第70話。ヴァレリアと結婚し、次期国王となる
【☆★おしらせ★☆】
あとがきにとても大切なお知らせが書いてあります。
どうか最後まで読んでいただけると嬉しいです……!
ヴァレリアを抱き寄せて、唇を合わせようとした、まさにその時だった。
「ちょっと待ったぁああッ!」
背後の扉が乱暴に開かれ、大声が轟いた。
何事かと振り向くと、そこには肩を怒らせたハロルド王太子が立っていた。
この場の全員が、時が止まったように唖然となる。
「……なっ、何をしておるのだハロルドよ!?」
国王陛下が立ち上がって、息子に問い質した。
ハロルド王太子にも、結婚式の招待状を送っていたが、彼からは欠席するとの返事が届いていた。
ここにやって来るとは、思っていなかったのだが……?
「ヴァレリア、君の罪は晴れた! ならば、何も問題は無い! 君のことを再び僕の婚約者として迎え入れようじゃないか!?」
「「はぁ……?」」
俺とヴァレリアの声がハモった。
こ、この男は何を言っているんだ?
「聞いたぞ! 君を花嫁とすることで、ゼノンに王位継承権を与えるという話を! だが、僕はたかだか辺境伯の息子を王族として迎え入れるのには、断固反対だ! いかにゼノンが手柄を上げよと、リディア叔母上や父上たちが、何と言おうともな!」
ハロルド王太子はまともに寝ていないのか、目が血走っていた。それでいて、全身からは凄まじい怒気を漲らせている。
……なるほど。
ハロルド王太子は、次期国王の座を俺に脅かされると思って、こんな暴挙に及んだのか。
実は国王陛下も、俺を英雄として褒め称え、王位継承権を与えることを承諾していた。
アスフォデル公爵によると、国王陛下は英雄である俺を王家に迎えることで、今回の一連の事件で求心力を失った王家の力を取り戻したいと考えているようだった。
なんと言っても、聖教会によって引き起こされた南部の魔物の大発生が、未だに収束していないからな。
俺にこの討伐を依頼したいという思惑も、あるらしかった。
「今さら、何をおっしゃっているの? ハロルド殿下は私に好きなだけ戦争をしろと仰せになって、この地に追放されたのでしょう?」
ヴァレリアは呆れ返った様子だった。
「その結果、ゼノンと私は結ばれ、彼は英雄と讃えられて王位継承権を得るに至りました。これは殿下の望んだ通りのことでありませんか?」
「違う! 君を婚約破棄したのはアリシアと聖教会の陰謀によってだ! 僕は奴らに騙されていたんだ!」
ハロルド王太子は、舞台演劇の悲劇のヒーローになったかのごとく、大袈裟に頭を振った。
「それに気付いた僕は、真実の愛に目覚めてしまったんだ。やはり、リディア叔母上の血を引くヴァレリアこそ、僕の妃にふさわしい!」
彼は恥ずかしげもなく、そんなことを言ってきた。
「……真実の愛に目覚めたですって?」
ヴァレリアは絶句して、言葉が出てこない様子だった。
それは俺も同じだった。呆れ返ってしまう。
一ヶ月前、ハロルド王太子はヴァレリアを罪人呼ばわりしたことを謝罪して帰った。だが、実際には自分が悪かったとはまったく思っておらず、反省していなかったのだ。
彼のせいで、ヴァレリアは『稀代の悪女』などと後ろ指をさされて、危うく殺されかけたというのにな……
「あなたが愛しているのは、私ではなく王座でしょう? そんなモノは断じて真実の愛などではありません!」
「な、なに……!?」
「私たちの結婚を祝いにいらしたのではないなら、今すぐここから立ち去ってください!」
「お、王太子であるこの僕に向かって……! 傲慢にも程があるぞ、ヴァレリア!」
屈辱と怒りに顔を染めたハロルド王太子は、こともあろうに剣を抜いた。
会場中から悲鳴が上がる。国王陛下が強烈な怒声を発した。
「ハロルドよ、何をしておるのだ! バルザーク帝国の皇帝陛下も来ておられる祝いの場で刃傷沙汰に及ぶ気か!?」
「けっ、決闘だゼノン! 正々堂々とヴァレリアの花婿の座を賭けて僕と勝負しろ!」
ハロルド王太子は破れかぶれで、そんなことを言ってきた。
帝国との関係など、どうでも良いようだった。
「だが、王太子である僕に剣を向ける無礼は許さない! お前には素手で、かつ魔法抜きでの戦いを申し付ける!」
正々堂々の決闘と言っておきながら、無茶苦茶なルールだった。
おそらく、宮廷ではこのように居丈高に命令すれば、すべて自分の思い通りになってきたんだろう。
剣を抜いた王太子をうかつに刺激することもできず、警備兵たちは動揺していた。
「……わかりました。ですが、その前に」
俺はヴァレリアを抱き寄せて、その唇に口付けをした。
ずっと、この日を待ち望んできたのだ。こんなハプニングで、結婚が延期などということになりたくなかった。
「ゼ、ゼノン……!」
「これで俺とヴァレリアは正式な夫婦です」
ヴァレリアは喜びに顔を輝かせた。
俺と彼女は強く抱き合って、夫婦となった喜びを分かち合う。
「お、おのれぇ! 決闘前に、僕の愛しのヴァレリアの唇を奪うとは!?」
ハロルド王太子は激高して、剣を振りかざした。
「僕の愛しのヴァレリアだって……?」
聞き捨てならない言葉だった。
「王太子殿下が愛していたのは、聖女アリシアでしょう? ヴァレリアを愛していたのなら、なぜ濡れ衣だというヴァレリアの訴えに耳を貸さなかったのですか?」
「そ、それは、僕の責任じゃない! すべては僕を陥れたアリシアと聖教会が悪いんだ! 僕は悪くない! 僕こそ最大の被害者だ!」
呆れた言い分だった。
「はっ、これがアルビオン王国の王太子か」
バルザーク帝国の皇帝から失笑が漏れる。
国王夫妻は、頭を抱えていた。
国内外のVIPが揃ったこの場で、王国の恥を晒してしまったのだ。
「……わかりました。良い機会ですから、次期国王の座も引導を渡してさしあげます」
この男が国王となったら、アスフォデル公爵の言う通り、国が危うくなる。
なにより、俺からヴァレリアを奪おうとしてきたのが、許せなかった。
俺たちの未来のためにも、ここでハロルド王太子と決着をつけねばならない。
「な、なんだと!? 辺境伯の小倅ごときが、身の程をわきまえろ!」
「国王陛下! ご覧の通りハロルド王太子殿下は、ご乱心なさいました。残念ながらこのようなお方に、王太子たる資格は無く、この私が決闘に勝った暁には、廃嫡を願いたいのですが、いかがでしょうか? 代わりに、私はハロルド殿下のお申し出を受けようと思います。この決闘に勝った者が、ヴァレリアの花婿です」
「うむ、許す!」
国王陛下から即答が返ってきた。
「ち、父上!?」
よほど意外だったのか、ハロルド王太子は狼狽をあらわにした。
「ハロルドよ。めでたき婚礼の場で、決闘にて花嫁を奪おうというのだ。ならば、お前もそれに見合うだけのモノを賭けねばならぬであろう? ゼノンに敗れたなら、王太子の座をゼノンに譲るがいい」
場が騒然となる。
王国を揺るがす、あまりにも重大な決定が下されたのだ。
「な、何をおっしゃるのですか!? 王太子の身分と、たかが女一人ではまったく釣り合いが取れません! だいたい、辺境の小倅ごときに、栄光なるアルビオン王国の次期国王が務まりますか!?」
「たかが、女一人だって……?」
俺は、拳を握り締めた。
語るに落ちるとはこのことだ。
もうこれ以上、この男がヴァレリアを侮辱するのは我慢がならなかった。
「ハロルド殿下、お言葉ですが、バルザーク帝国との同盟が成ったのはゼノンの尽力があったればこそです! 他の誰にこのような偉業ができたでしょうか!?」
ヴァレリアが、凛としてハロルド王太子に告げた。
「さらに今後、ゼノンの回復薬は怪我に苦しむ大勢の人々を救い、我が国に莫大な富と世界中からの尊敬をもたらすでしょう。民を救い、国を平和に豊かにすることこそ王者の使命。私はゼノンこそ誰よりも王にふさわしいと思っておりますわ!」
ヴァレリアの宣言に、会場中から感嘆のどよめきが上がった。
「ヴァレリア、よ、よくも生意気な口を……!」
ハロルド王太子は剣の切っ先をよりにもよってヴァレリアに向けた。
俺は彼女を守るべく前に出る。
「……では殿下、お望みの決闘を始めましょうか?」
「いいだろう! 貴様は、剣も魔法も使うなよ!」
雄叫びと共にハロルド王太子が、斬り掛かってきた。
遅い。
まるで、話にならない身体能力な上に、剣技も素人のそれだった。しかも、これは酒が入っているな。足元が、ふらついている。
酒の勢いを借りて、この場に乱入してきたのか。
本来なら、ハロルド王太子は、乙女ゲームのヒーローとして聖女アリシアと共に成長していく筈だったのだが、成長どころか堕落しきっていた。
「死ねぇい……! えっ!?」
俺はハロルド王太子の剣を奪い取るべく、両手で挟み取った。
真剣白刃取りだ。
「ハハハハハッ、バカめ! これには掠っただけで即死する猛毒が塗られているんだ!」
「えっ!?」
その一言に、ヴァレリアは目を見張った。
なるほど。それなりの準備をして、俺を殺そうとしてきた訳か。
そんな猛毒を入手できる闇の人脈をハロルド王太子が持っているとは思えない。おそらく聖教会あたりに、そそのかされたか。
ハロルド王太子が、剣に力を込める。
だが、何度も強化された俺の両手は、剣を簡単にへし折った。無論、俺の両手には、かすり傷一つ付いていない。
「は、鋼の剣が!?」
衝撃を受けるハロルド王太子の額に、俺はデコピンを食らわせた。
「ぶぎゃあああああッ!」
ハロルド王太子は悲鳴を上げてぶっ飛び、壁に叩きつけられてめり込んだ。
彼の提案したルール通り、剣も魔法も使わずに勝利した。こういう縛りプレイは嫌いじゃない。
「フェリクス、捕らえろ!」
「はっ! 坊ちゃま」
フェリクスがすぐにハロルド王太子に縄をかける。
「勝者ゼノン! 約束通り、ハロルドは廃嫡とする!」
国王陛下が審判役として判定を下した。
「そして王太子はゼノンということになるのが。王位継承順位第一ヴァレリア、第二位リディア、ともに異存は無いな?」
「私もお母様も王座は望みませんわ。故に王太子の座は、どうか我が夫、ゼノンにお与えてくださいませ」
ヴァレリアが国王陛下に向かってお辞儀する。
「陛下、私からもお願いいたします。夫も王座は望んではございません」
リディア夫人も、これに賛同した。
「……どうやら、今回のことで頭の痛い問題が片付いたようだな。ハロルドの最近の素行の悪さ、乱心ぶりは、目に余るものだったのでな」
国王陛下が、ため息を吐いた。
「ゼノンよ。我が息子、ハロルドが大変、失礼した。急な話ではあるが、王太子の座を受けてはくれぬか? これは余のたっての願いである」
「陛下、私はまだ貴族アカデミーを卒業していない身です。アカデミーを卒業した暁には、謹んでお受けいたします」
俺は国王陛下に向かって、片膝をついた。
貴族アカデミーを卒業し、社交界デビューを果たすと、貴族は一人前と認められる。
あまり性急にことを進めすぎると、反発も強くなので、王太子となるのは貴族アカデミー卒業後にしたかった。
「あい、わかった。では、卒業後にそなたには、王太子となってもらおう」
国王陛下が満足そうに頷く。
「やったわねゼノン。これであなたは、次期国王よ!」
ヴァレリアが俺に抱擁してきた。
俺も彼女を抱き締め返す。
「これで、この国はより良い方向に向かっていける。私が、王となるあなたを懸命に支えるわ!」
「俺も王となって、ヴァレリアを守り抜く」
万雷の拍手が鳴り響いた。
今、にこやかに拍手をしているバルザーク帝国の皇帝から、この国を。ひいてはヴァレリアを守り抜くためには、俺が王となるしかない。
おそらく、聖教会も自分たちを締め出したこの国を目の敵にしてくるだろう。
だけど、俺とヴァレリアが力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられる筈だ。
「ゼノン、ヴァレリア、おめでとう!」
「次期国王ゼノン様、万歳!」
「坊ちゃま! フェリクスは誠にうれしゅうございます!」
「まさか、ワシの息子が、ここまで大物となるとは……!」
「この王国を、お頼みします! ゼノン様が王となられるのであれば、王国は安泰です!」
固い誓いを交わす俺たちに、アルフィン姉や父上だけでなく、来賓たちから、たくさんの祝福の言葉が投げかけられた。
※※※
やがて、王となったゼノンは、歴史に名を残す名君となった。
王妃ヴァレリアは、そんな彼を生涯に渡って支え続けたという。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます!
本作は、これにて完結となります。
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