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第49話。ざまぁ回。聖女アリシア、ゼノンが自分よりはるかに格上と知って衝撃を受ける

【聖女アリシア視点】


 ……でも、おかしい。

 私は深く考え込んだ。


 ゼノンは手紙でアスフォデル公爵に、ギデオンの捕縛を依頼するとのことだった。


 私はそれを妨害するために、聖教会の工作員にその使者を襲撃させて、手紙を奪わせた。

 手紙の内容もわかったのだけど、ゼノンはギデオンの潜伏場所など把握していなかった。


「なら、そもそもアスフォデル公爵が動く筈がない……!」


 そう思って油断していた。

 だけど、現実として私の護衛のSランクアンデッドが消え、ギデオンとも連絡が付かない。


 その時、ふと頭に閃くことがあった。


 聖教会の工作員は、伝書鳩で情報を送り合っている。なら工作員を捕らえて脅せば、その通信網を利用して、偽の知らせを送ることも可能では?


「……まさか手紙を奪うことに成功したという報告が、敵の偽装だったなんてことは」


 冷や汗が、どっと噴き出た。

 有り得ないとは、言い切れない。

 なにしろ、有り得ない事態が起きているのだ。

 

 私は通信魔導師の少女を怒鳴りつける。


「お前は引き続き、ギデオンとの通信を試みろ! それから、グレイヴァン辺境伯家からアスフォデル公爵家への使者を襲撃した件について、誰かに詳しく調べさせて報告させろ! 今、すぐだ! わかったかクソ女!?」

「はっ、はひぃいい! わ、わかりました!」


 私は親指の爪を噛みながら、さらに考え込んだ。


 アスフォデル公爵家には、スキル能力によって、どんな者にも口を割らせることができる凄腕の拷問官がいるという。


「もしアスフォデル公爵がソイツを使って、捕らえた工作員から情報を引き出して、情報戦を仕掛けてきているのだとしたら……!? 私は完全に後手に回っている!?」


 私はヴァレリアの護衛を全滅させて、アスフォデル公爵家を少々、侮っていたのかも知れない。

 そうだ。奴らは仮にも、王国最強の剣と謳われる貴族の中の貴族じゃないか。


「ちくしょうッ! ちくしょうッ!」

「きゃ!? お止めください聖女様!?」


 私は激高して、少女を何度も殴りつけた。


 最悪なのは、ギデオンが捕らえられて、奴が王太子暗殺未遂事件の実行犯であり、私がその黒幕であることが、バレることだ。


 その瞬間、私は未来の王妃から、大罪人に真っ逆さまに転落する。

 そうなれば、この戦で辺境伯軍を滅ぼしたところで、何の意味もない。


 クソッ! もしかして、私が敵の──ゼノン・グレイヴァンの策に嵌っているなんてことは……


 だって、よく考えてみれば、奴が【魂喰い】(ソールイーター)との戦闘中に、アスフォデル公爵に手紙を送るとわざわざ【魂喰い(ソールイーター)に伝えたのが、不自然だった。


「そうだ。そんなことをする意味が無い!」


 ゼノンが【死霊使い】(ネクロマンサー)と、使役されるアンデッドは精神的に繋がっていると知っており、ギデオンを隠れ家に誘き寄せる目的で、言ってきたのだとしたら?


「……い、いや、有り得ない筈」


 私はその不穏な考えを精一杯、否定する。


 だって、Sランクモンスターとの戦闘中に、そんな謀略にまで知恵が回る訳が無い。

 武力も知力もスキルも超一流なんて、そんな男がこの世にいてたまるものか。


 なにより、聖教会の隠れ家の場所は、幹部でもごく一部の者しか知らなかった。ゼノンが知っていることなど、100%有り得ない。

 

 たとえアスフォデル公爵への使者を襲った工作員を捕らえて拷問したとしても、下っ端にはあの隠れ家の場所などわからない。

 なら、この心配は杞憂の筈……


 そうだ。そうに違いない!


 隠れ家にいるギデオンと通信魔導師は、おそらく、たまたまふたりとも急病になったか、火災でも起きたのだ。後で誰かに確認させれば、きっと問題ないことがわかる筈だ。


 そう思って安心した時だった。

 

「あっ!? バルザーク帝国軍に潜伏中の通信魔導師の信徒からの報告です! 通信傍受を防ぐために報告が2日ほど遅れたとのことです!」


 少女が驚愕の声を上げた。

 帝国軍には、聖教会の工作員をスパイとして送り込んであった。


 辺境伯軍にも送り込んであるが、通信魔導師があの脳筋集団にいては不自然なため、そちらからの連絡は手紙に頼ることなり、行軍中は受け取るのが難しかった。


「辺境伯の息子ゼノンによってダラム城が奪還され、帝国軍は大敗したとのことです!」

「なっ、なんですって……!?」


 私はあまりのことに衝撃を受けた。

 辺境伯軍は連敗を繰り返し、かなり追い詰められているとの話だった筈。


 それが、ま、まさかの大逆転勝利!?


「ゼノン・グレイヴァン、い、一体何者!? 軍を率いた戦にかけても超一流ということ!?」

「そ、それとさらに驚くべき報告が……!?」

「まだ何かあるのか!?」


 私は苛立ちに任せて、少女の首を掴んだ。

 少女は涙目で応える。


「ひっ! そ、それが、大量の負傷兵が次々に復活し、ダラム城の修復工事に向かっているとのことです! 帝国軍の偵察隊がそのように伝えてきたと!」

「まさかソレって【癒しの奇跡】……!?」


 ちくしょう! ゼノンの【超回復】(オーバーヒール)は、やはり私の存在意義を脅かす最悪のスキルだわ!


「はい! その通りかと! しかも、帝国軍内では、ゼノンの【癒しの奇跡】を受けた兵は、肉体が超強化され、ゴーレムを倒せるほどになったという噂が広まっています!」

「な、何んだ、ソレ?」


 私は理解が追いつかず、しばし呆気に取られた。


「ゼノンの【超回復】(オーバーヒール)とは、【聖女】のように身体を回復するだけでなく、回復した身体を強化するスキルなのではないかということです!」

「そ、ソレって……【聖女】の完全上位互換スキルだってこと!?」


 私は足元の地面が崩れ去っていくような衝撃と目眩を覚えた。

 ゼノンは想定よりも、はるかに強大だったのだ。


「……【超回復】(オーバーヒール)。神に仇なす力。第一級殲滅対象」


 意味不明野郎のカマエルが、ブツブツと意味不明なことを呟いていた。

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