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第63話。ゼノン、ヴァレリアの危機に駆けつける

【ヴァレリア視点】


「弓兵、一斉射撃……放ちなさい!」


 ダラム城に入城した私──ヴァレリアは城壁上から守備兵を指揮していた。迫りくる帝国軍に、太矢の雨を浴びせる。


「うぉおおおッ! ゴーレム兵がおもしろいように倒れていくぞ!」

「俺たち、こんなに強くなっていたんだ!?」


 守備兵たちから大歓声が上がった。

 ここを守る約一万人の兵は、ゼノンの【超回復】(オーバーヒール)によって回復、強化された元負傷兵たちだった。

 

 彼らは、ダラム城にあったゴーレム兵用の大型弓を二人がかりで放ち、敵のゴーレム兵を次々に撃破していった。

 人間には引くことのできない強弓も、腕を強化された者なら、引くことができた。

 

「やっぱり、【超回復】(オーバーヒール)で強化された兵たちはすごいわ! 帝国軍をものともしない!」


 私は思わず、快哉を叫ぶ。


「はっ! ヴァレリアお嬢様。これならゼノン坊っちゃまが来られる前に決着が付きそうですな」


 私の隣に立ったフェリクスが頷く。

 眼下を見れば、ゼノンに忠誠を誓った武将たちに率いられた約1万5000の辺境伯軍が、5万の帝国軍に襲いかかっていた。


 帝国軍の魔導師部隊が、ゴーレム兵団の後ろから魔法攻撃を辺境伯軍に浴びせる。


 だけど、我が軍の将兵たちは、ゼノンの回復薬を持っているため、怯むことは全くなかった。


「ぬるいわ、軟弱者どもぉおおッ!」

「もはや、ゴーレムなど恐れるに足らず!」

「今の俺たちには、ゼノン様の回復薬がある! 俺たちは不死身だぁあああッ!」


 雄叫びを上げる彼らは、勢いを落とさぬまま、敵陣に突っ込んで行く。

 彼らは怪我や死の恐怖から解放されているのだ。


 かつ、強化された彼らの一撃は、鉄壁を誇っていたゴーレム兵の装甲を穿ち、断ち切った。


「……これが、新生グレイヴァン辺境伯軍。素晴らしいわ、なんて強さなの!」


 思わず感動に声が震えてしまう。


 見れば、私の護衛として立つ【死霊騎士】(デスナイト)ガウェインも満足そうに頷いていた。

 彼の魂の声が、私の心に響いてくる。


『姫様。ゼノン様は、まさに真の英雄と呼ぶにふさわしいお方でした。我らは姫様と共に、これからもあのお方に付いて参ります』

「ええっ、その通りねガウェイン」


 ゼノンのおかけで、聖女アリシアも断罪されることになった。

 志半ばで殺されたガウェインたちの無念も、これで晴らすことができたわ。

 その時だった。


 ゴォオオオオン!


 戦場に凄まじい魔獣の咆哮がとどろき渡った。


 何事かと眼下を見ると、ライオンの頭に山羊の胴体、蛇の尻尾を持つ見たことも無い魔獣が、帝国軍の中から躍り出てきた。


 しかも、一体ではなく、何十体もよ。

 そいつらが、辺境伯軍に襲いかかった。


「なっ、なんなの、あの魔獣は……!?」


 私は衝撃を受けた。

 魔獣については、書物で一通りの知識を得ているけど、あんな姿の魔獣は私の知る限り存在しなかった。


「魔獣風情が……ちぇすとぉおおおおッ!」

膾斬(まなすぎ)りにしてくれるわ!」


 我が軍の兵たちが、剣を振りかざして魔獣に突進して行く。


 だけど、魔獣の爪や、吐き出された火炎に返り討ちにされ、あっと言う間に蹴散らされる。

 それは、強化兵や武将級の強者であっても、同じだった。


「ば、バカな……! ゼノン坊っちゃまのお力で強化された者たちが!?」

「アレは、おそらくSランク以上のモンスターだわ!」


 私とフェリクスは、顔を見合わせた。


「まさかSSランクのモンスターであると!? そんな怪物を、帝国軍は従えることに成功したというのですか!?」


 私も、にわかには信じられなかった。


「そうとしか考えられない……!」


 SSランクのモンスターは、人間には決して懐かない、人類の天敵とも言うべき怪物よ。遭遇はすなわち死であるため、書物には書き記されていない種族が多い。


「……ま、まさか、レティシア皇女が聖女アリシアと手を結ぶことで得た力?」


 私はそのことに思い至って、背筋が凍り付いた。

 帝国軍は、ゴーレムより遥かに強大な戦力を得たのだ。


「ハハハハハッ! 見たかしら!?」


 レティシア皇女の笑い声が響く。


「これぞ私の理想の結晶! 強大な複数の魔獣同士を融合させて造った人造生命体【合成魔獣】(キメラ)よ!」


 レティシア皇女が、帝国軍の先頭に姿を見せた。

 敵軍総大将の登場に、辺境伯軍は色めき立つ。


「レティシアがおったぞ!」

「おのれ、魔女め!」


 でも、おそらくあのレティシア皇女は、以前と同様、精巧に作られた偽物でしょうね。


 ゼノンの話では、レティシア皇女はもう前線に出てくることなく、別の場所から魔法で戦場を観測しつつ、通信魔法で指揮を取るに違いないとのことだった。


 レティシア皇女の目的は、錬金術で造った兵器の実戦データを取り、より強力な兵器を造ること。武人のように正々堂々と戦うタイプではないわ。


 その肝心なレティシア皇女の居場所について、ゼノンは事前にいくつか候補地を割り出していた。

 ただ、それを完全に絞り込むことはできなかった。


 剣聖バルド様と、辺境伯軍に復帰したフリッツら元レティシア皇女のキメラ兵らが、その候補地に向かい、レティシア皇女を発見次第、奇襲する手筈となっていた。


 時間はかかるでしょうけど、これならレティシア皇女を討ち取れるわ。


 この策が成るまでダラム城を死守すれば、私たちの勝ちよ。


「レティシアを討て! 全軍突撃!」

「おう!」


 辺境伯軍の将兵たちは、我先へとレティシア皇女に突撃していく。


 だけど、レティシア皇女の周辺は、たくさんのキメラによって固められており、我が軍の将兵らは次々に返り討ちにされた。


 総大将の影武者を囮にするとは、恐ろしい手を……

 それに敵の魔獣は、名前からしてキメラ兵の技術を応用して造った存在らしい。


 見る限り、キメラの戦力はキメラ兵より上!


「そのレティシア皇女は多分、偽物よ! みんな一旦、後退してちょうだい!」


 私は声を枯らして叫ぶも、辺境伯軍の武将たちは、まるで聞く耳持たない。

 彼らはレティシア皇女をめがけて、雄叫びと共に猪突猛進を繰り返す。


 個々は強いけど、およそ策や戦術とは無縁の集団が、グレイヴァン辺境伯軍だった。


 しかも、自分たちが認めた強者にしか従わないという価値観が強く、副将である私の命令を無視していた。


「まずいわ。本軍が、レティシア皇女の策に完全に乗せられている!」


 なんとか私の手で、被害の拡大を防がなくては……

 

「くっ、守備兵、本軍の援護を……! 矢でキメラを攻撃するのよ!」

「駄目です! 動きが速すぎて、狙いが付けられません!」


 守備兵たちから悲鳴が上がった。

 キメラたちは、本軍と乱戦状態のため下手に射撃すれば、味方を誤射してしまう。


 かといって、ダラム城の兵を救援に動かせば、城の守りが薄くなり、ここを奪われる恐れがあった。


 ゴーレム兵団は、未だに健在で、津波のように押し寄せてきている。


 私の配下のデミリッチたちは、奴らを雷魔法で撃破するので手一杯だ。デスナイトたちも弓矢での迎撃に参加しており、動かす余裕が無い。


「まずいわ、ゼノン……!」


 今の私では、この劣勢を覆せない。

 思わず、ゼノンに助けを求めたその時だった。


「全軍、後退しろ! キメラの群れは、俺とアルフィン姉が相手する!」


 戦場にゼノンの号令が鳴り響いた。

 ゼノンがアルフィンお姉様に抱えられて、空を飛んでやってきたのよ。


「ぐ、軍神、ゼノン様だぁ!」

「おおっ、我らが総大将がやって来られたぞ!」

「ゼノン様、万歳!」


 劣勢の辺境伯軍から大歓声が上がった。

 真の主の命令に彼らは喜んで従い、後退を開始する。


「ようやくやって来たわねゼノン。聖女様の秘密兵器なんかじゃ、やっぱり足止めにもならなかったようね」


 レティシア皇女が舌舐めずりして、うれしそうに笑った。

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