夢
照子は夢を見ていた。
自分が夕貴と昼寝をしている所を、どこか高いところから延々と眺めている夢だ。そこは自分の部屋でもリビングでも無く、祖父の書斎だった。
しかし夢の中の祖父の書斎は真っ白だった。床も壁も天井も真っ白で、本来の部屋よりもっとずっと広くて、太陽の光が差し、とても懐かしくて暖かい。
照子が何故そこを祖父の書斎だと思い込んだのかは分からない。だが紛れもなくそこは祖父の部屋だったと後に照子は言うのだ。
茫漠とした時間と空間の中で、照子はなにも考えず、幸せな気持ちで可愛らしい弟とともに、ただひたすらに眠り続けた。感覚で言えば千年も二千年もたったような気がする。恐怖は無い。周りには何もなかったが、心は満ち足りていたのだった。
そして照子は、眠りについたときと同じようにゆっくりと目を覚ました。
意識は徐々にハッキリしていく。身体は動かさず、窓の方に、ぼやける目だけをやれば外はほの暗く、街はいまだゆったりと眠りについていることが分かった。
少し雨が降っているのだろうか。さー……という窓に打ちつける柔らかい音がとても良い。
まだ起きてもしょうがないか、と腕に抱いている、布団にすっぽりと隠れてしまっている弟の柔らかい髪を撫で、また目をつぶった。
夕貴、髪のびたな、大きくなったな、時間が経つのは早いなあ……と、照子は思った。
しかし、どうにも、やけに大きい気がしてしょうがない。肩幅も、腕の長さも自分と殆ど変わらないかそれ以上ある。髪の毛も、とても長い。
――って言うか私、夕貴と一緒に寝た覚え無い……!
照子は恐る恐る布団の中を覗いた。