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第5話

「おっ〜す!百合亜!」


「お、おっス、香・・・・・・なんかあったの?」


今までにないほど元気な香の気迫に押されながら百合亜はたずねた。


「何があったもなかったもないじゃん!まさか百合亜、ニュース見てないの?」


「ニュースなんで見るもんじゃないって、香、自分で言ってたじゃない・・・・・・・見てないけど」


「え〜、昨日あんなことがあったのに?」


百合亜は香の言う「あんなこと」が分からず、困惑の表情を浮かべた。

その時、下駄箱で立ち話をしていた二人の間に銀哉が入り込んできた。


「二人とも〜!聞いた?」


「聞いた聞いた!銀哉、信じられないよ!百合亜、全く知らないの!」


香が銀哉にまくしたてた。


「せっかくのビッグニュースなのに?」


「そうそう!怪盗の事件、また出たんでしょ!」


あぁ、あの謎の怪盗の事か。百合亜はぼんやり考えた。ニュース見ること、ちっとも考えなかった。


「・・・・・・え?怪盗?」


「え?銀哉、それで走ってきたんじゃないの?新聞鞄に放り込んでるし」


何か、二人の話に食い違いが生じた様子である。


「今日は寝坊したから読まずに電車ぎりぎりセーフだったんだぜ?」


「怪盗は?」


「いや、それよりもビッグニュースが」


「怪盗は?」


「・・・・・・はい」


香の気迫に押された銀哉はしぶしぶ鞄から新聞を取り出した。

教室に向かいながら、三人は新聞を読みふけった。


『百合の花の怪盗リリー、また現れる。昨日のリーフ邸での盗難事件に次ぎ、今度はゴルゴディーム邸でも先祖代々の家宝が盗まれた。盗まれたのは、全ての美の象徴と言われるブラックダイヤモンド。リーフ邸と同じく、部屋の中には白い百合の花びらがあちこちに散らばり、昨日と同じ内容のカードがそれに混じって添えられていたという・・・・・』


「いいねぇ、怪盗リリー!ぴったりの名前じゃない」


完全に怪盗ファンかい・・・・・・内心呆れながら、百合亜も少しだが、その怪盗に憧れを感じていた。

同じ、名前の中に「百合」の名を持つ怪盗。完璧な犯罪。いや、犯罪者に憧れを持ちたくないのだが、それでもその怪盗には素晴らしい魅力があった。


「会って見たいね・・・・・・」


ぼそりと呟いた百合亜の言葉に香は大げさに首を横に振った。


「駄目駄目!リリー様には会ってはいけないわ!」


「はい?」


リリー様・・・・・・?


「私はずっと会わずにいるつもりよ。たとえ捕まえられようとも、彼女はずっと私の憧れだもの!」


「おいおい、そんな妄想になんて耽ってないで、こっちの話も聞けよ」


キラキラ瞳を輝かせている香をよそに、銀哉はいった。


「ああそうでしたね!で、何?」


いっぺんに不機嫌になった香は銀哉を睨んで聞いた。


「昨日さ、俺達、部活動あったじゃん?」


「あぁ、あったね」


つまらなそうに香は言った。


「その時さ、夢宮が滅茶苦茶凄いんだよ!先輩達追い抜いて、二百メートル先の的の中央に矢を当てたんだぜ!」


いつも、何処から取り出しているのか分からないココアを飲んでいた香は飲んだ物を噴出しそうになり、それを慌てて押さえようとして、喉を詰まらせてしまった。百合亜と銀哉は慌てて香の背中を叩く。


「あー、ありがとう・・・・・・で、銀哉、それ、マジ?」


「まじまじ!こんなほら吹く馬鹿が世界探して何処にいるんだよ!」


阿呆なら此処にいる。


「・・・・・・でもさ、夢宮君、そんなに凄いんだ。何処で習ったんだろう?」


「俺達も聞いたんだ!それでさ、夢宮の奴、なんていったと思う?家で爺に鍛えられたって言うんだぜ!信じられるか?」


お、お祖父さん?静貴の家は鎌倉時代の武士の家系?


「ま、まあ、なんだかんだで凄いものが二つも現れたってことだね」


百合亜は適当に話をまとめると、自分の席につき、机に置いた鞄の上にぐったりとなった。

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