似合いの場所
朝、照子は携帯電話のアラームの音とともに飛び起きた。
照子の高揚する気持ちに呼応するかのように夜中ずっと鳴り響いていた雷に、ずっと天気を気にしていたのだが、カーテンを勢いよく開けると空は思いもがけず快晴だった。
部屋を振り返ると、天照は爆睡していた。きっと空気を読んだ天照が雲を払ってくれたのだろう。今度は人々に気付かれないように時間をかけて……。
今は疲れて眠っているのだと思い、ずれた布団を掛け直したあと有難く合掌した。
「行ってきまーす」
「いってらっひゃい」
間の抜けた母の声に送り出され、弾むように玄関を飛び出した。(母には友達と遊びに行くとしか言っていない)
待ち合わせ場所は照子の町からバスで数分の場所、常盤公園の名物である《ヒカル時計》という立派な時計台の下だった。ヒカル時計はその名の通り、夜になると満月の日の月明かりの様に、白虹を纏って、さりげなく眩く光る。カップル達の憩の場としても有名だ。
予定より20分も早く着いたので、重造が来るまで時計台の下へ腰をかけて待っていようと思っていたのだが、生憎の土曜日。照子が陣取れるようなヒカル時計付近のスペースはない。
他に妙案もなく、照子はそこから少し離れた木の下で待つことにした。
「あんたにはここがお似合いよ~」
照子はそう、小さな声で自分に言い聞かせた。