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あめのちはれ。  作者: 小鹿野 三子
眼鏡と金髪?
12/23

食事

 夕飯の席に天照はいない。腹の減らない神々の多くは、食事と言うのは暇つぶし程度に、食べたいものが楽しむだけのお遊びだという。つまり、基本的に食べる必要が無いらしい。

 美味しいものを食べることは生き物にとって最大の幸福の一つである事は違いない。しかし神は今、食べることよりも現代を学びたい盛りらしく、〈漫画〉を読んだり〈アニメ〉を見たり〈ゲーム〉や〈ネットサーフィン〉をしたりで忙しいようだ。先程の図書館では●ラック・ジャックを読んでいた。流石は日本の神。現代の日本のサブカルチャーにどっぷりとハマっている。


――そのうち天岩戸(あめのいわと)の時みたいに引きこもりになったりしなきゃいいんだけど……


 そう思いながら、照子は他の皿には目もくれず、唐揚げだけをおかずにツヤツヤで真っ白いホクホクのご飯をほうばっていた。そしてふと、隣で食べている弟が何かのトロフィーを大事そうに抱えていることに気が付いた。


(ゆう)たん、それなあに?」

「おじ――――――いちゃん!」

「え? これおじいちゃんなの?」

「今日、将棋の地区大会に参加して親父が優勝して貰ってきたんだよ」


 と、横から唐揚げ以外のおかずを食べる父。

 お茶を啜る祖父は、まあ、お遊び程度にな…、と呟き、照子と同じくらいぱくぱくと唐揚げを食べ進めていた。


「すごーい! いいなー私も参加したかったー」

「ふむ、光治(こうじ)よりも照子を連れて行った方が断然よかったかもな」

「うそ、パパも出場したの?」

「え? うん、まあ出たけど、え? うそってなに?」

「もちろん初戦敗退だけどね~」


 と、まだ台所で作業中の母の声。食後のデザートを作っているようだ。


「親父めぇ……ママめぇ……」


 苦渋に満ちた悪魔のような酷い顔で、野菜をひたすら食べ続ける父は仕返しにと、母用に小分けしてある唐揚げの一つにマヨネーズとソース、青のりと鰹節をかけてご丁寧に爪楊枝を刺し、たこ焼き風にしていた。

 嫌がらせのつもりでやったのだが、見た目も味も、母には意外にも好評で仕返しはあっさり失敗した。

 母は日本中の奥様ユーザーから人気のブロガーなのだが、その日の記事にその写真がアップされていたのは言うまでもない。


「ねぇ、そう言えばおじいちゃんも雨男じゃなかったっけ」

「いかにも」

「でも今日いい天気だったよね? なんでだろ」

「もう雨男卒業したんじゃない? もしくは年だから、嬉しいとか感じなくなったとか」

「馬鹿者。儂くらいになると私情の揺れ如きで雨なんぞ降らんよ」

「は! なるほど、そういう言い方もあるのか! いやー羨ましいなぁ! あっはっはァ」

「パパわざとらしい」


 そんな父は今月いっぱい有給休暇をとった後、再来月からまた3ヶ月の海外遠征である。父曰く、海外でも雨男の力は発揮するらしい。

そう、父は乾燥地帯に赴き、その異能を役立てている。祖父に皮肉を言いつつも、彼はその呪いを大切にしている。


――この雨の呪い、私はいつになったら卒業出来るんだろう



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