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ある日突然女の子になった僕の生活  作者: ひまじん
二学期の始まり、変化の始まり
98/103

美少女、文化祭に臨む②

書いたあとに考えました。

四年五年経ってるのに、登場人物の名前なんてわからないと。

ということで、ざっくりとした紹介を。。。

多川 良治 歩とは中学生からの友達。歩が男だったことを知っていて覚えている

吉川 東吾 同じクラスの友達。名字はキッカワ。

相沢 桜子 同じクラスの友達でよく一緒に遊ぶ

相沢 芳乃 桜子の姉。現役モデル

皆瀬 萌香 同じクラスの友達でよく一緒に遊ぶ

皆瀬 藍香 萌香の妹。衣装づくりが趣味らしい

矢崎 理恵子 歩のバイト先の先輩。良治のご近所さん

蒼井 直樹 海に遊びに行ったときに出会った一つ年上の男の子

佐倉 要 歩の弟。

第九十七話 美少女、文化祭に臨む②




 なんというタイミングで帰ってくるんだー! と一人嫌な汗をかいている僕。

 そんな僕をよそに、良治は蒼井君に接近する。


「あ、どうも。アユミの友人の多川です。えっと、先輩? ですよね?」


「俺は蒼井。別の学校だけど二年生だ。よろしく、多川君」


 やばいやばいと思ってたけど、意外と普通に会話している二人。

 っていうか、良治って一応先輩に敬語使うんだね! 滅多に上級生と話す機会なんてないし、良治のキャラ的に新鮮な感じだ。


「なるほど。君が佐倉さんの言ってた友人か……」


 蒼井君は僕の方をちらりと見た。

 目が合ってしまうと、僕の方がすこしびくりとする。彼はそんな僕を見て微笑むと、再び良治に話しかける。


「今は二人で宣伝中? 引き止めちゃったかな」


「ああ、アユミが疲れてたんで、ちょっと休憩してました」


「そうなんだねー。ところで……」


 蒼井君はそこまでで一旦言葉を切った。良治から眼をそらし、少し何かを考えていたようだが、すぐに良治に視線を合わす。


「……ところで、多川君は佐倉さんと仲いいんだね」


「そりゃ、中学時代からの友人ですからー。中学の頃のアユミって意外と交友関係少ない……というより俺くらいしか友達いなかったですし。家が近いのも相まって、一緒にいる時間結構長いですからねー」


「ちょ、ちょっと良治! 昔のことを言いふらさないでよ!」


 僕がぼっちだったことまで暴露しなくてもいいじゃん! どうせ良治くらいとしか遊んでませんでしたよ!


「そうなんだ……なるほどね」


 蒼井君はいつものように優しい目をしている。彼は何を思ったのだろうか。

 僕には心が読む力なんてないので、彼が良治に対して、そして良治と一緒にいる僕に対してどんな感情を生んだのかはわからない。



 ……良治と蒼井君は暫く和気藹々としゃべっていた。その間僕はほったらかしだったので、良治が買ってきてくれたオレンジジュースを飲んでいた。ちなみに果汁三十パーセント純粋仕立てなので甘くておいしい。

 良治は蒼井君と話しながら炭酸飲料を時々飲んでいる。


「おっと。佐倉さん、休憩時間取っちゃってゴメンね。俺も友達と少し文化祭を回ってくるよ」


 蒼井君の方が時計を見て、申し訳なさそうに頭を下げた。長く引き留めてしまったと思ったのだろう。


「じゃあね、佐倉さん。劇は絶対に見に行くよ。衣装とても似合ってるよ」


 そう言うと、蒼井君は友人たちと人ごみの中に消えていった。

 彼の姿が見えなくなると、僕はほっと息をつく。

 別に悪いことをしていたわけでもない。良治と付き合ってるわけでもないし、蒼井君と付き合ってるわけでもないから、浮気とか修羅場でもない。

 でもなぜか後ろめたさがあった。

 彼氏彼女とかいう事情ではなくても、彼を裏切っていると思ってしまったからだ。


「カッコいい人じゃん。あんな知り合いいたんだな……」


 そう言って良治は笑った。


「みんなで海に行った時に泊まった旅館の人なんだ」


「えっ!? じゃあ湯上りのアユミとか、水着のアユミを見ている!?」


「そ、そうだね」


「くっそー! なんて羨ましいんだ! 写真持ってないか聞くべきだったぜ!」


 大げさに頭を抱える良治。多分写真は持ってないとおもうよ。


「まさか、ひと夏のアバンチュールとか!?」


「そんなロマンスはないよ。時々ご飯食べたりはしたけど……」


「……マジ?」


 良治の顔が少し引き攣ったように見えた。

 僕は僕で、余計なことを言ってしまったことを後悔していた。なぜ、このタイミングで言ってしまったんだろう。

 いや、蒼井君とデートみたいなことをしたのは、まぎれもない事実だ。でも良治が誤解しちゃったら――。


「まさか、あの人と付き合ってる……とか?」


「そ、それはないけど……」


「じゃ、じゃあ、好きなのか?」


「嫌いではないよ」


 僕は少し言いよどんだ。「好きじゃない!」 と、咄嗟に否定することができなかった。蒼井君のことが嫌だとか、そういう気持ちはないんだ。

 

「そ、そうか……」


 それだけ言うと彼は、黙ってしまった。

 気まずい空気が流れている。何を言えばいいのかわからなかった。この場で僕が好きなのは良治だって言えてしまえば良かったのに。でもそれは余計に空気を気まずくさせるだけだ。良治にとっての僕は「友人」なのだから……。


「そろそろ、宣伝行くぞ」


 ふうと息をついて、良治は僕の手を取った。

 そしてそのまま、前に進みだす。僕は突然のことに驚いてしまう。手をつないでいるような状態になって、嬉しいやら恥ずかしいやらだ。


「えっ!? わ、良治引っ張らないで!?」


 ずんずん進んで行く良治にわたわたしながらついていく。


「急にどうしちゃったの!?」


 このままだと転んじゃうと思って、僕は良治の手を引っ張る。

 すると良治は「しまった」といわんばかりの顔をして、立ち止まった。


「悪い。なんか気が急いちゃったわ」


「もう。僕、歩くの遅いの知ってるでしょ」


「悪い悪い。これからはちゃんとお姫様をエスコートしますよ」


「なんだよそれー」


 正直な話、ずんずん先に行った良治は少し怖かった。

 僕が蒼井君の話をしたせい? それで良治が、「アユミは俺のものだー」なんて思ってくれてたら嬉しいんだけど……。

 僕は良治の顔をちらっと見る。既にいつもの良治に戻っていて、けらけらと笑っている。

 ……まあそんなことないってわかってるよ。

 良治がラブレターをもらった時に、僕が考えたのと似ているのかな。仲のいい友達が離れてしまうっていう喪失感のようなもの。僕が良治にとって、大切な友達であるなら、それはそれで嬉しいけど……。

 今はそれがちょっと辛い。


 だ、だめだだめだ! 劇も控えているのに、こんなテンションじゃ!

 僕はパンパンと顔を手ではたいて気合を入れなおす。良治は少し不思議そうな顔をしてたけど、必要なことなのだ! 今いるのが昇降口の前だったので、お客さんにもじろじろ見られてちょっと恥ずかしかったのは秘密だ。

 何はともあれ、うじうじするのは今日はおいて置かなきゃ! みんなと頑張ってきた劇を成功させることを考えないと。


「あれー? りょーじに佐倉ちゃん?」


 僕が気持ちを新たにしていると、後ろからまたしても呼びかけられた。

 後ろを振り返ると、他校の制服姿の矢崎さんが手を振っていた。


「あ、矢崎さん!」


「やっほー! 佐倉ちゃん。なになに? それが例の衣装? めっちゃ可愛いじゃん。写真撮っていい? いいよね? じゃあ、撮るよー」


 有無を言わさず僕にくっつき写真を撮りはじめる矢崎さん。バイトの時といい、ぐいぐい来るのが彼女の特徴だ。


「あ、りょーじは仕事してきていいよ。佐倉ちゃんは、あたしと美味しいもの食べに行こう?」


「おいおい、りえ姉ちゃん。またそのパターンで俺をのけ者にする流れかよ!」


「いやいやー。冗談よ! あたしは彼氏待ちだからねー、こっから動けないんだわ」


 なぬ!? と僕と良治は顔を見合わせる。


「矢崎さん、彼氏いたんです?」


「はっはっはー。実は夏の間にねー。だからこうして可愛い後輩の文化祭にかこつけてデートするために、昇降口で待ってるってわけ」


「りえ姉ちゃんの彼氏って、人間か?」


「りょーじ、蹴るよ?」


 驚いた。でも矢崎さんなら不思議でもなんでもないかな。

 バイト先ではいつも優しいし、僕と違って物怖じしないし話しやすい性格だし。ちょっと羨ましい。僕にもあんな積極性があったらなって思ってしまう。


「佐倉ちゃんだって、いくらでも彼氏作れるでしょー。そんなに可愛いんだから!」


「えっと……僕は……」


「まあいいわ! あたしが口出しすることじゃないしね! あと、りょーじ! 人はどんどん変わるんだからね。あたしもあんたも、佐倉ちゃんもね。それを忘れない事ね」


「な、なんだよ……」


「ふーん。ま、いいや。佐倉ちゃん泣かしたら、生卵ぶつけるからね。あ、彼氏からメッセきた。じゃ、またねー」


 僕の頭をポンと叩き、笑顔で手を振ると矢崎さんは颯爽と彼氏の元へと走って行った。

 まるで嵐のような人だなあ。


「矢崎さんって、いい人だよね。僕憧れちゃうな」


「え、マジで!? りえ姉ちゃんみたいになりたいの? やめてくれよ」


 良治は僕の言葉を聞いて苦笑いをした。良治にとっては、頭の上がらないお姉さんなんだよね。僕にとっては頼りになるバイトの先輩だ。

 あんな風に幸せそうに彼氏がいるって言えるようになりたいな。

 僕はそう思って良治の顔に目を遣る。


「でもそうだな。人は変わってくものだよな」


 僕の視線に気づいたのかはわからないけど、良治はぼそりと呟いた。

 良治にとっても、矢崎さん彼氏できちゃったニュースは何らかの影響を与えたようだ。そりゃ身近にいたお姉さんだし、当たり前の話か。




 昇降口で一通りビラをさばききると、僕らは一旦教室へ戻ることにした。

 クラスまでの廊下を歩いていると、前からクレープを持った萌香ちゃんと藍香ちゃん、それに桜子ちゃんと芳乃さんが歩いてくるのに出くわした。

 知り合いとの遭遇率が異常に高いです。いや、僕が劇の衣装で目立つせいか。


「あら、アユミさん。夏休み以来かしら?」


「こんにちは、芳乃さん」


「アユミちゃーん。衣装着てくれてありがとーっ!」


「藍香ちゃんもこんにちはー。衣装作ってくれてありがとね」


 相変わらず落ち着いた雰囲気の芳乃さんと、元気いっぱいな藍香ちゃんだ。

 

「ふふふー。あたしの作った衣装を着こなせるのは、アユミちゃんだけなんだよー! おねーちゃんが着ると、がっかりクオリティのギャグアニメみたいになっちゃうし」

 

「待って待って! なんで藍香は言わなくていいようなことを言っちゃうの!?」


 藍香ちゃんの口を塞ぐ萌香ちゃん。


「萌香とアユミちゃんとじゃ、しょうがないわ」


 そしてそんな萌香ちゃんを呆れた目で見ながら言う桜子ちゃん。


「アユミさん達も劇の宣伝はきりのいい感じになったのかしら?」


 芳乃さんが僕の頭をやさしく撫でて髪を整えてくれる。このさりげない優しさがお姉さんって感じがする。

 僕と良治は、そんな芳乃さんに頷く。


「そっかー。私たちもね、ビラ配り終わったんだー」


「そうそう。それでお昼までは文化祭を見て回ろうかってなったのよ」


 ビラ配りはいくつかのグループに分かれてやっていた。萌香ちゃんたちは僕らより大分早く終わったみたいで、こうして身内で文化祭を楽しんでいるようだ。

 まあ、僕と良治も休憩したり、知り合いと話し込んだりしてなかったら、もっと早く終わってたよね。


「ねえねえ、折角だしアユミちゃんも一緒に行こうよ」


 藍香ちゃんの誘いに僕はどうしようか迷って良治の顔を見る。


「行って来ていいぞ。俺も吉川とでもまわるわ」


 ホントはちょっと二人で回ってみたかったけど、友達と文化祭というのも捨てがたい。

 ちょっと迷ったけど、結局萌香ちゃんたちに混ぜてもらうことにした。


「アユミさん」


 良治と別れてから、少し歩いたところで芳乃さんに声をかけられた。

 芳乃さんは僕の耳元まで顔を寄せると、こそっと呟いた。


「衣装とっても似合ってるわ。きっと彼もアユミさんに夢中ね」


 その言葉を聞いた瞬間に一気に体温が上昇する。


「あ……えっと」


 なんで芳乃さんは何でもわかってしまうのだろう。

 彼女はくすくすと笑って、僕の頭を撫でてくれた。


「何か悩んでるみたいだけどね、いつも通りでいいのよ。ここだって時にちょっと頑張ればいいの」


「はい……」


 芳乃さんと会話してると、不思議な安心感に包まれる。

 今日はたくさんの知り合いに出会った。一人ひとりみんな違っていて、それでもみんな優しくて。そんな人たちと一緒にいられるのは、本当に幸せだ。


「アユミちゃーん! 芳乃さーん! 行くよー」


 僕たちが遅れているのに気付いたのか、萌香ちゃんが声を上げる。


「「はーい」」


 芳乃さんと僕はお互いに笑顔で返事をする。


「じゃあ、お祭りを楽しみましょ? 色々美味しいものあるみたいよ」


 そういえば、さっきみんなが食べてたクレープも食べたいなぁ。

 他にも、わたあめとか、タピオカジュースとか色々あるんだよね。折角だし、みんなで食べ歩きしよう!

怒涛の登場人物ラッシュです。

物語も佳境です。本作は基本的に起伏に乏しく、盛り上がりに欠けてはいますが( •́△•̀ )


毎日このペースで書くのは難しいので、ちょっとペースは落ちるかもしれません。

書き溜めておくべきでした……。


※最近投稿してる話は若干走ってる感じがするので、多少改稿するかもしれません。

 話はほとんど変わらないと思います。

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