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自殺

作者: 甘味しゃど

   1


 私は今日、自殺しようと思います。

 死ぬ理由は特にありません。あるとすれば、単に疲れたからだろうと思うのです。皮肉なことに私の気まぐれはとうとう自殺というわからぬ領域まで来てしまったらしい。簡単に死ねるものではないと理解ってはいますが、どうにも私の心は自殺を願っているらしいのです。

 そう頭の中に浮かんだ気まぐれな計画を実行しようと、私はまずスーツケースを取り出しました。理由は地元に帰省するため。最後に私は自分の想い出に浸って死のうと思うのです。

 用意したのは二着の私服と適当な予算。それと適当な日用品やら道具やらと、他者から見れば単なる旅行者のような準備物でありました。私の中に迷いはありませんでしたが、どうにも自分の中にある何かがそう決定づけてしまったようなのです。いつもの旅行の気分なのですが、気まぐれに死ぬのです。最後まで気まぐれでいようと思います。

 ケースを閉じ、都心の新幹線に乗り込み、東の地元に向かう。長い電車の中でまず思い返したのは、初めて上京した日のことでありました。晴天の空が映る窓の向こうをただ眺め、耳につけたイヤホンから流れるジャズミュージックを聞き流す。思い伏せていたことといえば「実家の飯が旨かった」という思い出だけ。呑気に上京してきた私は大きな駅の看板を頼りに新しい家本に向かっていました。今の自殺しようと思っている私の脳に浮かんだ言葉といえば、「そんなこと思っていたな」でありました。今から自殺しようとする人間の言葉に違いないのですが、私にとっての自殺とは、多分、新しく性を始めるために今の性を終わらせようという歓楽的な思考だったのでしょう。程なくして、車内販売の荷物をたくさん詰めた台車が横を通り過ぎようとしたのを、私は呼び止めました。

「すみません。何か、食べるものが欲しいのですが」そう言って呼び止めると、台車を押す彼女が作り笑いで止まり軽く返答を返してくれました。私は「何か弁当を一つ。少なめで」と彼女に言うと、彼女が選んだおすすめの弁当箱が渡されました。それと一緒に、適当な飲料物を指差し料金を払いました。彼女が台車を押し過ぎ去るのを目で追い、次の車両へ行ったのを確認すると私は弁当箱を開きました。中はそぼろと卵を半々に、ご飯にのせた駅弁当でした。私はそれを箸を器用に使い食べていきました。味は旨かったが、実家のご飯を未だに思い返していた自分にとっては「あのご飯が一番美味しかった」といつの間にか口にこぼしていました。少しして、いつか聞いた聞き覚えのあるメロディと共に、目的地近くの駅の名前がアナウンスと共に流れます。私は食べ終えた弁当をビニールに詰め込み、途中のごみ箱に捨て新幹線を降りました。都心よりのどかな空気が私を包んでくれるのです。帰ってきたという自覚が頭の中に巡り、うんっと体を伸ばすと、めきめきと身体の中から響いてきました。「帰ってきたなぁ」そう呟いて、私は改札へと向かいました。


   2


 私を待っていたのは、思い出とは少しズレた風景でした。何年も地元に帰らずに上京先で過ごしていたせいか、改めて戻って来て目にした風景は、少々新しくなった建物ばかりでした。名残はあっても、どこか別の世界に感じるようなその場所で、私は記憶と勘を頼りにスーツケースを転がしバス停へと向いました。

 陽の光は未だてっぺんに届かない所にありました。バスの車内の中で、私はうとうとと眠り惚けてた体を伸ばして起こしました。先程まで幾人か乗っていたバスの中も、今では自分と運転手、あとは知らない白髪の老人の男性だけになっていました。私は軽く外の風景を横目に見てみました。外は緑葉が生い茂る木々の間に敷かれたコンクリートを車が走っているのです。チラチラと陽の光に照らされた葉の一部が目に入る中、私は財布から小銭を取り出しバス停のボタンを押しました。馴染み深い音と共に「次、止まります」と電子音が流れました。停車したバスの扉が開くと、老人も私と同じく立ち上がり、私よりも先に下車して行きました。私も同じように切符と運賃を入れると、モニターに映る投入金額が運賃と同じだとわかると、そそくさとスーツケースをもって降りて行きました。どうにも、私はどこかきっちりとした性分らしく、何かがあっていなければイライラしてしまうタチなのです。ハサミで紙を切っても、真っ直ぐになっていなければ気を落とすし、歩いている時に道路のと切れ目に足のつま先か踵がちょうどよく合わさってなければまたイライラとするというものです。迷信に左右されるわけではありませんが、どうにも私はA型の特質である神経質さが面倒なところに出てしまっているらしいのです。

 下車をした場所は、木々が生い茂る林の中であり、対向車線側に抜け道のような場所がありました。私は横断歩道もない道路を渡ろうとするのですが、杖だけでよぼよぼと歩く老人を見て、今更な正義感が働いてしまいました。「お手をお貸ししますか?」と、私は軽く笑顔と声を作って言うと「すまんね」とペコリと頭を下げてきました。初めてではありませんが、この年になってあまり人に何かをするということをしてこなかった私にとっては、その時になってなにか新鮮なものを感じていました。手を貸して荷物を私が持つ。ゆっくりですが、山の中を車がそう行き来するはずもなく、反対側へと向かっていきました。どうせ行き先は一箇所しかないとわかっていたために、私はそのまま目的の場所まで老人を連れて行くことにしました。

 少し長く歩くと、遠くに武家屋敷のようなものが見えてきます。横の札らしきものには「旅館 藤」と書かれており、この場所は私や地元の古い人しか知らぬ、謂わば秘境の地なのです。子供の頃の私も、お小遣いを貯めては一人ここに泊まりに来たものでした。木々に囲まれたこの場所は、どうにも落ち着くのです。

 老人は店の前まで来ると、「ありがとう。ここで結構です」とまたペコリと頭を下げ、荷物を抱えて中へと進んで行きました。私は共に入っていくことにどこか気まずさを感じ、彼とは時間を置いて入ることにしました。

 この場所は、私にも鮮烈な記憶としてまだ頭の中に残っています。学校も友との交友もうまくいかなかった時期に、私はよくこの場所に訪れたものだでした。元々私はあまり人との交友が好きな方ではなく、上京しても現地の友ともうまくいかず、つい昨日までは家の中でひたすら文字を書く仕事に勤しんでいました。今思えば、私はあの生活に痺れを切らしてここに来てしまったのかもしれません。死ぬ理由にはなっていないのでしょうが、そんなことはどうでも良いのです。今感じているのは、今も昔も、案外人とは変わらないものだという確信めいた瞑想だけだったのです。

 少しして、私は玄関に立っているのもここまでだと意気込むと、改めて扉を開きました。中は相変わらず変わっておらず、変わったといえば辺りに置かれている装飾品くらいでした。木の床、木の天井。旅館自体は変わっていないように見えます。見当たらないのか、見当がつかないのかは分からないが、私はそんな些細なことを気にするつもりはありません。私はスーツケースを持って受付に向かうと、前にいる着物姿の女性に声をかけました。

「すみません、泊まりたいのですが」

「はい。予約された方でしょうか?」

「いえ、違います」

「わかりました。では、こちらに名前と連絡先を記入してください。ご住所は結構です」

 そう言って彼女に渡された紙に、つらつらと自分のことを書いていくのです。もしかしたら、これが私の書く名前の最後なのだろうかと思いながら―――。私は書いた紙を彼女に渡し返すと「では、こちらをお使いください」と鍵を渡されました。鍵にはタグがつけられており、二ノ八号と書かれていました。私は鍵を受け取ると、スーツケースを持ち上げて横の通路を歩いて進んでいきます。階段を上り二階へ行くと、私は鍵を使ってタグと同じ部屋を開けました。中に入ると畳の和室に奥には広縁があり、その窓からは山から落ちる滝が目に入ります。この部屋はアタリだったようでした。部屋によっては景色の見えない場所もあるので、割と一種のギャンブル性もあるのです。この旅館でアタリを引くには、予約ではなく当日に行くのが決め手だと子供の頃から知っていたのですが、どうやら今でもそうらしいです。重たいコートを脱ぎ捨て、スーツケースを脇に押し除け広縁に設置された椅子に腰掛け窓から滝を眺めていました。ここは景色が良い。窓を開ければ滝の音が心地よく耳に響き、心を落ち着かせてくれます。私は少しそこでのんびりすることに決めました。


   3


 割と、私の一片は自由奔放であって、別の一片は意外そうでもありません。言葉のあやというわけではなく、言葉通りの意味です。仕事は締切までにはちゃんとやっています。たまに遅れることだってありましたが、今となってはどうでも良いことです。ですが、こうも落ち着いた感情になれたのは、いつ以来でしょうか。いつも同じものの繰り返し、割と慣れれば余る時間も出てきますが、それがこんなに長く続いた覚えはありません。私はいつも空いた時間にだって明日は何して明後日は何をしておこうなんて計画を立てています。だが、私はこれで終わりなのです。そう思うからこそ、今これから先のことなど無いとわかってしまうこの時間が否応なく長く感じます。人の暇には必ず一が残ります。本当の零に到達しうるには、その媒体さえも零にならなくては意味がないのです。私は今、人生そのものが零に至っているのです。

 私は、夕焼けが射し込む一室の中で目を覚ましました。「夕方か」と私が吐くと、コンコンと扉をノックする音が耳に入りました。私はなんだろうかと扉を開けると、そこにはこの旅館の従業員の着物を着た高校生ほどの若い少女が立っていたのです。彼女は私を見るなり「あの、お昼にこちらにお食事を持っていこうとしたのですが反応がなかったので」と少し震えた声で話していました。学生のアルバイトか、この旅館の女将の娘か何かか、私はさほど気にもせずに彼女に声をかけました。

「すみません。部屋の中で眠っていしまっていたので。夜にまたお願いできますか?」

「あ、だ、大丈夫です」

 ペコリと頭を下げてそそくさとその場を立ち去る少女を私は見送ることもせず、部屋の中に戻るとスーツケースから予備の下着を取り出し、部屋の隅に置いてある旅館内の説明書らしきものを読むのです。目次の欄から露天風呂という項目を見つけ出すと、入浴時間などが書かれた項目を見て「なんだ、最近は夜遅くまで開くようになったのか」と私は呟きました。私が高校生の頃は夜の八時までに入らなければ閉じてしまうような場所でしたが、今では日付が変わっても空いたままらしいのです。私は小さくほっと息を吐き出して持っていた下着を横に置きました。そして財布と携帯をポケットの中に入れて部屋を出ました。近くに売店なんてありませんが、旅館内に適当な自販機や小さな売店などはあります。基本言葉通りの羽休めの為にあるような場所なので、近くに町や村などは存在していません。まあ、騒がしくないだけましですが。私は部屋を出てまず玄関口まで歩きます。玄関近くの売店には新聞や駄菓子、お酒やつまみなどが置いてありますが、もうすぐ夕食が来るので、私は適当に雑誌を買って部屋に戻りました。私はこの時、本当にやることがない場所だなと今更ながら実感していました。携帯の電波さえも途切れるか途切れないかの瀬戸際を行き来しているこの場所です。どうにも、ここまで暇を暇で重ねると、一層のこともう死んでおいたほうがいい気もするのですが、お昼に食べ損ねたご飯と少女に申し訳ないという罪悪感がまだダメだと囁いているように思えました。私は部屋へ戻ったのですが、既に部屋の前では料理を持って部屋の前で立ち往生をしている少女が居ることに気がつきました。

「すみません、今戻りました」

「あっ。いえ、お気になさらず」

 私に気がついた少女は顔に笑顔を浮かべて私に答えてくれました。働き始めたばかりの少女なのでしょう。まだ慣れていないという感覚が見て取れます。私は彼女を部屋に招き入れ食事を運ばせました。彼女はぎくしゃくとぎこちなくではありますが、何とか料理の説明を私にしてくれました。私はそれを見て、働き始めた頃の私を同じく浮かべて見ていたのです。私も働き始めた時は、関係の方との対談でよく言葉に詰まることがありました。ですが、相手は私の動揺を悟ってか、私に小さく落ち着かせるような動作を繰り返していました。私は見よう見まねでしたが、彼女の説明の隙間に「なるほど」とか「それは良さそうです」とかなど、相槌を打っていきました。彼女は安心したのか、次第に私との会話が些か友好的になっていくのを感じ、私と対談してくれた彼もまた同じ気持ちだったのだろうと思い返していました。私は彼女の話が一区切りするまで聞くと、彼女は自分の長話に気がつき慌てたかのようにして料理を進めてきました。ですが、私は一人で食べようと思っていたので、彼女に見られながら食べる結果になってしまい、私までもぎこちなく食べてしまう結果になってしまいました。普段一人で食べていた私にとって、誰かと一緒に食べることも、まして誰かに見られて食べるなど久方ぶりの経験です。何年も独り身だった私は、初めての経験に自分までオドオドとなってしまい、時間をかけて食べてしまって逆に申し訳なく感じてしまいました。彼女は食べ終わった私を見ると、長い時間とは相反してどことなく笑みを浮かべながら食器を持って立ち去っていきました。もしかすると、彼女は意外にも人を観察することを趣味とした性癖の持ち主なのかもしれません。どうにもこの旅館は良いものとは別になにか異質なものまでもが導入されてしまっているのではないのでしょうか。今まさに、私は死に場所を選び間違えてしまったのかもしれません。


   4


 私は着替えを持ち、浴場へと足を進めました。脱衣所には木の棚が敷き詰められており、その中にあるカゴの中に着替えを入れていくのでしょうが、周りを見ても殆どが空で、入っているのは一つの籠だけでした。それを見た私はどことなく違和感を覚えました。ですが、それもまぁ気まぐれだと思うと、私はすぐに服を脱ぎ籠に投げ捨て颯爽と温泉に翔けるのです。がらりとガラス張りの扉を開けると、ぼわっと湯気が私の顔を濡らします。私は手持ちのタオルで顔を拭きました。じっくりと視界がが慣れていくと、先程のもう一人の珍客であるだれかの影が奥に見えるのです。それは露天風呂の方に、微動だにせずただ揺れる湯気の中にいました。私はマナーをある程度は守る人間です。というよりも、あるべきものはより優れた状態で楽しむ人間です。なので私はとりあえずと体を洗い流しました。頭を乱暴に掻き回し、体は手でざざざと雑に洗うのです。そして頭のてっぺんから足の先まで細かく洗うと、桶に入れた湯を頭から掛け流しました。まあ、それだけでは足りないので、無論シャワーも共に使いましたがね。

 私は、私の興味心が謎の影の正体を暴けと沸き立ててきました。露天風呂に浸かる謎の影。脱衣所で見たあの服に違和感を持った自分が、その興味に抗える訳もなく、私は洗ってすぐに外に出て露天風呂へと直行しました。

 そこで私が見た影の正体とは、朝にバスの車内で遭遇した老人でした。老人はのほほんと気持ちよさそうに湯に浸かっていたのですが、私に気がつくとこちらを向いてペコリと頭を下げると、「おやぁ、今朝の」と私のことを彼も覚えていたらしいのです。私は「ども」と小さく返事をすると、私もまた湯に体をつけました。湯は私が思うよりも熱く、ですがすぐに体に染み渡り、より心地よく感じました。私は、ふぅ―――と口から気の抜けた声を吐き捨てると、星が綺麗に光る夜空を見るのです。とても綺麗でした。まさしく満天の空に描かれた―――否、真っ黒の布の上に散りばめられた宝石とでも言いましょうか。この場所に泊まるたびに、この風景は絶対に逃したくないものの一つです。私は、横の仕切りの石に腰掛けていたはずなのですがいつの間にか肩まで浸かっていました。全身に巡る湯の暖かさと、顔に当たるほのかな冷気がなかなかに心地よいのです。

 気が付くと、ご老人はとうに上がってしまってた様です。わたしは一人露天風呂から満天の星空と大きな月と、それらに照らされる滝の姿を未だゆっくりと眺めていました。

 ただ、わかるのです。これが、多分、私の最後に最も近い風景となりうるのだろう、と。


   5


 私は、自室の広縁にいました。

 ゆったりと椅子に腰掛け、机の上には小さな薬用カプセルが五つと錠剤が一つ。死に方は簡単で、睡眠薬の錠剤を飲んでから毒仕込みのカプセルを飲み、時間差で死ぬという寸法です。私はそれらを紙の上に置いたあと横に水の入ったコップを置いて、真夜中の滝を眺めながら黄昏ていました。別に気分でここに来ましたが、死なないつもりはありません。そして、死ぬ直前になって思い返すように今までの記憶を再生していました。私にとってこの場所は一種の心の洗濯所でした。心を綺麗に洗い新鮮な水で流すようなこの場所で死ねるのです。気分の良いまま死ぬにはもってこいの場所でした。私はふと、滝の方を眺めて思ったのです。幾度この場所で人生に悩んだのだろうかと。考え、思い返し、思い出してみれば、いつの間にか数え切れない程この場所に来ていたようです。もし、人に原点があるのだとすれば、私にとってこの場所はあるひとつの原点なのでしょう。そして、原点にして終着点。私は今日この日、この場所で自殺をするのです。なんとも新鮮な気分でしょう。今まで心に中にあった小数点以下の数字さえも着々と零に変わっていきます。そして多分、私はこの薬を飲んだ瞬間には、私の全てが零になるのでしょう。

 私はまず睡眠薬を手に取りました。これは躊躇なく飲み込むことができました。一瞬で眠気が来るようなものではありませんが、すばやくカプセルを手に取ります。そして、口の中へと放り込むと、コップいっぱいの水を全て飲み干しました。次第に私の体が麻痺し始めているのがわかります。私は何を思ったのか、広縁の窓ガラスをすべて明け、夜風に当たるのです。風は心地よく、より一層良い気分に私を連れて行こうとしてくれていました。そして、次第に眠気が始まります。深く腰掛けた椅子の感覚も、肌に当たる夜風の感覚も、瞼を開く目さえも感覚がなくなっていきました。そして、風景さえも見えなくなり、目を閉じるのです。それは故意的にではなく、薬の性だとすぐにわかりましたが、それ以上思考を回すことはできませんでした。お酒とはまた違った浮遊感を感じます。私は目を閉じて、やっと零にたどり着いたのだと実感しました。そして、思い返すのは過去の残影でした。私はこれが走馬灯というやつだと感覚で認識しました。そして直ぐに、意識が消えかけているのも感じ始めていました。全身の筋肉にはもう力が入らないとわかっていましたが、最後に、その口に力を入れました。死の直前、それは途方もない空虚に投げ出されようとしている感覚でした。ですが、案外悪い気はしないのです。そんな世界の最後を見届けるような感覚でした。そして、その終着点がやっと見えたのです。人生という線路は余りにも長く、終りが見えないその線路の、最後の駅。私は、その駅にたどり着いたのです。

 私は、最期に言いました。

 終着点に着くと同時に、口からポロリと溢れたのです。


「ああ。―――いい旅だった」

 はじめまして。

 今まで別の方で小説を上げていたのですが、今回からこちらでもあげようかと思います。

 さて、今回のお話ですが、私が衝動的に思いつき、何もなしに書いてしまったので特にこれといって深いところはありません。もともと型としてはライトノベルのような書き方をするものでしたので、あまりこう、小説のような書き方で書いたのは久方ぶりなのです。そんな中でですが、気が付けば面白いだろうなというものもいくつかつなげて置かせていただきました。

 主人公は男ですが、この男の気まぐれさはある意味一級品ではないでしょうか。ですが、この話だけでは彼が思い立った経緯の全てはありません。そこは読者様方のご想像にお任せ致します。

 では、解説という解説もロクにせずに、今回はここで切らせていただきます。また次回も上げるようなことがあるならば、その時はまたご贔屓に。


 今回はこのページを開いていただけたことに感謝をし、

 この筆を一度置かせていただきます。

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