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ある日突然女の子になった僕の生活  作者: ひまじん
夏休みのできごと
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美少女、はじめてのデート②

第六十六話 美少女、はじめてのデート②




「やっと中に入れたねー」


 お店の中に入り、案内された席に着くと、ようやく一息つけた。

 暑い屋外に空腹状態で待たされていたため、涼しい店内に入れた今もまだフラフラしている。

 僕はばてばてで、テーブルに突っ伏してヘタっている。そんな僕にお冷を差し出してくれる蒼井君。氷が入ってて冷たい分、持ってたペットボトルより美味しく感じる。


「暑かったしね。大丈夫? 冷たいデザートでもとってきてあげようか?」


 バテバテの僕と比べると、蒼井君はぴんぴんしている。

 流石海の家を手伝ってるだけある……! そっちよりむしろ運動部の方が大きいかな。こんな暑い時期でも防具つけて練習してるんだもんなあ。


「うん。ごめんね、お願いしてもいいかな」


「わかった。美味しそうなの取ってくるからね」


 そう言うと彼は静かに席を立つ。

 優しいなあ……。僕はグラスに映る自分の顔を見つめる。

 本当は自分で選びたかったけど、蒼井君なら変なのは取ってこないかな。僕も今のうちに、お水でも飲んで体を休めよう。

 暫くして蒼井君が戻ってくる。お皿二つに、綺麗にケーキやゼリーのカップが並べられている。


「こんな感じで取ってきたけど、どうかな」


 二つのお皿には様々なデザートが並べられている。ゼリーやアイスケーキが多いのは、暑さでばてちゃった僕への配慮なのかな。気を遣わせちゃったみたいだ。

 なんだかんだ言って、毎回蒼井君には気を遣わせてる気がする。

 僕は蒼井君の持ってきたスイーツを眺める。どれも美味しそうだ。


「あっ、これ食べたかったやつっ」


 僕はお皿の上に、チョコレートのケーキを発見する。このチョコケーキはお店を紹介しているブログとかでも評判が良かったんだっ。


「ホント? 取ってこれて良かったよ。結構いろんな人が取ろうとしてて、一個もらうのでも結構難しかったんだよ。俺が取ったのが最後の一個で、補充はしばらく時間かかるらしいし」


 やっぱり、事前に調べて来てる人には人気なのか。

 よく見れば、お皿の上にこのケーキは一個しかない。うう、どうしよう。勿論僕は食べたい。食べたいのはやまやまなんだけど、一個しかない。補充されるには時間を要するというし、食べ放題の時間の中に間に合うかわからない。


「佐倉さん。食べていいよ」


「ほ、ほんと?」


 蒼井君は僕の小皿にケーキを取ってくれる。


「うん。だって佐倉さんに食べてほしくて取ってきたんだし」


 そう言ってニコニコ微笑む蒼井君。

 はあ……、いい人だなあ。僕はしみじみと思う。ずっと蒼井君の顔を見てしまっていたことに気付いて、慌てて眼を逸らす。心なしか顔も熱い。

 折角取ってきてくれたんだし、食べたいけど……。やっぱり美味しいものは独り占めしないほうがいいかな。


「じゃあ半分こにしよっ」


 僕はケーキをフォークで丁寧に半分に切って、蒼井君の小皿の上に乗せる。

 そして蒼井君に向かってにっこりと笑いかける。


「あ、ありがとう」


 彼は少しまごついていたけど、やがて照れくさそうに笑う。


「それじゃ、いただきます」


 フォークで一口分に切って口に運ぶ。口の中に入れると、ふわっとチョコレートの香りが広がる。

 甘くて濃厚なチョコの味わい。舌の上に乗せるとすっととろけていく感覚。残った分も一気に食べてしまう。


「すっごい美味しいっ」


 思わずニコニコしてしまう僕。美味しいものを食べると自然と顔が綻んでしまう。

 彼はそんな僕の様子を嬉しそうに眺めている。その視線に気づいてしまうと、急に恥ずかしさがこみあげてくる。

 うう、またはしゃいでしまった。

 

「佐倉さんは本当に甘いもの好きなんだね」


「う、うん」


 また子供っぽいところを見せてしまった。何でだろうなあ。蒼井君の前じゃ子供みたいな僕と、ひたすらにダメな僕しか見せてない気がする。僕はもっとこう、高校生らしく大人の女をだね……いや無理だな外見的に。

 別に行きたいわけじゃないとか言ってたくせにこのはしゃぎようだし、本当に中身が子供だよ僕は。でも仕方ないじゃない、甘いもの美味しいんだもの。女の子になってから特に惹かれるようになっちゃったよ。


「でもその甘いものが好きっていうおかげで、こうして一緒に来られたし、俺としては嬉しいよ」


「そ、そっか」


 ストレートな物言いに、少し面喰ってしまう。

 お世辞や冗談で言ってるわけじゃないのはわかる。わかるからこそ、どう返事をすればいいのかわからない。


「あ、これ本当に美味しいね」


 蒼井君は半分こにしたチョコケーキをほおばる。


「でしょ、でしょっ」


 僕も首を縦に振る。できればもう一個食べたいなあ。でも時間かかるっていうし……。

 

「あはは、定期的に見にいっとくよ」


「へっ!? あ、ええっと」


 チョコケーキのあった場所をチラチラ見てたのがばれてしまった。うう、またしても恥ずかしい。


「でも他にも美味しいのあるかもしれないし、色々食べてみてよ」


 蒼井君が他のスイーツも薦めてくれる。確かに、一個目が美味しかったからって他を食べないのはもったいない。

 どれも美味しそうだし、ぜひぜひご賞味させていただきたいところっ。


「そうだね。でもいっぱい食べると太りそうだなあ」


 元々食べる量が少ないと言っても、これだけのスイーツを食べるとなると、やはり少し気になってしまう。

 男の子の時は、ぶっちゃけもっとガタイよくなりたい、体重増やしたいと思ったりもしてた。

 でも、今の僕にそんな思いはこれっぽっちもない。今ある服も着られなくなっちゃうしね。幸い身体測定のころから百グラムも変動していなかったので、この前安心したところだ。しかし今日の後はちょっと測れないかなっ。

 

「佐倉さん全然太ってないから大丈夫だよ。むしろスリムだし」


「そ、そう。ありがとう」


 僕はゼリーのカップを取る。みずみずしいゼリーからは、ほのかにマスカットの香りがする。よく見ればゼリーの中にマスカットの果実も入っているようだ。

 スプーンで一口すくって食べる。

 さわやかな味わいと、冷たい食感が美味しい。チョコレートケーキとはまた違う美味しさがある。

 このお店のスイーツ凄くいいなあ。桜子ちゃんに感謝だよ。


「これも美味しい」


「そうなんだ。あとで取ってこようかな」


 ちょっと残念そうな蒼井君。これも一個しか取ってきてなかったのか。


「ちょっと食べてみる?」


 そんな彼に僕はゼリーを差し出す。

 彼は一瞬きょとんとした顔をする。そして、ようやく思考がまとまったのか、今度は慌てはじめる。

 

「どうしたの? あっ、僕の食べかけじゃダメだったかな。ごめん」


「いやいや、そういうわけじゃないんだけど。本当にいいの?」


 僕は頷く。

 僕が手を付けたほうと逆側なら綺麗だし、大丈夫かなと思ったけどやっぱり気にしちゃうのかな。失敗したなあ。

 蒼井君はちょっとだけスプーンでゼリーをすくうと口に運ぶ。


「ああ、これも美味いね。冷たいし食べやすそう」


「だよね。蒼井君が取ってきてくれたもの、今のところ全部美味しいよ。ありがとう」


「ど、どういたしまして」


 その後も、残りのデザートを食べる僕たち二人。

 どれも美味しくて、思わず話も弾んでしまう。


「このプリンも美味しいね」


 カップに入った卵プリンを二人でそれぞれ食べる。

 甘くてとろとろしているプリンは、いくらでも食べられそうだ。


「でもプリンはうちのバイト先の方が美味しいかなっ」


「へえ。佐倉さんのバイト先ってそんなに美味しいの?」


「うん。すっごい美味しいんだよっ。雑誌にも載ったことあるんだって」


 自分が作ったりしてるわけでもないのに胸を張る僕。ついでに、まだバイト一か月目なので、スタッフとしても微妙な位置だったりする。

 最近また店長に写真をウェブサイトに上げて良いか聞かれたけど、丁重にお断りした。「佐倉さんが入ってからお客さん増えたんだよ」と言っていたけど、果たしてそれが本当なのか……。単純に写真を載せたいだけの方便な気がしてならない。


「それは凄いね。じゃあ常連さんとかもいっぱい来てるんだ」


「あー、そうだね。お昼時には結構よく見かけるお客さんも多いよ。あとは良治……中学校からの友達がよく来てるかな」


「そ、そうなんだ」


 蒼井君が少し言いよどむ。

 しまった、良治の話題は出さないほうがよかったかな。蒼井君が好意を持ってくれているのは、鈍感な僕でもわかる。その上で、ひょんなことから二人でこういうところに来てしまって、デートじゃないと僕がどんなに頑張っても、客観的に見たらデートなわけだ。良治だってそう感じてたし。

 そのデート中に、他の男の子の話をするって言うのはダメだよなぁ……。どちらの男の子とも付き合ってるわけでもないとは言え……。

 彼は少し考え込んでしまった。そしてちょっとの間を置いて、僕に尋ねてくる。


「佐倉さんって彼氏とかいるの?」


「へ?」


 突然の問いに僕は思わず聞き返してしまう。

 かれし……カレシ……彼氏っ! 何回か反芻してようやく理解する僕。そしてわかった途端に焦ってしまう。


「い、いないよっ。いるわけがないよ!」


「本当に?」


「うん……」


 僕は頷く。

 この後彼はなんて言ってくるんだろうか。少しドキドキしてくる。もし告白なんかされたらどうすれば……。

 しかしその不安は杞憂に終わる。

 彼は「そっかー。良かった」と一言述べただけで、それ以降はその話題には触れなかった。

 僕は少しだけほっとした。


「佐倉さん、これも美味しいよ」


「へ!? あ、うん。食べてみるねっ」


 少しだけぎこちなくなっちゃったけど、徐々にまたペースを取り戻していく。

 食べ放題の時間はまだまだある。すぐお腹いっぱいになっちゃうかなって思ってたけど、お喋りしながらだとそんなに一気に食べられないし、結構長い時間食べていられそうだ。

 まだまだ食べてないのもいっぱいあるし、どんどん食べちゃおう!

明日はひょっとすると、投稿できないかもしれません。でも、ひょっとすると投稿するかもしれません。


デートの様子を書いていると結構楽しかったり。

いちゃいちゃするにも、組み合わせでいろいろ違ってくるのが書いてて楽しいです。最終的にはどうなりますかね……。


//2013/10/24 一部文章を修正。

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