親兄弟の話
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伊邪那岐と伊邪那美は最初の夫婦である。愛し合い、沢山の国や神を産んでいった。
ある時、火の神ヒノカグツチを産んだ時、彼の火によってイザナミは大火傷を負って亡くなってしまう。
悲しみに明け暮れた夫イザナギはヒノカグツチを斬り殺した後、イザナミのいる黄泉の国へ向かった。
黄泉の国=死者の国。
そして黄泉の国のイザナミに、
「まだ私たちは国を作りきれてないから、もとの世界に帰ろう」
と言ったが、残念なことにイザナミはすでに黄泉の国の食べ物を食べてしまっていたのでこの国を出られないと言う。
「いちおう黄泉の国の神ヨモツカミに相談しに行ってみますから少し待っててください。その間は決して私の姿をみないでくださいね」とイザナミはイザナギに言いつけた。
しかし、イザナギは待ちきれず、イザナミのもとへ行って彼女の姿を見てしまった。そこにいたイザナミの姿のおぞましい事。肌はただれきって腐り、うじ虫が大量にわいて悪しき神がまとわりついていた。
イザナミは「よくも私に恥をかかせましたね」といって、怒り狂い逃げ出すイザナギを追い回した。
黄泉平坂にさしかかったところで、イザナギはイザナミとの間に巨大な岩を落として道を塞いだ。
するとイザナミは「こうなったら貴方の国の人々を毎日千人ずつ殺す事に致しますわ」といい、イザナギは「ではわたしは、毎日千五百人ずつ人々に子を生ませることにしよう」と返した。
こうして二人は永遠の決別を果たした…。
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愛する人を生き返らせようとするなんて神さまも人間くさい所があるのね、としみじみ思ったが、そういえばこの夫婦もこの世界に降臨しているかもしれないというではないか。
天照は彼らを捜して、あわよくば全員を集めてパーティー的な事をしようとしている。つまり2人はこの世界で、高確率で再会するはめになる筈だ。
よく考えてみて、それは大丈夫なのだろうか。イザナミの姿はどうなっているのだろう? 集まった途端、ギクシャクというか大変恐ろしい事になるのではないだろうか……?
「……いいや。私は関係ない、そうだ私は関係ない」
考えた所で結局はどうにもならないので照子は想像するのを止め、物語の続きをメモし始めた。
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黄泉から帰ってきたイザナギは、黄泉の国の空気は穢れとし、川で禊をした。
まず左目を洗うと、そこから天照大御神が生まれた。
次に右目。そこからは月読命が。
そして鼻を洗ったら須佐之男命が生まれた。
その三柱を三貴子と呼ぶ。
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「なにそれすごい!」
と感嘆し、うっかり叫んでしまい慌てて口を押さえた。かなり響いたが、幸いにも周りには少ししか客が居なく、大学生くらいの男性に微笑まれた/(苦笑いされた?)だけだったので「すみませーん…あはは」で済み、酷い羞恥プレイは免れた。
「なに騒いでるの?」
本棚の陰からひょこっと顔を出して囁いた天照に照子は「天照大御神って凄いんだなぁって思って。それだけ」と返した。そんな叫ばれる程だったかなぁー? と首を傾げる本人。
そして照子は時計を見て、そろそろ帰ろうか、と付け足す。夕方の時間も延びたが、腹が減っては戦も古事記の勉強も出来ない。
この分かり易い本は借りていくことになった。