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あめのちはれ。  作者: 小鹿野 三子
眼鏡と金髪?
16/23

声の主

「あ、そうそう、この度はどうも過剰な通力(つうりき)を送ってしまい、申し訳ありませんでした」


 常世(とこせ)は天照に向かってぺこりと頭を下げた。


「許すかボケ……あんたいつもいつも嫌がらせの如く物理的にも精神的にも私に攻撃してくるしね! 赦さん」


 どこか棘の感じ取れる物言いで、ものすごく不機嫌そうな顔の天照。対して常世の顔には先ほどまでの笑顔とは打って変わって、どこか焦りの色が窺えた。

 テル子はこれを見てハッと気づいた……というより思い出したのだが、天照はそういえば相当上位の神。風吹かせるような常世、全知全能の思金(おもいのかね)をも恐怖させる存在なんだ、と。


「あの」


 照子は二人の冷や冷やする会話を中断させた。


「金野さんはいつから神憑き? になられたんです? 私は二週間ほど前なんですけど……」

「結構最近なんだね。俺は去年の十月に」

「「去年?」」


 天照と照子が声を揃えた。天照は千三百年目にして全ての時効が成立したとある人から聞き、その者に地上に降りよと命ぜられ目を覚ました。それはすべての神が同じだと思っていたからだ。


「時効を迎えたのは僕もそう。でも時効ってしてきたことの重みに対して加算されるものであって、人それぞれでしょ? 僕は天照より少し罪が軽かっただけさ……なんの罪かはわからないけどね」


 言われて二人は納得した。そうだ、時効というものはそういうものだった。当たり前の事ほど忘れがちなものだ。


「気になっていたんですけど、その声の主さんって、いったい誰なんですか?」


今度は天照と常世が揃って照子に疑問符を投げかけた。


「誰ってあんた……」


天照は言葉を止め、ひょいと常世と目を合わせた。


「あ。あれ、誰?」

「知らないなあ。全然興味無かった」

「常世、君は全知全能の神じゃなかったか?」


 重造は(いぶか)しげにきいた。


「だから興味無かったんだって。それに」


 常世はテーブルに肘をついて重造に微笑みかける。


「全知全能っていうのは、〈知らない〉という事すらも〈知っている〉ということなんだよねぇ」


 重造は無表情でまた更に自分の椅子を常世の席から遠ざけたが、照子はその言葉にとても当たり前で数学の証明よりも難解な哲学を感じた。そしてこの神は近いうち、その答えにたどり着くだろうということも。

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