4 真っ二つだね
「とりあえず説明は移動したながらでいいよね」
少女が人差し指で円を描くように空中をなぞるとまるできりぬけたかのように真っ暗な空間に穴が空いた。
なんだいまの!!
俺が驚いているうちにみるみる穴は大きくなり人が通れるくらいの大きさになった。
少女は穴と空間の境目?に手をかけると、
「とりあえずここ通ってからね!
あ、言い忘れてたけどあたしはシロナっていうんだ」
よろしく、と付け加えると穴の向こうに上半身を乗り出した。
シロナっていうのか…髪の毛も真っ白だしそのまんまだな。
「ってちょっと待て!おれ縛られてるからあがれねーんだけど!?」
するとシロナが登り終えた穴から顔を出した。
「あ、そうだった!
ごめんごめん」
パチンパチンパチン、と指を3回鳴らした。
するとガムテープがまるでウイルスに感染したデータが消えていくようになくなり、自由に動けるようになった。
や、やべぇ。
「ほらほら早くー、もう動けるでしょ?」
遅いといわんばかりに目を細めるシロナ。
穴までは俺から3mくらい離れている。
このふわふわした状態からどうやって向こうまで行けばいいのか…。
試しに腕をバタバタさせてみるも、空を切るようでまったく進んでいる気がしない。
「あーもうなにやってんの?普通に歩けばいいでしょ!」
「はぁ…?
ふわふわしてんのにどうやって歩くんだよ!
ていうか踏むとこ…あるし」
シロナの声につられて足踏みをするとなぜかふんわりと足を踏みしめることができた。
「なんだよこれ、さっきまでここ俺が浮いてたのに…なんもなかったろ」
「んー?
いやあたしはよく知らないんだけど、まぁ意識的なものじゃない?
確かそんなんだよ」
「ふわふわしすぎだろ…」
とりあえず穴の前まで行くとシロナに合わせたサイズだからだろうか、俺には少し小さいことがわかった。
「せま…!」
苦労して通り抜けようとしているのをみているとシロナがボソッとひとこと、
「…今ゲート閉めたらあんた真っ二つだね」
「はぁ⁉︎」
きゃはははと笑い転げるシロナ。
こ、この野郎…!
「大丈夫だってーそんなめんどくさいことしないし!
ていうかまだ?」
「今通り抜けたとこだ…」
俺がなんとか穴を抜けたのを見るとシロナは手を穴にかざし開いて閉じるようなしぐさをした。
すると穴はスッと閉じてまるでなにもなかったように消えてしまった。
「…」
「!
な、なによガン見しすぎー」
何故だか微妙に引きつったような顔で見てくる。
やめてくれその顔…。
「さっきから使ってるその…なんだ、魔法みたいなの。
なんだそれ」
「え?…いや、だから移動しながら説明するって言ったでしょ!
ほら早く立ってー」
座ったままの俺に左手を差し出した。
「あーだるい」