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第四話、子育て上手は誰でしょうか?

その1、景虎ベビィの場合




「えっと、えっと……と、虎ちゃん‼泣くのは止めましょう‼お、お母さんにわかるように……」


必死に泣きじゃくる息子を泣き止ませようと、玉樹ぎょくじゅは告げる。


うぁぁぁーん!


激しく泣く息子の景虎かげとらに、玉樹はおろおろとし、最後に、


「わ、わかりませんの~‼虎ちゃん‼何で泣くんですかぁぁ……ふあわわわーん‼」


横で泣き出す玉樹……。

ちょうど戻ってきた元直げんちょくが慌てて駆け込むと、激しく泣く玉樹とその母をきょとんと見上げる泣き止んだ息子……。


「玉樹。玉樹。景虎は多分、お腹がすいたのか、眠たいけれど眠れないよ~ってぐずってるんだよ。玉樹。だっこして、手足をさわってご覧?」


夫に言われた通り、だっこして確認すると手足が熱い。


「ね、熱ですか‼」

「違う違う。子供は眠くなると手足が温かくなるんだよ。大人も、寝付きが悪いときには、足湯をして血行を良くして眠ったりするとすぐ眠れるだろう?」

「あ、ゲンゲン先輩の足湯グッズ‼ミカンの皮を干して、乾燥したら一掴み、網の袋にいれて……煮出したお湯も入れてた~‼」

「ミカンの皮は陳皮ちんぴと言って、漢方薬の一種だよ。体を温める効果があると言われているんだ」


妻から息子を抱き取り、オムツが汚れているのを確認した元直は、手早くおむつを変えると、


「ほら、景虎。お父さんもお母さんもいるからねんねしなさい。はい、ねんね」


そっとトントンと背中を叩くと、すぐにくぅぅ……と眠ってしまう。


「……ゲンゲン先輩にまた負けました‼次こそ‼」

「いや、玉樹?子育てに勝負はないから、景虎は甘えん坊だから、ママである玉樹にだっこしてって甘えてるんだよ。だから、今みたいな状況になったらだっこしてあやしてあげて」

「そ、そうでした‼頑張ります‼」




その2、熊斗ゆうとベビィの場合




「熊斗くん?ねんねしないの?」


母である咲夜さくやはむむーとした顔で、寝室のすみにある夫婦のテディベア製作の場所で制作中の父親を睨み付けていると言うか、見つめている。


「どうした?熊斗。だっこをしようか?」


景資かげすけとなり姿を消した少年は、ものすごく陰険兄二人……子桓しかん子建しけんに嫌がらせを受けていたし、両親は忙しく、構っていたのは……。


「ほら、熊斗。明日は久しぶりに熊斗の大好きなしょうお兄ちゃんと、月季げつきお姉ちゃんが戻ってくるよ。今日はママのお歌でねんねして、明日はお兄ちゃんたちと遊ぼうね?」

「……うにゅ……?」

「ほら、ママのお歌だよ」


はるかは、笑いながら息子の手を握り、よしよしとあやす。

母親の歌と、父の温もりに大きくあくびをした熊斗が、さほど時をおかず寝入ってしまった。


「私ではダメなんでしょうか……」


咲夜の声に、遼は、息子を寝かせた横に咲夜を横たえ、自分も、ある程度片付けると、反対側に横になる。


「咲夜がダメなんじゃなくて、熊斗は寂しがり屋なんだよ。きっと、ママはぼくのこと大好きだけどパパは嫌いなんだ……って拗ねちゃったんだよ」

「えぇ?ま、まだこんなに小さいのに?」

「あれ?咲夜は旦那さんが産婦人科兼小児科医だって忘れちゃった?先から、ベアのことばかり構っていたからね。熊斗はむーってしかめっ面が多いねぇ?せっかくお母さんに似たのに」


息子のポッチャリした頬をチョンチョンとつつく。


「ウニャ……」


呟いたものの、そのまますぴーっと眠りについた熊斗である。

全体的な容姿は、母親に似たが、長身でがっしりとした、しかも美男子の父親の血も引いている。

将来が楽しみだと、特に遼の両親が、遼の息子を喜んだのだった。




その3、百合ゆりベビィ&愛生あきベビィとその兄、実明さねあきの場合




パパの実綱さねつなは、ママの采明あやめの家に婿養子に入った。

実明には良くわからないが、ママの弟の孔明こうめいによると、


「実綱兄さんが、柚須浦ゆすうらの家を継いでくれるからありがたいよ」

「ゆすうらのおうち?孔明お兄ちゃんは?」

「ん?本家と言うか、兄さんと姉さんが上で、僕は二人のお手伝いをするんだよ」


実明は、考える。

自分もお手伝いがしたい。

ママとパパのお手伝いをして誉めてもらう。

そう考えて、妹の面倒を見ていたが、頑張っても、泣いている妹たちをますます泣かせてしまった上に、寝ていた愛生がぎゃぁぁぁ‼と大泣きする。


お手伝いがしたいのに……落ち込む息子の姿に、実綱は抱き上げて、


「どうした?実明」

「……パパとママのお手伝いしたくて、でも、泣いちゃった……」

「うーん……」


実綱は息子を抱いたままあぐらをかき、


「じゃぁ、実明、百合にいいこいいこしてあげなさい」

「う、ん‼百合、いいこいいこ。愛生、いいこいいこ」

「よーし。偉い!優しいな。実明は。本当に実明は優しいいいお兄ちゃんだ。その前に、パパとママの子」


ようやく再会した、共に過ごせるようになった息子との時間は貴重である。

もうすぐ自我が芽生え、


『パパと一緒はいや‼』


と言う時期が来るのだろうが、それこそ成長の証。

だから囁く。


「実明はパパとママの大事な息子だよ。百合に愛生もいるけれど、百合たちは小さいから泣いてるときにはパパたちがだっこしたりしてよしよしするけど、ちゃーんとパパたちは実明が大好きだよ?わかる?」

「うん‼実明、パパとママ大好きだもん‼」

「実明は賢いなぁ……ママに似てるなぁ。でも、キリッと眉はパパににてる」

「本当?えへへ‼僕はパパとママ大好き‼」


にこにこ笑う様は、本当に采明に似ている。


「じゃぁ、二人もねんねしたし、実明もねんねだな」

「パパ~‼絵本読んで‼絵本‼」

「絵本?」


実明が持ってきた『絵本』に、実綱は青ざめる。

こ、これは……。


「え、えっとー、実明?パパはね?今度、日本に行くから、電車の図鑑が見てみたいなぁ?それか、車の本はある?」


実明の好きなものを示すと、嬉しそうに、そちらを取りに行く。

その隙に、その『18才未満お断りの本』を隠し、電車の図鑑を見て楽しんだのだった。


そして、声楽のレッスンを終えて采明が帰ってきたときに、


「実明が……持ってきたのだが……」


と本を示した夫を見上げ、当然夫がこういう本を読まないのは理解していたため、


「お母さんと、芙蓉ふようお義母様に、お伝えしておきますわ」


にっこり笑う。


「わ、私が、持っていたと言うことはないから‼それに、か、借りたりもないから‼」

「それは分かってますわ。それに旦那様なら『……紀行文とか、芸術文化の図鑑を読破したい。図書館は本当に知識の宝庫だな‼』って、実明連れて図書館に良く行っているではないですか」

「……采明に間違われて、嫌われたらどうしようと思った……」


と本気で半泣きになった実綱である。




数日後、兄……実綱の表向きの母親違いの兄二人が、母の芙蓉とその妹の木槿むくげと共に、首相である父親連れてくると、目の前でボッコボコに締め上げた。


「おい、こら‼まだちっこい実明になに読ませようとした‼」


子脩ししゅうは父をぶら下げ、子楓しふうは、


「へぇーそうなんだ、父上は、この程度の本しか孫に与えられない、ジジイなんですね?」

「ホンットに、ホンットに、サイッテー‼行くわよ‼」

「ええ、姉さん‼」


と、本気に、サンドバッグさながらのぼこぼこの状態。

で、子楓と子脩が、


「実明?おじちゃんが奥さんの明珠めいしゅと探したおもちゃと絵本があるんだ?一緒に遊ぼうか?」

「あ、そうだった。実綱。何かな?親父の親父……ご先祖が集めてた古い書画があって、子楓も本物か鑑定したいと言っているんだ。今度見に来てくれないか?あぁ、帰るのはいつでもいい。ふたごに実明は大変だろう。よろしく頼む」

「はい、わかりました。えっと、兄さんとお呼びしますね」


その言葉に、


「……黒くない弟に言われると、何かうれしいわ、俺」


の言葉。


「はぁ?えっと、黒い……悪いことを考える事はありますが、子供たちや家族、平穏に生きていきたい人々のためにならそうします。それに、兄上たちは、ご自分が考えられているより黒くないですよ……おりゃぁぁ‼采明に子供たちを楯にするな‼くそ親父‼」


と、隠していたナイフを投げる。

その正確さに父親に兄二人はぞっとし、芙蓉と木槿が、


「良くやったわ‼実綱くん‼さすがはお母さんの子‼」

「本当に‼では‼」


と、父、孟徳もうとくはボッコボコにされ、二度と幼い孫に変なものを送りつけないようにと約束させられたのだった。

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