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第2話

「いったぁ・・・・・」


百合亜は腰を抑えながら立ち上がった。そして、突進してきた少年を睨んだ。


「銀哉。校則違反で現行犯逮捕」


「校則に違反しても逮捕されないもんねーっ」


ぺろりと少年は赤い舌を見せて起き上がった。

彼の名は、梶野銀哉。百合亜の幼馴染だ。


「百合亜、大丈夫?」


「大ジョブよ。へーキ、平気!」


別の扉に近い席の香が百合亜の所へ走ってきた。そして、銀哉に大げさな注意をする。


「梶野、そんな年で校則違反してると、社会人になったらとんだ大犯罪者になるじゃない。反省しなさい!反省の言葉は?嘘の言葉じゃ駄目よ?嘘ついたら大泥棒になるでしょうが!」


まるで小さい子供に言い聞かせるような香の説教で本当に子供のように(実際まだ成人していないのだが)縮こまっていた銀哉は、最後の言葉を聞いた途端、何か急に目覚めたように声を張り上げた。


「そうだ!泥棒!ビックニュースなんだよ、本当に!ほらほら、見てみろよ!」


銀哉は、補助鞄から新聞を取り出し、広げて見せた。何故学校に新聞を持ち出してくるか。図書館にストックはある。だが、彼は最新マスコミ情報を常にチェックする変わり者なので、ストックなんか役立たずなのである。

百合亜と香は新聞の文面を覗き込む。


「ふーん、大臣が多額の借金を友人から借りて、友人がそいつを脅して自分を大臣に上がらせたって言う異例の事件ねぇ」


香が興味なさげに見出しを読み上げる。「え?」といった銀哉は文面を覗き込み、「違う違う、これじゃなくて」と大きな新聞の紙を何枚もめくった。

別に紙の隅っこをぱらぱらめくってみて開けばいいものを。百合亜は横目で一生懸命文面をめくる銀哉を見ていた。

いつから持っていたのか、香は自動販売機で買ったココアをストローからぐいぐい飲んでいた。好物のココアに涎を垂らしそうな百合亜は「あった!」の銀哉の歓喜の声でちらりと文面を見た。


「『豪邸の家宝盗まれる。手がかりは百合の花びらと一枚のカードのみ』。『今日早朝、新宿区のリーフ邸で今は亡きミスターリーフの元妻、リーフ未亡人が主人の部屋の金庫の中に厳重に保管されていた家宝が噴出されているのを発見し、すぐさま百十番通報。警察が駆けつけてリーフ邸をくまなく捜索して見た所、現場に残された百合の花びらと一枚のカードしか収穫はなかった。現場の床に散らばった白い花びらと、金庫の扉に挟まっていた一枚のカード。未亡人も、このカードが扉に挟まっていたのを見て金庫を開けたのだという。カードに綴られた内容は、[二つの百合が散る夜に、一輪の薔薇が咲く]という、極めて謎に包まれた言葉である。警察は、単なる捜査の撹乱を起こすためのものとしてこれらを処理し、犯人は窓から忍び寄ってきたものと判断した』。どう?随分興味深くない?」


今まで銀哉のマスコミ情報話には上の空で聞いていた百合亜と香も、この話は熱心に聞き入っていた。いや、教室中がこの話に聞き入っている。


「凄いよな!今の時代になんかこう、謎めいたこんなカード送って来る奴なんてさ!いや、送るとは言わないか・・・・・・でもなんか、怪盗みたいじゃん?怪盗ルパン!そしてそれを捜し求める名探偵シャーロック・ホームズみたいな人がいないかな〜?」


銀哉は二人を交互に眺める。


「うん・・・・・・・なんか、滅茶苦茶凄い。しかもその怪盗ってさ、部屋に百合の花びら散らばせる余裕まであったってことでしょ?それって凄くない?ねえ、百合亜もそう思うでしょ?」


「ふぇ!?え、いや、あの、うん、そう、そうだよね!」


香の意気込みに乗せられて、百合亜はごまかし笑いをした。

その時、ちょうど本鈴がなった。そこで百合亜はあることに気付いた。


「銀哉・・・・・・あんた、予鈴遅刻だ」


「え?嘘?もう予鈴鳴ってた!?」


「出席簿にそう付けとくわ。でもこれで銀哉、百回目の予鈴遅刻ね〜。記録に残らないとはいえ、これじゃ赤坂も黙ってるわけないわよね〜」


赤坂とは、百合亜達の担任である。そして、今日は百合亜が週番の日であった。


「うー・・・・・・百合亜、堪忍!」


「どうしよっかな〜?」


「えー・・・・・・帰りに百合亜の大好物なバナナパフェ一杯おごるから!」


「う〜ん」


「あーもう・・・・・・それにプラスアルファでストロベリーキャラメルコーン!」


「オーライ」


果たしてこんな事で週番の仕事は務まるのか。それは誰も知らない。


「まぁでも、一時間目の準備しなきゃさすがにばれるよ〜」


嫌味ったらしい香の一言で銀哉はあたふたと自分の机に走っていった。

百合亜と香はくすくす笑いあいながら、自分の席に戻った。

ちょうどその時、教室に赤坂が入ってきた。

再構成しました。

1ページ1ページの文字数を600ぐらい→1500前後に増やしましたのでまた最初からです。

1日1ページは更新したいと思うので宜しくお願いします。

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