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悪魔嬢  作者: 紫煙
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プロローグ

初めての小説モドキであり、初めての投稿です。

今までは読むこと一辺倒でしたが、書く事にも興味が出てきたので投稿してみました。


ほとんど思いつくまま、経験技術零、拙い表現や文章だと思いますが、まったりと書いていこうと思います。

 江月永夜、二十五歳、目論見市在住、フリーター、彼女――当然いない 


 

 フリーターだからといってアルバイトに忙殺されながらも夢を目指して何かをしている――という訳ではない。

 まあ、一応大学も出てる、それなりにいろいろと興味の沸いたものには手を出してきた。

 漫画家、作家、ネット関係、フィギュア制作などなど、途中で諦めたものは枚挙に遑がない。

 あれもこれもと食指を動かすと結局どれも身につかない。

 結果、今現在の俺である。


 うおっと、思考停止っと。

 これ以上考えるとそこはかとなく悲しくなってくる。

 現在、徒歩でバイトからの帰宅中。

 この帰り道が曲者なのだ、雑踏と静寂の狭間というか、ちょうどいいのだ、物思いにふけるのに――カフェでの読書や勉強に近いものがある。集中できる分、ある意味歩きスマホより危険だと思う。

 

 そうだ、考え事といえばもう一つ関心事がある。

 最近、目論見市で若者が男女問わず突然消えるという事件が発生している。

 消えた人間に共通しているのは十代だということ以外まったく関連性はない。俺は十代ではない。そこは安心しよう。

 この街は海に面している。もしかして北の方達による拉致・・・・・・いやそれはないだろう。

 世が世ならあり得る話だがこの時代で可能性は低そうだ。


 そもそも人が一人消えるというのは、それなりに、周りの者にとって大事である。消えた者の親類縁者は大騒ぎするのが普通の反応だろう。

 俺が消えたら誰か心配してくれるのだろうか――妹くらいかなあ。

 

 しかし、不謹慎だがこの事件、興味がある。中二心をくすぐられるのだ。

 謎の秘密組織、某国の陰謀、日本の秘密計画、などと中二的に考えてしまう。が、そんなものファンタジーだ。まさかな。

 

 などと考えながら、歩き続け、街灯に照らされて艶めいてみえる新しいアスファルトの歩道から、明かりが少ない深閑とした公園沿いの裏路地に歩を進める。近道なのだ。

  

「はあ、今日も疲れたなって――えっ」


 体中の血液や内臓が余すところ無く全て、骨さえも片側に押し込められるような感覚。

 瞬間、凄まじいスピードで引っ張られ、気がつくとすぐ傍の公園のドーム型遊具の中にいた。


 目の前の物体と状況を確認する。

 道からこの遊具まで十メートル程、一瞬でここまで移動したのか。

 ウサイン・ボルトでも無理だっつーの。


 そして目の前、物体、否、人間に見える。

 年の頃十四から十六歳、身長は俺より低い、性別は多分女。

 肌は触れば手の痕が付いてしまいそうなくらい透き通った白さ、眼はほんのりと紅い、髪は艶やかで腰の中程まで伸びていて、黒く黒々と黒い。


 右手で口を、左手で肩を押さえつけられている。

 反射的に抵抗しようと身をよじってみたが、まったくといって体が動かない。

 この矮躯の何処にこんな力があるのか。

 咄嗟に、あの事件が、頭をよぎる。失踪事件。


 女は口元に当てている掌を僅かに緩めた。 

「ぁ、あ、あの、ぼ、僕は十代じゃありませんっ。二十五歳フリーターです。ぅお金もありません」


 事前に失踪事件のことを考えていたせいもあるのだろう。

 自然、そんな言葉が口を衝いた。

 

 女は壊れた蛇口を押さえるように俺の口を掌で塞いだ。


「お前、何歳だ――つまり、年齢のこと」


 今この邂逅において分かった事が一つある。

 こいつは人の話をまったく聞いていなかった。


 女は俺の目を一瞥し、口元に当てた掌の力を緩めた

 

「この世に生を受けて、二十五年と五ヶ月です・・・・・・」

「ふむ、二十五歳か。なるほど、だからか、死んだ魚の目をしている」

 それは俺だけであって、二十五歳ってのは関係ないような。全二十五歳を敵に回したな。

 

「まあいい、簡潔明瞭に話そう。私は今追われている。説明は後で、死ぬ訳ではない――いや死ぬのかな。フフフ」なんだかやばい気がする。

 俺は壊れた蛇口から吹き出る水のように、震えを抑え無理矢理に言葉を発した。

「あ、あの僕は地位もお金もないし物理的な力もありません」どんな言葉が適切か一瞬の内に様々思い浮かんだが、結局これである。


「黙れ。お前の選択肢は二つだ。私にその血を寄越して只死ぬか、意思も記憶もそのままに人外の道を歩むかだ。さて、急いで選んでくれるかな」


 ちょっと待て。とにかくだ。色々と無茶がある。

 確かに子供の頃、布団に食べられて吸収されるごっこや寝る前の妄想が得意でこれに近い事態を考えたりしたことはある。

 だからって漫画やアニメじゃないんだ。実際に起きてもらっては困る事態だ。

 血が必要な女の子とか何、ドラキュラ、サキュバス、ぬらりひょん。まったく分からん。


「あの、後者の方も血だかなんだかが必要なんですかね」

「ん、当然だ。早くして、追われていると言ったでしょう。今、この場、お前の血が、協力が必要なの」


 協力。 

「血をあげるって痛かったり、苦しかったりするんですか」

「はあ?なんだお前そっちの気があるのか。なるほど。けれど残念、痛くも苦しくもないよ」

 そっちの気は無い。

 少し、女子高生に靴下を履いたまま踏まれる妄想をするくらいだ。 

 

 なんだろう。こんな状況、俺にとっての非常事態。だけれど、なんだか嬉しい。

 只のフリーター生活でなんの目的も無く生きてきた。平均点以下の人間だと自分は思っている。

 久しく感じていなかった。必要だと。今この場限りでもきっと俺は重要だと。

 

 気がつくと俺は言っていた。


「じゃあ、後者の方で。人外の方でお願いします」

 

 人の外。人の世の常など無い、理無き者。


 はっきりと発音し答えた。

 人生で初めてだったかもしれない。学校で。バイト先で。今までしてきた生返事などではない。

 恐らく、これは俺だったから、色々と中途半端な俺だからだろう。

 まっとうな人生であれば此処でこんなにはっきりとした返事はできなかったと思う。

 きっかけ、非日常、違う道、そんなことを求めていたんだと思う。


 ややあって、女は上質な和紙をゆっくりと引き裂くように口元を緩め、微笑した。

 そこには可愛い八重歯。じゃない。

 小悪魔的な犬歯。じゃない。

 猫科の猛獣類のような牙。そう、牙である。


 その牙の様な犬歯で俺の首元に噛み付いた。

 チクリ、としたような気がした。見た目で想像してた程の痛みは無い。

 意識が遠のく、脈拍に合わせ、緩急をつけて体に電流が走るような感覚、鳥肌が立つ。

 幼い頃、大好きだった子の側に寄り添っている時のように、あるいは、悪戯がバレて両親や先生に名を呼ばれた時のように、心臓が早鐘を打つ。

 薄弱とした意識の中。

 薄暗い遊具の中。

 光が見えた。ちらり、ちらり、と遊具の中の暗闇を裂き、通り過ぎていく。

 音、駆ける音、声。

 

「おい、いたぞ。××××××」

 後半は聞き取れなかったし、俺はそこで意識を失った。

 


 








 

 

 

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