出逢い
そこにはなんと、見知らぬ女性がすやすやと眠っていた。
照子は驚き過ぎて声も上げずに、布団を巻き込んでベッドから勢いよく転がり落ちた。
ベッドの方から女性の唸り声が聞こえてくる。照子は布団にくるまったまま、信じられないと言うように目を見開いて、自分のベッドを見る。
巫女のような和装をした彼女は、寒そうに眉間にしわを寄せ体を丸めた。
その様子を見た照子は、反射的に自分が身にまとっている布団をかけてあげた。そして何か満足した気持ちで彼女を見つめて1分程。
「……って、そうじゃないでしょ私!」
自分でかけた布団を引っ剥がし、彼女の体を揺すったり、軽く頬を叩いたりして起こした。
「ちょっと……起きて! 起きて下さいって、ねえちょっと!」
「うえ……うえ……まだ暗い~もう少し~…」
「ちょっ、もう少しじゃない! 早く起きなさいって!」
謎の女は、うーん……と再び唸り声をあげ、目をグリグリとこすって嫌そうに起き上がった。
「すみません、お早う御座います」
「おはよう……」
「あの、お伺いしても宜しいですか?」
「あい……」
照子はベッドの前に正座した。
この異常な状況に、こんなにも有り得ない程の冷静さを抱いていられる所がまた、照子の凄い所である。
「あなたは、どちら様ですか?」
「天照大御神」
「アマ……あまてら……す……さん? ……それはあなたのお名前?」
「天照でいいよ」
にかっと満面の笑みで答える天照は、成人しているのか、自分と同じ位の年齢なのか、それ以下なのか、照子には皆目見当がつかなかった。
「……じゃあアマテラスさん、質問します。なぜあなたは私のベッドで寝てたんですか? っていうかいつの間にいたの? いつ入ってきたの? どういう経緯で? どういうこと? えっ、全然意味分かんない怖い」
「わー、落ち着いてー」
困ったように苦笑する顔はとても大人びて見えた。
「わたしがここに来たのは、あなたが夢を見始めた時。つい一時間位前かな。布団に入ったのもその時間。なんで入ったのかというと、あなたがとても幸せそうだったから! あれはすごく暖かくて良い夢だったね、懐かしかったなあ」
「……え?」
相手が夢を知っているという事もそうだが、それよりもあの果てしなく長い時間が、たった一時間の間に見ていた出来事だったという事にとても奇妙な感覚を覚えた。