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ある日突然女の子になった僕の生活  作者: ひまじん
二学期の始まり、変化の始まり
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美少女、他校の文化祭を見学する【バイト先の先輩編】①

第八十九話 美少女、他校の文化祭を見学する【バイト先の先輩編】①




「あ、佐倉ちゃん。こっちこっちー! あ、ついでにりょーじも」


「俺はついでかよ」


 僕と良治は矢崎さんに導かれ、高校の敷居内に入る。

 今日はバイト先の先輩である矢崎さんの高校の文化祭なのだ。実は昨日土曜も文化祭だったようだけど、矢崎さん本人のバイトのシフトが外せなかったのと、ついでに僕もシフトに入ってしまったのとで、日曜日の今日になった。

 「たまご銀座」のバイト人員は相変わらず不足しており、休日の昼のシフトで僕と矢崎さんの二人が揃っていなくなると、対応に四苦八苦するらしい。

 じゃあ人を増やせばいいのにと思うんだけど、なかなか店長のお眼鏡にかなう人員は来ないようだ。アルバイトで来た人も、そんなに理想の店員像を押しつけられても困ると思うんだけどね……。僕自身、そんなに殊勝な心がけで応募したわけじゃないのに。

 僕のシフト中にも何人か面接に来ているのを見かけた。ほとんど全員が男の人だったなあ。矢崎さんは快活で話しやすいし、お客さんとも仲が良かったりするから、きっと矢崎さん目当てなのだろう。

 僕はというと、話しかけられても慌ててしまったり、オーダー間違えそうになったり、お会計間違えそうになったりと、ろくなことにならない。

 面接に来ている人を見かけていながら全く人が増えていないあたり、全員が不採用だったのだろう。

 店長曰く、「野郎はいらない」らしい。それでいいのか。格好いい男の人が来れば、女性客も増えそうなものだけど……。

 さて、そんな店長の自業自得が半分くらいを占める人員不足の中、何とかやりくりをしてもらって今日は文化祭に来ている。

 九月の中旬に行われるということで、準備も大変だったんじゃないだろうか。恐らく夏休み中から準備に入っていたに違いない。

 僕はというと、高校の文化祭というのが初体験なので、ちょっぴりわくわくしている。自分の高校の文化祭前に、文化祭という物の雰囲気を感じ取っておこう。そうすれば、当日の劇とかにも何か活かせるかもしれない。

 ちなみに良治は付き添い……らしい。矢崎さんと文化祭の話をしているのを聞かれてたらしく、一緒に行きたいと言い出した。僕としても他校というアウェーな場所に単身赴くのは、なかなかハードルが高かったので、こうして一緒に来ることになったのだ。


「やー、佐倉ちゃん今日も可愛いねー」


「あはは。ありがとうございます」


 僕の頭をわしわしと撫でる矢崎さん。毎度毎度の事なので、あまり気にしていない。一応髪の毛を乱さないように気を遣ってはいる……と思うし。


「送迎ご苦労様。りょーじはもう帰っていいよー」


「ちょっと待ってくれ! その流れは酷くないか!?」


 矢崎さんがひらひらを手を振り、僕と一緒に校舎の中に進むと、良治は慌ててそれに続く。

 

「あれ、ついてくるんだ。まあいいかあ。佐倉ちゃん一人だと、ナンパされそうだし。ナンパ避け程度には役に立つかな」


「勿論だ。悪い虫は全部追っ払おう」


 良治は胸を張る。


「あんたが一番悪い虫なんじゃないかしらねー……」


 そんな良治の様子を見て、ぼそりと呟く矢崎さん。僕も思わず苦笑いを浮かべるのであった。

 昇降口でスリッパに履き替え、校舎に上がる。廊下や階段は様々な飾りつけやポスターが張られており、普段の白一色の殺風景な壁がにぎやかになっている。


「人がいっぱいですね」


「まーねー。一応学外にも宣伝してるらしいし、家族連れとかもそこそこ来てるよ」


 人がごった返している廊下を眺める。

 うーん、迷子になってしまいそうだ。


「どこから行こうか。と言っても食べ物系が多いんだけどねー」


「矢崎さんのクラスは何を出してるの?」


 考えてみれば、彼女の高校の文化祭なので、彼女のクラスも何か出し物をしているはず。一日中僕らと一緒には回れないんじゃないかなあ。バイトじゃないけど、出し物によってはシフトとかもありそうだし。


「あたしのクラスは、メイド喫茶だよ。と言っても、メイドの服着て接客するだけだけど」


「メイド喫茶……!」


 良治がピクリと反応する。

 僕はメイドさんのエプロンドレスに良い思い出がないので、微妙な反応をしていた。


「ただし、男子も例外なくメイドになる模様」


 文化祭って大変なんだなあ……。


「じゃあ、矢崎さんも着るの?」


「そうだよー。午後から二時間くらい?」


 何でもなさそうに答える矢崎さん。彼女はメイド服を着ることに対して、全く恥ずかしさを感じていないようだ。うーん、この肝ッ玉は見習いたい。

 矢崎さんのクラスの喫茶店には、彼女がシフトに入った時にお邪魔することにして、一先ずは適当に廊下を歩いて気になったところに入ってみるという話になった。


「ねェ、佐倉ちゃん。お化け屋敷とかどう? 学祭のだからしょぼいけどっ」


 受付の子の真ん前で「しょぼい」発言できる矢崎さんは凄いなぁ。僕にはとてもできない。

 ああ、受付の女の子の笑顔が引きつってる。でも隣に座ってる男子は頷いてる。微妙な温度差があるようだ。

 僕が頷くと、矢崎さんは僕の手をきゅっと握ってくる。柔らかい手の感触に、ちょっとだけ緊張してしまう。


「なあ、俺は?」


 一人取り残された良治は、慌てて矢崎さんを止める。


「悪いわねー、りょーじ。このお化け屋敷は二人用なんだよ」


「そんなわけないだろおおお」


 実際問題二人用なわけはないんだけど、教室を改造しただけの狭いところなので、三人そろって入るのは難しい。

 僕は手で良治に「ごめん」と謝っておいた。


「アユミ、終わったらもう一度入ろう」


「え? ごめん、もう一度は多分ないよ。入りたいなら一人で入ってね」


 流石に学祭で生徒が作ったお化け屋敷を二周するっていうのはないと思うんだよね。

 その……矢崎さんみたいにはっきり言っちゃうのも良くないと思うんだけど、やっぱり拙い部分も多いと思うし……。


「うおおおおお、ちくしょおおおおおお!」


 良治の叫びを背に、僕と矢崎さんの二人はお化け屋敷の中に入るのだった。

 中は殆ど真っ暗で、ところどころ「順路」と書かれた看板が立っている。案外雰囲気が出てるので、少しだけわくわくしてきたっ。

 こういう催しをクラス全員でやるのも面白かったかもしれないなぁ。


「暗いねー、佐倉ちゃん」


「うん、そうだねー」


 僕ら二人の会話は、お化け屋敷の中だというのに至って平常通りだ。


「佐倉ちゃんって、暗いところとか怖いのとか、全然平気なタイプなの?」


 手を繋いでいる矢崎さんが、少し意外そうな声を出す。


「うーん。一人で夜の山道を行くとか、夜の病院を一人歩くとか、廃墟に行くとかなら怖いと思うけど……」


「そりゃ誰でも怖いって」


 それもそうか。いや、でも世の中には廃墟を訪問して楽しんでいる人たちもいるって聞いたことあるし……。


「とりあえず、お化け屋敷とかは怖くないかなっ」


「へー、意外。怖がって縮こまってる佐倉ちゃんが見られるかなーって思ったんだけど。こりゃアテが外れちゃったかなー」


 僕ってそんなに怖がりに思われているのだろうか。何だか前にも同じように驚かれた気がする。やっぱり、ちんちくりんなのがいけないのだろうか。

 ちんちくりんと言っても、それほどミニマムじゃないはずなんだけど、何故か必要以上に子ども扱いされるんだよね。何故なのか……。

 そんなことを考えながら、適当に順路を歩いて進んだらゴールまで来ていた。

 道中、何か所かポイントがあって、そこで驚かしたり怖がらせたりしているようだった。皿を数えているのとか、のっぺらぼうとか、色々凝ったつくりをしていたし、見ていて面白かった。怖がらせるという当初の目的からすれば、外れてしまっているんだけど……。

 ただ、僕ら高校生や、保護者の大人の人には「良くできてる」というような感想なのだけど、保護者が連れてきている小さなお子さんには効果抜群のようだった。僕らの後に入ってきたとみられる親子連れの一行は、大騒ぎだった。お子さんが物凄い勢いで泣いてしまって、親御さんもびっくりしたようだ。

 お化け屋敷をやっている側からすれば大成功だけど、子供をあんなに泣かせてしまった罪悪感もあったりと、誰も良い思いをしない状態になっていた。

 外に出ると、良治が詰まらなそうに待っていた。


「お待たせ~」


 矢崎さんが手をひらひらとさせる。


「ああ、お楽しみだったようだな」


 良治はぶすっとした表情で僕らを眺める。

 ……そんなにお化け屋敷入りたいのかな。ぶっちゃけた話、僕らが入っても全然怖くないんだけど……。


「りょーじ。佐倉ちゃんは全然怖がりじゃないから、「キャー」とか言って抱き着いてくれないよ?」


「それは知ってる」


 矢崎さんが「じゃあ何で?」と聞くと、良治は僕と矢崎さんの繋いだ手を指さす。

 

「俺も手が繋ぎたかったんだよおおお!」


「……案外ピュアなのね、あんた」


 手くらいなら、繋いでも構わないんだけど……と思ったけど、想像したら結構恥ずかしい物があったので口に出すのはやめた。良治と手を繋ぐって言うのは何か変な感じがするんだよね。

 男の子だった時の自分が、意識の下にチラつくから変な気分になる……っていうわけではない。最近そういう意識は少しずつ消えてきたと思う。

 男の子だった時の自分が薄れて、女の子として考えるようになったからこそ、良治と手を繋ぐって言うのが異性と手を繋ぐってことになって恥ずかしいのかもしれない。まあ結局は、良治と手を繋ぐのが恥ずかしいからダメってことなだけなので、どちらでも変わりはないかな。


「ごめん、良治。多分良治と一緒に入っても、手は繋がなかったと思う」


 僕の言葉を聞いた良治は、口を開けたまま硬直してしまった。

 僕が恥ずかしいから手は繋がないってだけで、そんなに酷いことを言ったつもりはなかったんだけど、この反応は一体……。


「佐倉ちゃん、容赦ないねー」


 オマケに矢崎さんにまで、こう言われてしまう始末。

 何だか釈然としないまま、僕はお化け屋敷を後にするのだった。


閑話休題的な話です。

しっかり良治もいるのですが(笑)。

この話のあと、またしばらく劇の練習が入り、今度は蒼井君の学校の文化祭に行く……予定です。

最近蒼井君の出番が少ないっ。良治が比較的まともになりつつある(?)ので、蒼井君も頑張らねば……と思いつつ、他校なのでなかなか話に絡められないです。

まあ、現実でも他校の子とはなかなかつるめなかったりすると思うので、仕方ないのかなと……。


自分の体調はまずまずです('A`)。そんなに深刻な状態でもなかったので、入院や手術等はなかったです(・´∀`・)手術とかになったらどうしようってびびってしまいますよね。

多分快復に向かってるとおもいます。完治はしてなさそうですが(笑)

ご心配をおかけしましたm(_ _)m

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