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第60話。神罰執行官カマエルを相手に新技を繰り出す

「カマエル! ゼノンが来たわ! お前の出番よぉおおおッ!」


 聖女アリシアが大絶叫した。


 同時に俺に向かって、司祭服姿の中年男性が空を飛んで突っ込んで来る。

 思わずギョッとした。


「ゼノン様……!?」

 

 配下の兵士たちも、驚きの声を漏らす。

 

「神罰執行」


 それもその筈、異様なことに、その男の背から、白い翼のようなモノが生えたのだ。


 魔物か? 俺のゲーム知識に無い魔物のようだぞ。


「魔物だ! 全軍、散って、奴を包囲せよ!」

「はっ!」


 正体のわからない魔物は、広範囲攻撃を持っている可能性がある。兵が固まっていると、それで一網打尽にされる危険があった。

 その直後だった。


【超回復】(オーバーヒール)と、その影響下にある個体を殲滅する」


 奴が手をかざすと、凄まじい爆発が俺の背後で生じた。強烈な広範囲爆裂魔法が、無詠唱、溜め無しで放たれたのだ。


 ドォオオオオオオン!


「うぉおおお!?」


 俺は爆風を浴びながらも、とっさに乗っていた馬の鞍を蹴って、効果範囲外に脱出した。

 だが、俺が率いていた2000人の兵たちは回避が間に合わず、大爆発に飲み込まれた。


「ええっ!?」

「バカな、なんだアイツは!?」


 上空のアルフィン姉と関所の兵士らが、狼狽を顕にする。

 巻き上がった土煙で良くわからないが、おそらく今ので、部隊の半数近くが消し飛んだようだった。


 この魔法の威力は、尋常じゃない。アルフィン姉以上か!?

 

「総員、回復薬で仲間を救助して後退しろ! コイツは、俺とアルフィン姉で相手する!」

「わかりました!」


 強化兵でも、まともな戦力にはなり得ないと判断した俺は、すぐ様、後退を命じた。

 これ以上、兵を殺される訳にはいかない。


 幸い、聖教会に属する強者がいることを想定し、俺が率いてきた兵には回復薬を持たせていた。

 即死しなかった者は、回復薬で助けられる筈だ。


「やったぁああああッ! そうだ、カマエル。ゼノンを殺して私を助けるんだぁ!」


 聖女アリシアが、何やら喚き散らしている。

 こいつは、カマエルというのか?


 どうやら聖教会の切り札のようだが、俺の知らない名だぞ。

 一体、何者だ……?


「神罰執行」


 カマエルが、着地した俺に向かって猛然と殴りかかってきた。

 速い。だが、反応できない程じゃない。


 俺はとっさに剣を抜いて、カウンター気味に奴の首を叩き斬った。


「さすがね、ゼノン!」


 アルフィン姉の歓声が響くも、その黄色い声はすぐに凍り付いた。


 カマエルの首と胴体から、無色透明な触手のようなモノが伸びて繋がり、お互いを引き寄せ合ってドッキングしてしまったのだ。


「す、すごいじゃない!? この意味不明野郎! 意味不明な強さだぁ!」


 聖女アリシアが狂喜乱舞する。

 それ以外の者たちは、全員、唖然としていた。


 これには俺も驚いたが、今の光景には見覚えがあった。


 SSランクのスライム系モンスター【ヴォイド・スライム】が、斬撃を無効化する際のエフェクトに酷似しているぞ。


「こいつはもしかして、ヴォイド・スライムの進化種か?」


 その仮説を確かめるために、俺は怒涛の剣撃をカマエルに浴びせた。


「はぁああああッ!」


 ゲームで、未知のモンスターが出現した場合、まずは何系統のモンスターなのか分析するのがセオリーだ。

 モンスターには系統別の特徴や弱点があり、攻略法がある程度、共通している。


 俺がカマエルの身体をいくら斬り刻んでも、奴は、何事も無かったように瞬時に復元した。それどころか、俺の剣が腐食したように崩れだしている。


 おいおい、これはSランクのスライム系モンスター【アシッド・スライム】の特殊能力、【強酸】の効果じゃないか?


「……ってことは、上級スライム種の特殊能力を複数、備えているということか!?」

「ゼノン、援護するわ! 【雷帝】!」


 アルフィン姉が、上空から特大の雷撃をカマエルに叩きつけた。

 だが、カマエルはお構いなしに、反撃の魔法をアルフィン姉に放つ。


「ダメージ評価SS以上。敵性個体は【超回復】(オーバーヒール)の強い影響下にあると判定」

「うひゃ!? 私の魔法が効かない!?」


 無数の火炎弾がアルフィン姉を襲い、彼女は、慌てて身を翻して回避した。

 これで、だいたいわかった。


「新種のスライム系モンスターだな!?」

 

 ヴォイド・スライムは、その不定形の身体で物理攻撃を無効化し、魔法を吸収し、瞬時に再生、復元するという特徴があった。


 しかし、人間に擬態するという能力は、ヴォイド・スライムに無かった。それは、Sランクのスライム系モンスター、【メタモル・スライム】の特殊能力だ。


 おそらく新種のスライムが、人間に擬態しているのだと結論づけた俺は、アルフィン姉に呼びかけた。


「アルフィン姉、コイツの弱点はおそらく炎だ! 炎で焼き払ってくれ!」


 スライム系モンスターに共通した弱点が炎だった。例外は無い。


「えっ!? よっしゃぁああ! 炎は私の十八番だわ! 【炎帝】!」


 アルフィン姉は、地上に急降下しつつ爆炎を放つ。魔法の威力がパワーアップしており、こんな炎を喰らったら、スライム系モンスターは消し炭間違いなしだ。


「管理者スキル【虚無】」


 しかし、カマエルが手をかざすと、その前の空間がぐにゃりと歪んだ。

 地上を盛大に焼き払ったアルフィン姉の爆炎は、その空間の歪みに飲み込まれて消える。


「あれ!? 私のドラゴンの炎が効かない!?」

「いや、これで決まりだ……炎が弱点で間違いない!」


 俺の知らない未知のスキルでガードしてきたのには驚いたが。これはつまり、ダメージを受けるのを嫌って、防いだということだ。


「アルフィン姉、俺の剣に炎の魔法を【付与】(エンチャント)してくれ!」

「なるほど、奴の身体に魔法剣で、直接炎をぶち込むのね!」


 アルフィン姉が俺の剣の柄に触れて【炎帝】の魔法を【付与】(エンチャント)してくれた。刀身が紅蓮の猛火を纏う。

 

 だけど、おそらくこれだけじゃ勝てない。

 もう一段階上の攻撃じゃないと、奴は倒し切れないと俺は直感した。


【過剰回復】(エクセシブ・ヒール)!」


 さらに、俺は【過剰回復】(エクセシブ・ヒール)の剣への【付与】(エンチャント)を試みた。


 アルフィン姉を正気に戻した時に使った【付与】(エンチャント)の重ねがけだ。

 炎の魔法剣が、眩い光を放つ。魔法の腕が上がったのか、今回は一発で成功した。


「嘘! 【二重付与】(ダブル・エンチャント)!? わ、私でもできないのに!?」


 アルフィン姉が驚愕する。


「……データベースに存在しない新種の魔法剣を確認。対象の脅威度を引き上げる」


 カマエルの声に、警戒の色が宿った。

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