住人と空
冷たい石だたみの床、多少の衝撃じゃ壊れないぐらい堅い、漆喰で塗り固められた壁、鉄格子で遮られた窓から見えるのは、星屑が散らばり美しく煌めく夜空。
「お前も好きだなー。夜空見てるの」
「…………別にこれしかやる事ないし。」
隣の部屋から聞こえる声にボソッと答え、重い石の扉を開け、質素なテーブルに置かれた餌を持って元の場所に戻る。
冷たく冷えたスープを飲み、固くなったパンを口に運ぶ。
隣の部屋の住人も、餌を食べていることだろう。
「なぁ、たまには水浴びでもしてきたらどーだ?」
「…………オマエが、覗きたいだけだろ」
「あっはは…………バレた?」
明るい笑い声が、絶え間なく続く頭痛によく響く。水浴びを行うのは、住人が眠りに落ちた後にしよう。
蒼い海に煌めく銀の星は今日も、『あの人達』に様々な事柄を説明しているのだろう。
娯楽と癒しが少ないこの地での唯一の楽しみは、水浴びだ。
森の奥深くに湧き出す泉で身体を洗い流すのは、楽しいし気持ちが良い。
運が良ければ、泉の澄んだ水を飲みに来た鹿なんかが見れる。彼らは警戒心が薄く、簡単に頭を撫でさせてくれるから、個人的には大好きな動物だ。
うっすらと赤みが差す肌を清め、丁寧に薄布で水滴を拭う。薄布が水を吸い取り重くなったので、薄布を絞りそして気づいた。
足元に何か埋まっているのだ。
足の爪先で触れてみると、苔と朽ちた石の感触が足から伝わってきた。
それの周りの土を掘り、左右に揺らしてみるも動く様子はない。
「…………はぁ」
不本意だが、これを掘り当てるには、住人の力を借りるしかないのだ。そう考えるとひどい頭痛が更に威力を増してくる。