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第59話。ヴァレリアと結婚を誓う

「アルフィン姉、頼んだぞ!」

「任せておきなさい。一足先に行って、聖女様をぶっちめるわ!」

「ちょ、ちょっと待てえぇええッ!」


 アルフィン姉は、喚き散らすハロルド王太子を小脇に抱えると、暴風のように空を飛んで行った。


 これで聖女アリシアはお終いだ。


 ハロルド王太子のいる関所を、義勇軍は決して攻撃できず、武装解除するしかない。


 聖教会の工作員たちは、徹底抗戦するかも知れないが、アルフィン姉がいれば問題無く蹴散らせる。

 

「よし、聖女アリシアと決着をつけに行こうか、ヴァレリア」

「ええ、そうね……ッ!?」


 ヴァレリアと共に馬へ乗ろうとした瞬間、彼女の表情が凍りついた。

 そのアメジスト色の瞳が、ここではない何処かを見つめている。


「……ゼノン、まずいことになったわ」

「どうしたんだ?」

「国境線に埋めておいた『骨』たちが踏み潰されている。帝国軍が、ダラム城へ向けて進軍しているのよ!」

「帝国軍が!?」 


 まるで図ったようなタイミングだ。偶然とは思えない。


「……これは、おそらくアリシアが、レティシア皇女と手を結んだな」


 そう考えるのが、妥当だった。

 やはり聖女アリシアは、最後の悪足掻きをしてきたようだ。


「その可能性が高いわね。私は城主として、ダラム城の防衛に向かうわ」


 俺はしばし考え込んだ。


 聖女アリシアの義勇軍は今や4000人程度、中には聖教会の暗部に属する強者もいるだろうが、帝国軍の方が脅威度が圧倒的に高い。


 ダラム城に戦力を集中させるべきだった。


「わかった。全軍の九割をヴァレリアに預ける。俺は聖女アリシアを捕らえ次第、すぐに駆けつける!」


 俺もダラム城に向かうべきか一瞬、迷ったが、考え直す。


 俺が関所に向かわなければ、せっかく用意したハロルド王太子という切り札が、聖女アリシアによって丸め込まれ、逆に俺たちに牙を向いて来るかも知れなかった。


 そうなれば、辺境伯軍は背後から切り崩される。まずは、後顧の憂いを断つべきだ。

 それに聖女アリシアから、レティシア皇女の戦術に関する情報が手に入る可能性が高い。


「ヴァレリア、絶対に無理はするなよ。俺が到着するまでは籠城に徹してくれ」

「ええっ。わかったわ、ゼノン」


 俺とヴァレリアは抱き合って、別れを惜しんだ。

 思えば、ヴァレリアと出会ってから、彼女と別行動を取るのはこれが初めてだ。


 できるだけの手を打ったが、まだ破滅の運命は完全に覆ったとは言い難い。

 ヴァレリアが死ぬかも知れない未来に、俺は恐れを抱いていた。


 もし、【因果のループ】が存在するなら、なんらかの不測の事態が起きる可能性がある。


 もし、この別れが永遠のものになったら? いや、そんな未来は、俺が絶対に叩き潰してやる。


「ヴァレリア、この戦いに勝ったら……俺と結婚式を挙げてくれないか?」


 ヴァレリアは美しいアメジストの瞳を驚きに見開いた。

 彼女への想いをのせた言葉が、口から溢れ出す。


「俺はヴァレリアと、これからも、ずっと一緒にいたんだ」

「ゼノン、本当? う、うれしい……私も同じ気持ちだわ」


 ヴァレリアは、瞳を潤ませて俺を見上げてきた。


「……だから、絶対に死ぬなよヴァレリア」

「もちろんよ。あなたの作った回復薬もあるし、私は絶対に死なないわ。あなたも約束して、私を置いて絶対に死なないって」

「俺には【超回復】(オーバーヒール)があるんだぞ。ヴァレリアを残して死んだりするものか」


 俺は死なないし、ヴァレリアも決して死なせないと固く誓った。

 お互いの温もりを魂に刻みつけるように、俺たちは強く抱き締め合う。


 たとえ、聖女アリシアと帝国軍が手を組もうと、因果律が未来の改変を許さないと強制力を発揮して来ようと、俺はヴァレリアを決して手放したりしない。


 俺は馬に飛び乗った。

 いつまでもヴァレリアの温もりを感じていたいが、時間が無い。

 ここからの1分1秒が、勝敗を分ける。


「ゼノン、武運を!」

「ヴァレリアも!」


 ヴァレリアが手を振って、見送ってくれる。


 俺は2000人ほどの兵を率いて、聖女アリシアが攻め寄せてきた関所へと疾走した。

 一刻も早く聖女アリシアと決着を付けて、ヴァレリアの元に急がねばならない。


 やがて、地響きと共に、腹に響く轟音が聞こえてきた。

 噴煙が上がり、魔法の光が弾けている。アルフィン姉が派手に暴れているらしい。


 帝国軍と組んだ聖女アリシアは、関所への攻撃を強行したようだ。

 それは、それで好都合だ。これで、奴らは賊軍となった。


 この状況で聖女の命令に従っているのは、おそらく聖教会の工作員だけだ。そいつらを叩き潰してしまえば、俺たちの勝ちだ。


「あっ、ゼノン! やって来たわね!」


 空からアルフィン姉の大声が降ってきた。

 見上げれば、姉が地上を指差している。


「今ちょうど、敵兵を蹴散らし終えたところよ!」

「ゼノン様! 聖女の義勇軍は、みな逃げ出しました!」

「アルフィン様のおかげで、こちらの損害は、ほぼありません!」


 さらに関所の城壁上に立った守備兵らが、声を張り上げて報告してくる。

 大勝利のようだな。


 関所の門が、俺たちを通すべく開かれる。

 そこを潜り抜けると……


「いやぁああッ! 離しなさい、私は聖女アリシアよ! 神に選ばれた救世主なのよぉおお!」


 兵に捕らわれた聖女アリシアの悲鳴が虚しく響き渡っていた。


「黙れ! 国王陛下からお前には捕縛命令が出ている。正式な逮捕状があるんだぞ!」

「私に激甘な国王陛下が逮捕状!?」

「さらに、王太子殿下に弓引いたお前は、完全な反逆者だ! 極刑を覚悟するんだな!」


 俺は馬の腹を蹴って、聖女アリシアに猛スピードで駆け寄る。


「聖女アリシア! 帝国軍と組んで、俺たちを攻撃してきたな!? レティシア皇女とどんな作戦を立てたのか、洗いざらい吐いてもらぞ!」

「ひっ!?」


 聖女アリシアが、俺に怯え切った顔を向けてきた。


 奴の罪の告白は、もはやこの際、どうでも良い。

 ヴァレリアを守るために、レティシア皇女の作戦を1秒でも早く聞き出さねばならなかった。

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