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あめのちはれ。  作者: 小鹿野 三子
眼鏡と金髪?
14/23

神様の……


数分後、ぐったりした天照が眼鏡の男に背負われて、戻ってきた。


「大丈夫?」

「うん~……さっきよりは~……」


 天照はゆっくり男の背中から降り、ふらふらした足取りで金髪の向かい側の椅子に座ると、そのままテーブルに顔を突っ伏せて動かなくなった。


「なんだか、ごめんなさい。見ず知らずの方なのに……ありがとうございました」

「いや、いいよ。俺たちここのアルバイト……っていうかボランティアだから」


 指でさし示されてようやく気が付いたが、確かに男の胸元には職員用のネームプレートがつけられていた。眼鏡の男は金野(こんの)というらしい。


「そうだったんですか」

「それに最近よく来るかわいい二人組だったから、まさかほっとける訳なかったしねぇ」


 テーブル越しに話に混ざってきた金髪に、にこやかに言われ、照子は少し赤面した。あわてて話をそらす。


「あ…あの、そういえばアマテ……いや、あの子、吐いちゃいました……?」


 眼鏡は苦笑いをした。


「うん、出たところの階段付近に盛大にね。なんだか別世界みたいな、ものすごい光景になっちゃって……。他の利用客には申し訳ないけど、そのままにしてきたよ。あれはサイコパスでもなければ踏み込めないね……」


 別世界のような光景と聞き、照子はぞっとした。


――サイコパスしか踏み込めない別世界ってどんなよ……神様のゲ●ってどんなよ……天照の●ロでできる別世界って? 地獄? 地獄なの? 地獄?? この館を一歩踏み出たら世界は地獄絵図なの!?


 照子は頭を抱えた。


「どうしたの? 君も顔が青ざめて……」

「だいじょうぶですわたしはだいじょうぶですわたしにはかんけいありませんからええだいじょうぶ」

「え? あ、そう…?」


 テル子ごめーん、と、また天照が力なく謝った声が聞こえる。


「まあまあ。外のことはほっといて、二人も座んなよ。どうせ客も来ないだろうし、ちょっと楽しくお話でもしよう」


 金髪にそういわれ、そうだね、と、金野はその隣に座った。なんだこの流れは、と、躊躇していた照子も二人に促され、どぎまぎしながら天照の隣に座った。



「俺は金野重造(こんのじゅうぞう)です。こいつは……」


 金野は少し考えるようにして、金髪に目を合わせた。金髪はにこにこしながら胸元のプレートをチラつかせた。


「……こいつは常世(とこせ)。ここで一緒に働いている」

「あ、私は雨天(ひなし)です……雨天照子(ひなししょうこ)。……で、こっちは……」

 困った。アマテラスです、なんて言ったらとんだ中二病だと思われてしまう。当の本人に助けを求めようにも、彼女は今もまだ隣で気分悪そうに、白目を剥いている。どうしよう。すると、


「アマテラスちゃん、でしょ」


と、そんな照子の悩みなどまるで関係ないように、あっさりとその名を言ってしまった。しかも何故か常世が。


「正確に言うと天照大御神(あまてらすおおみかみ)様、だねぇ」


 常世はなんのためらいもなく、出会ったばかりな筈の天照の名を口に出す。


「ど、どうして天照のこと……?」

「僕は重造(じゅうぞう)の同僚であり、天照の同僚でもあるからね」


 にこにこと話すこの男の言葉が、照子には何を言ってるのか、まったく伝わって来なかった。同僚も何も、天照は働いてもないし、というかその前に神様だし。


 混乱する照子の横で、天照がダルそうに頭を持ち上げた。


「隠す必要も考える必要もないよ、テル子……こいつこんな格好してるけど私と同じれっきとした、天津神(あまつかみ)だから」


 天照の言った言葉すら頭の中でただぐるぐると無意味に回るだけで、きちんと理解するまでに十秒はかかった。そしてしっかり意味を把握できた時には驚きすぎて、ただただ目を丸くするだけだった。


「常世さん……あなた神様なの?!」

「ピンポーン」


 常世は整ったきれいな歯を見せるようにして、嬉しそうにもっと笑った。

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