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第55話。ざまぁ回。罠に嵌った聖女アリシア、破滅に向かう最悪の選択をする

【聖女アリシア視点】


「え~と。『グレイヴァン辺境伯領の援軍に来ておきながら、領主バルドの解毒のために先行することを拒否するなら、聖女アリシア殿自身が帝国と内通していると判断し、それ相応の対処をいたす』以上」

「は、はぁ……!?」


 驚くべき通告だった。

 しかも、筋が通っていて、反論しようにも、反論できなかった。


「これが、辺境伯軍総大将ゼノンの言葉ね。それじゃ、私はこれでね!」


 アルフィンは地面を蹴って、天高く飛び立った。そのまま呆然とする私たちを残して、空の彼方に消えてしまった。


「せ、聖女様。これは……いかがいたしましょうか?」


 聖教会の工作員が、血の気の失せた顔で尋ねてきた。


「くそッ……!」


 私は唇を強く噛んだ。

 ゼノンの罠に完璧に嵌められてしまった。


 アルフィンの申し出を断れば、「領主の治療を拒否した=帝国と通じている」と見なされる。私は裏切り者扱いされ、辺境伯軍に捕縛されるだろう。

 相手の言ってることに筋が通っているので、濡れ衣だと騒ぐこともできない。


 事実無根というなら、バルドの解毒になぜ行かないのか? という話になる。


 かといって数名の供を連れて、のこのこ出て行けば、待っているのはおそらく、拘束と断罪。


 私には、ゼノンの婚約者ヴァレリアを殺そうとした確たる罪がある。

 ゼノンが総大将になっているのだとしたら、領主代理として、領主に認められた自治権を使って、私の罪を裁くことが可能となる。


 この罪については、ヴァレリアが王太子暗殺を企てた大罪人であり、王国のためにあの女を誅殺しようとしたという言い訳で逃れることができるかも知れないが……


 やはり、行方不明となったギデオンは、ゼノンの手の者に捕縛されているに違いない。

 そうでなければ、こんな強気な策は打って来ないだろう。


 だとしたら最悪だった。


 ギデオンが罪を暴露したら、ヴァレリアと私の立場は逆転する。未来の王妃が、大罪人に早変わりだ。


 【拷問官】スキルを持つ者が、アスフォデル公爵家にいる以上、それはすでに成されたと考えるべきだった。


 つまり、このままでは私は王太子暗殺未遂事件の黒幕&ヴァレリアを襲撃した反逆者として処刑されるに違いない。


 背中に嫌な汗が、ブワッと滲み出る。


 このまま義勇軍を置いて先行しても、義勇軍と共に辺境伯領に向かっても、待っているのは確実に破滅!

 

 厄介なことに、アルフィンは私の明確な罪の証拠や、逮捕状などを突きつけては来なかった。


『お前を裏切り者だと疑っている。無実を証明したければ、単独で領主を癒しに来い』


 と言って来たのだ。

 故に……


「なんだ、さっきの使者は!? 俺たちの聖女様に対して、失礼だぞ!」

「俺たちの中に、王国を売る奴なんている筈が無い!」

「聖女様は潔白です! 聖女様、こうなったら、あの娘が望んだ通り、堂々と乗り込んでやりましょう! 俺がお供します!」


「そうです! 領主バルドを癒して、聖女様の正義と潔白を証明してやるのです!」

「聖女様をバカにしたあの女の鼻をあかしてやりましょう!」

「そうだ! そうだ!」

 

 私を信じる者たちに囲まれて、私は立ち尽くした。

 義勇兵たちは、私に無実を証明するように強く勧めてきた。

 そのために、先行して敵地に飛び込めとね。


「ハハハッ、そ、そうね……!」


 私は乾いた笑いを返すしかなかった。


 まさか、剣聖バルドを裏切り者扱いして攻撃するつもりが、逆に裏切り者扱いされて罠にかけられてしまうなんて……


 ゼノン・グレイヴァン、やはり恐ろしい策士だわ。

 このままでは、義勇軍からの私への信頼は地に落ちる。義勇軍は、崩壊だ。


 く、くそぅ! かくなる上は……

 馬車に戻った私は、通信魔導師の少女の腕を乱暴に掴んだ。


「帝国軍の総大将レティシアに連絡を取れ! 帝国軍と手を組んで、辺境伯軍を攻撃するんだ!」

「えっ!?」


 少女は信じられないといった面持ちで、硬直した。


「そ、そのようなことをして、もし失敗したら、私たちは全員、反逆者として処刑されますが!? 聖女様にとってもリスクが大き過ぎます!」


 その通り。帝国軍と手を組めば、それは王国への明確な裏切りとなる。


 だけど、レティシア皇女に協力して辺境伯軍に勝てば、その手柄で私はバルザーク帝国に迎え入れてもらうことができるだろう。


 そうすれば、私だけは生き延びることができる!

 他の連中がどうなろうと、私だけが生き延びられれば、それで良い!


「教皇猊下の命令だ! ゼノン・グレイヴァンの抹殺こそ、神の御心だぞ! 勝つためには、奴を殺すためにはそれしか無い! さっさとやれ!」


「た、確かに教皇猊下は、そのようにおっしゃっておられましたが……!」

「そうだろう!? なんとしてもゼノンとヴァレリアを──邪魔者をすべて抹殺するんだぁ!」


 そうだ。

 邪魔者をすべて消すことに成功すれば、私にゾッコンのバカなハロルド王太子を丸め込んで、王妃になれる可能性もまだ僅かながら有る。


 たとえギデオンが捕らえられて罪を自白させられていたとしても、それは娘ヴァレリアを王妃にさせたいアスフォデル公爵の自演であると、言い逃れることによってね。


 そうだ、僅かな光明だろうと、徹底的に喰らいつてやる。なにより……


「ヴァレリアと、その婚約者に断罪されるなんて、この私のプライドが許さない! 私は神に選ばれた乙女、聖女アリシアなのよ!」


 私こそ神に愛された特別な存在なのだ。私には神のご加護がある!

 この時、私は本気でそう信じていた。最後に勝つのは、この私なのだと。


 しかし、この選択が、私を完全なる破滅に追い込むことになるのだった。

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