天国か地獄か
四人は日が沈む時間までたくさん話をした。
他人には通じないここだけの話や、全くくだらない話をしているうちに濁流のように時は流れて行った。
天照と思金は仲が良くないのかと思われたのだが、全然そんなことはなく、よく喋る夫婦漫才のようで、非常に楽しそうだった。
館の外まで見送るという男二人と共に館内を出ると、来るときにはなかった絶景が目の前に広がっていた。
沈みゆく真っ赤に燃える大きな夕日に、花々が黄金に照らされとても美しい。
館の階段広間から先の道路に出るところまで隙間なく、みずみずしく世界に胸を張り、背を伸ばしている。
四人も通りすがりの親子も、部活帰りの学生も皆、異世界のようなその空間に目を奪われ、感嘆の声を漏らした。
「すごい」
照子にとってはその一言だけでよかった。初めて目の当たりにした花畑とも、きっと天国とも違わぬ光景や、気持ちを、わざわざ伝わらぬ難しい言葉に表現して見る必要はない。
日が沈みきると、咲いていた花は全て、蛍のように淡く光りながらフワリと舞い、蒼穹に吸い込まれて見えなくなった。
最期まで美しく生を全うしたその花たちに憧れすらも感じた。
それが天照の吐瀉物だということも忘れて……。
四人の様子を眺めるように、遠くでカササギが一鳴きしたことには気づいたのは、天照と、常世だけだった。