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あめのちはれ。  作者: 小鹿野 三子
眼鏡と金髪?
13/23

体調不良?

次の週も、暇さえあれば照子と天照は図書館に通って神々のことを調べた。神話についてはそれなりに覚えてきたが、実際の神達を見つけられるような発見はなかった。


「図書館に通うより、神様たちに(ゆかり)のある場所に行ってみるとかしたほうがいい気がするんだけど……」

「いいわねそれ。全国が縁の地だけど」

「そうきます? ムリ」


 何をするにも時間と金が絡まってくるものだ。現実はそう、甘くない。


「宝くじ当たんないかな」

「だから現実はそう甘くないんだって。少なくとも……人間のテル子には……」

「じゃあ神様のあんたが買ってきてよ。人生好き勝手押し通してきた天照様になら宝くじの一等や二等余裕で取れそうよねー」

「ふっ……他力本願も……いいところねぇ……」


 照子の皮肉に覇気なく返した天照は、直後、ふらりと本棚にもたれ掛り、ズルズルと床にへたってしまった。


「ちょっと、どうしたの? 顔真っ青じゃない!」

「なんか……なんか胸とかお腹とか…背中とか……ぞわぞわす……うっぷ」

「なに、風邪? 貧血? 食あたり? 二日酔い?? 大丈夫?!」

「さ さすらないでやばい はく」


 ごめん、と照子が天照の背をさする手を止めると、騒ぎに気付いた眼鏡と金髪の若い男二人が駆けつけてきた。


「どうしました?」


 眼鏡の方の男がそう訊ねた瞬間、天照は我慢しきれず、テル子ごめん! と言って、空を掻っ切るような速さで館内から飛び去ってしまった。


「ちょ、アマテ……」


 天照の名を呼びかけて、ハッと口に手を押し当てた。なんとまずいタイミングで人が駆けつけてしまったものだ。

宙を飛ぶとき、天照は照子以外の人には見えなくなる。この二人の男は、天照が床にへたり込んでいるところをしっかり見ていて、天照が飛び出した瞬間――消えてしまった瞬間も目撃している。


このことがこの二人の口からマスコミ達に流出されれば、毎日家の前や登下校中には記者達からの質問攻めにあい、謎の超常現象シリーズに無理やり出され、テレビ、新聞、ラジオ、週刊誌各種情報番組にも毎日飽きることなく取り上げられ、周りの人にも被害が及び、友達はいなくなり、家族もストレスで全員鬱になり、きっと最後には一家心中……。


 そんなことがたった数秒もしない間に、照子の頭の中を走馬灯のように駆け巡った。


「うちには……小さな弟がいるんです……あんたたち親父さんお袋さんには申し訳ねえが、これを見られちゃあ道はただひとつ……」

「俺、ちょっと追って様子見てきますね」

「えっ」


 眼鏡の男は天照のあとを追うように、迷うことなく館内を出て行った。

他に利用客はなく、館内には照子と金髪の男だけになった。

照子が挙動不審な態度で金髪の男の顔を窺えば、男は何故か終始おだやかで、しかしどこか困っていて、尚且つ笑いをこらえるような表情をしていることに気が付いた。


「ちょっとやりすぎたかなぁ」


 なにやら意味深な言葉をつぶやき、金髪男は近くのテーブル席に腰かけた。


 二人には天照が見える?

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