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ある日突然女の子になった僕の生活  作者: ひまじん
夏休みのできごと
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美少女、友達と一緒に誕生日をお祝いする

第六十九話 美少女、友達と一緒に誕生日をお祝いする




 僕は今、大型のショッピングモール「ママポート」に来ている。

 洋服を買ったり水着を買ったりと、ここには何かと縁がある。と言うのも、僕が住んでいる美川市は、市としてはそこそこの大きさと人口規模を誇るけど、可愛い小物やファッション、赤ちゃん用品などが買える場所というのは、ここ「ママポート」しかない。

 そのおかげで、休日はいつも家族連れや学生グループでにぎわっている。

 今日は平日とは言え、夏休みなので学生のお客さんが多いようだ。

 そして勿論僕ら五人もそんな学生客の一端を担っている。




 今からおよそ数十分前、僕たちはママポートの最寄駅に集合した。駅から出ているバスに乗ってママポートに向かう予定なのだ。

 

「アユミちゃん、今日も可愛いねー」


 待ち合わせの場所についた僕に、既に待っていた萌香ちゃんがにこやかに手を振ってくれる。


「うん。ありがとう」


 僕も笑顔で手を振る。


「おおっ。なんかアユミちゃんに余裕がっ! これはひょっとして大人の階段を上っちゃった……?」


 大人の階段を上るってよく聞く言い回しだけど、結局何のことを指しているんだろう。

 

「あー、違ってるみたいねっ。なんかちょっと安心しちゃった」


 小首をかしげている僕を見て、萌香ちゃんは勝手に安心しているようだ。

 なんだかわからないけど、誤解をしてたみたいだし、誤解が解けてよかったよ。


「ばかだなー、おねーちゃんは。アユちゃんがおねーちゃんが思ってるような汚れたことをするわけがないでしょっ」


 萌香ちゃんの後ろからひょっこり出てきた藍香ちゃん。

 汚れたって、一体僕がどんなことをしたと思ったんだろう。僕のそんな怪訝そうな顔を察したのか、萌香ちゃんは顔を逸らして吹けもしない口笛を吹く素振りを見せる。


「それでそれで、この前のデートはどうだったの!?」


 藍香ちゃんが興味津々といった様子で聞いてくる。

 

「デートじゃないよっ! もーっ大変だったんだから!」


 他人事だと思ってっ!

 無事終わったから良かったものの、緊張もしたし、色々失敗もしたしでいっぱいいっぱいだったんだから。


「男子と二人きりだったんでしょ?」


「それはそうだけど……」


 藍香ちゃんの追撃に僕は言葉を濁す。


「じゃあデートだよっ! 楽しかった? 楽しかった?」


「う、デートなのかなあ。楽しかったけど……」


 僕は顔が熱くなってくるのを感じて、思わずうつむく。

 あんまりあの時の事を思い出させないでほしいよっ。


「きゃーっ! おねーちゃんおねーちゃん! 大成功だよっ」


 きゃーきゃー言いながら萌香ちゃんに飛びつく藍香ちゃん。

 自分の事でもないのに、何がそんなに嬉しいのかわからないけど、彼女は大層ご満悦だった。


「藍香はしゃぎすぎっ! でもその様子だと本当に楽しんできたんだねっ。食べ放題以外も行ったの?」


 藍香ちゃんのあまりのテンションの上昇っぷりに、少しうんざりした顔をする萌香ちゃん。

 しかし彼女もまたデートの内容に興味津々だ。


「う、うん。映画みてきた」


「おおーっ! 彼もやるねーっ」


 今度は萌香ちゃんも藍香ちゃんと合わせてキャーキャー言ってる。もうこの話題は終わりにしてーっ。


「ねーねー、アユちゃん! もうキスした?」


「しししてないよっ!」


 話題が終わらないどころか、どんどん盛り上がっていく方向にな進んでいく。

 だっ、大体キスなんて友達同士でするものじゃないでしょっ。僕が蒼井君と……うわああああぁ! ダメダメ、想像しちゃだめだっ。キスは無理、まだ無理! 

 顔が物凄い勢いで熱くなっているのを感じる。恥ずかしくて思わず手で顔を覆ってしまう。何で想像しただけでこんなに恥ずかしいの。


「藍香っ! アユミちゃんを困らせないようにっ」


 萌香ちゃんがストップをかけてくれたおかげで藍香ちゃんの暴走は止まった。

 危なかった。これ以上やりこめられてると、恥ずかしくて死んじゃいそうだったよ。「死因、恥ずかしくて」とか死亡診断書に書かれたら末代までの恥だよ! 


「アユミちゃん、萌香、おはよう」「アユミさん、萌香さん、それに藍香さんおはよう」


 萌香ちゃん達とあれこれ話していると、後ろから声をかけられた。

 桜子ちゃん達も駅に到着したようだ。


「それでアユミちゃん、デートはどうだったの?」


 開口一番にこの言葉。桜子ちゃんもかーっ!

 折角萌香ちゃんがストップしてくれたのに、また蒸し返されてしまった。

 結局この話はバスに乗って目的地に到着するまで続いたのだった。

 

 

 

 

    ******

 

 僕は今、こじゃれた洋食のバイキングで、取り皿に美味しそうなソーセージを取っている。

 ママポート内のこのお店は何度かテレビにも紹介されたほど人気のお店で、今日はレディースデーになっており女性の一人当たりの料金が半額になっているのだ。

 昨日萌香ちゃんが美味しいものを食べに行こうと言って提案してきたのがこのお店だ。レディースデーと言うこともあり、店内は女性客で溢れている。ぽつぽつといる男性客は女性の彼氏か何かだろうか。テーブルで向かい合って食べてたりお喋りをしている。

 なるほど……バイキングで男女二人だと完全にカップルに見えるもんだね……。僕も蒼井君と二人で食べてた時はそう見えたんだろうなあ。まああの時は殆どがカップルばっかりだったから、周りを気にしてる人なんていなかっただろうけど……。今更ながら、割と凄いことをやってしまったような気がしてきた。

 それにしてもレディースデーってすごいよね。何故こう女性ばかり安くなるんだろうなあ。まあ女の子になった僕としては、とてもラッキーな話ではあるんだけど。

 一通り美味しそうなものを取り皿に取って席に戻る。

 みんなと最近のテレビの話やバイトの話をしながらご飯を食べる。「なんか僕、ちゃんと女子になってきたかも」とソーセージをもぐもぐ頬張りながら考えたりもした。


「さて、お腹もいっぱいになってきたことだし、ここで大事な発表をしますっ」


 突然、萌香ちゃんがニコニコしながら宣言する。

 重大な発表? 何だろうかと思って僕は萌香ちゃんの続きを待つ。

 萌香ちゃんはゆっくりと深呼吸して、言葉をつづけた。

 

「アユミちゃん、お誕生日おめでとう!」

 

「「「おめでとう!」」」


 萌香ちゃんの後に、みんなが一緒になって「おめでとう」を言ってくれる。

 何だかすごく照れくさいけど、心の中にじんとくるような、そんな嬉しさがこみあげてくる。

 

「ありがとうっ」


 僕は笑顔でお礼を言う。こんな風にお祝いしてもらったことは今までなかったから凄く嬉しい。

 あう、だめだ。なんか泣きそうになってきた。心にしみるというか感動しちゃってっ。


「アユミちゃん、泣いてる?」


 桜子ちゃんが心配そうに声をかけてくれる。


「ごめん、何か嬉しくって」


 僕はやっとのことで返事をする。


「うはぁっ! なんか凄いよっ! 涙目のアユミちゃんは凄い威力があるよっ」


「おねーちゃん! アユちゃん貰っていい? うちに連れて帰っていい?」


「そうだねっ! うちに連れて帰ろう」


 いやいやいや、待って待って! なんだか壮大な拉致計画が進んでるよ! そんな捨てられたペットみたいな感じで連れて帰られてもらっても困るよっ!

 

「こらっ、萌香―! アユミちゃんが困るでしょ」


 珍しく桜子ちゃんがブレーキに回っている。


「アユミちゃんは、うちに来るんだからっ!」


 気のせいでしたっ!


「ごめんなさいね、アユミさん。貴女があんまり可愛いものだから。それより……」


 芳乃さんが小さな紙袋を手渡してくれた。

 袋の中の物を取り出すと、中から小さなクマのぬいぐるみが出てきた。

 つぶらな瞳がとても可愛い。


「それは、私と桜子からのプレゼントよ。喜んでもらえたら嬉しいのだけど」


「とても可愛いですっ。ありがとうございます」


 僕はもらったクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。

 大きさは大体二十センチくらいで、毛並みがもこもこしていて肌触りが良い。良治がゲーセンで取ってくる何だかよくわからないぬいぐるみと違って、本当に直球で可愛い。


「あーっ! お姉にいいところを取られた!」


「桜子が変なことを騒いでいるからでしょ?」


 口を膨らませる桜子ちゃんにぴしゃりと言い放つ芳乃さん。芳乃さんって僕や萌香ちゃんには凄く良くしてくれるけど、身内には結構手厳しいよね。


「桜子ちゃんもありがとうっ」


 僕はふてくされている桜子ちゃんに笑顔を向ける。

 桜子ちゃんの顔も、そんな僕の様子を見てパッと明るくなる。


「喜んでもらえてよかったわ」


 この子は僕の部屋のどこに飾ろうかなっ。名前も付けちゃおうかな。

 友達が買ってくれたプレゼントなんだから、大切にしよう。

 

「桜子ちゃん達に先を越されちゃったけど、私たちもあるんだよっ!」


 萌香ちゃんも紙袋を僕に渡してくれる。

 中には小さなケースが入っていて、それを開けてみると……


「ネックレス?」


「そうそうっ! アユミちゃん全然アクセつけないから、どうかなって思って」


 萌香ちゃんはちょっと照れくさそうにしている。


「アユちゃん、どうかな。アクセサリーは嫌い……?」


 藍香ちゃんは少し不安な顔をしている。

 アクセサリーかぁ。そういや芳乃さんもピアスとかつけてるし、桜子ちゃんもちょっとしたネックレスを付けてた時もあった。女の子になっておきながら、その辺は全く考えてなかったなあ。可愛い服を着たいとか、着飾りたいと思っておいて、そこまで頭が回ってなかった。

 萌香ちゃん達がくれたネックレスは。銀色に輝く細い鎖がきらきらと光っていてとても綺麗だ。さらに鎖の先にはティアドロップの飾りがついている。


「凄く嬉しいよ。付けてみていい?」


 萌香ちゃんと藍香ちゃんが頷いたのを確認して、僕はネックレスを付けてみる。


「どうかな」


 僕は二人の様子を伺う。


「はぅ、アユちゃん超綺麗だよっ!」


「買ってよかったあ! 凄く似合ってるよっ」


 二人が手放しでほめてくれるので僕も思わず照れてしまう。

 でもこんなに高そうなもの貰っていいのかな……。


「あっ、値段の事は気にしないでっ! ちゃんと桜子ちゃんと、これくらいの値段でって言って決めて探したんだから」


 僕がちょっと申し訳なさそうにしていると、萌香ちゃんが慌てて言葉を付け加える。

 と言うことは、このクマさんと同じくらいなのかあ。みんな色々探してくれたんだな。こうやって友達と一緒に誕生日をお祝いできてプレゼントまでもらえるなんて、本当にいい友達を持ったと僕はしみじみ感じていた。

 みんなが誕生日の時も、絶対お返ししないとっ。

 

「今日はみんなありがとう」


 僕は心からのお礼を言った。

 みんなも嬉しそうにしてくれたのが、何より僕も嬉しかった。

 

「じゃあ、次のデートの時は、そのネックレスをつけていってねっ!」


 萌香ちゃんがくすくす笑って言う。またその話かーっ!

 でも、これを付けて何処かに出かけるのが少し楽しみになった。


話には全然関係ないのですが、風邪をひきました('A`)

突然お休みをいただくかもしれません。。。orz


前回のお話で出ていますが、まだ誕生日ではありません。厳密に言えば誕生日前のお話です。

//2013/10/27 話数を修正。

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