私の秘密
ざーっ
ざーっ
時季はずれの雨にざわつく生徒たち。今日という日に遠慮なく降ってくるそれは、彼らに不満を募らせ、口を尖らせる。そして、それに更に追い討ちをかけるように怒号という雷を落とす担任。不満は高まるばかりだ。
彼らが静まるには雨がやむのを待つしかないらしい。
「この学校、おかしいよ。面白そーな行事がある度に雨が降るなんて! 期待させるだけさせといてさあ。ムカつく嫌がらせよね。そう思わない?」
ねぇ、テル子? と、最近仲良くなったばかりの明るい友人に同意を求められ、照子は一瞬たじろいだ。
「う、うん、そうだね」
その困惑する照子の顔を見た友人が、何か考え事でもしてたの? と、訊ねる。
「いや、ただ……」
「ただ?」
「あ……残念だなぁと思って! それだけ!」
心配させちゃった? ごめんね~! と、おどけてみせれば、あんたそんなに楽しみにしてたの、と問われる。とりあえず場にあった適当な返事をし、なんとかその場を乗り切る。
“慣れてるから”だなんて、口が裂けても言えない。
照子はこういう状況を、幾度も体験してきた。昔から、行事があったり、友達と遊びにいく日などには、いつもピンポイントで雨が降ってくるという。
この学校に入試を受けに来たときも、合格発表の時も、入学式の日も、今回の校外学習と言う名の遠足も。たぶん、この遠足の予備日もそのまた予備日も雨で潰れるだろう。しまいには中止になるのが目に見えている。
つまり照子は生粋の「雨女」という訳である。高校入学してすぐ、雨女だからと言う理由で周りから避けられるなんてことが起こっては困るのだ。
――雨天。お父さんも昔から雨男だったっていうし、やっぱり私はこの苗字に呪われてるんだ……
早く結婚して違う苗字になりたい。誕生からそればかり願ってきて、はや十六年。それイコール、彼氏いない歴と考えてもいいだろう。
彼氏ができないのは私のせいじゃなく、この苗字のせい! 嗚呼、私ったら可哀想! と、こういう時ばかりは呪いを有効活用して現実逃避している。
そうして窓際の席から、真っ直ぐ地面に落ちていく雨を眺め、一人物思う。
――高校入って初めての遠足、楽しみじゃない訳がなかったのに。