がった。
勢いが付きすぎていたし、薄暗かったせいでよく見えなかったため、到底止まれるはずもなく、少女は口をあけた闇の中に突っ込んだ。
それは、傍から落ち着いて眺めれば、黒い板か鏡のような厚みのない闇だったが、突っ込んだ少女は不思議なことに、それを突き破るでも弾き返されるでもなく、姿が見えなくなった。
もし目撃して稲者がいれば、闇にのまれて忽然と消えてしまったように見えただろう。
なにか声のようなものが響いていたが、すぐに静寂が戻り、そして闇も次第に小さくなって消えてしまった。
だれも知ることがないまま、小さな異変はその世界にほんの小さな波紋を投げて消えてしまったのだった。
その世界ではほんの些事であり、ほんのわずかな影響もなかった。その世界では…。