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第47話。【超回復】がレベル3進化。この世界で俺だけ回復薬が作れるようになる

 こうなると、俺のテンションも上がる。

 俺は勢いに乗って、怪我人をドンドン癒した。


 だが、夕方ごろになると、さすがに疲れが出てきた。

 昼休憩を挟んだとはいえ、もう500人近くぶっ続けで治療しているからな。


 ヒールは1人ずつにしかかけられないので、効率が悪かった。一万人の治療というのは、想像以上にしんどいぞ。


 とはいえ、敵軍は俺たちの都合など気にしてはくれない。今のうちに1人でも多くの兵を復帰、強化しなくてはならなかった。


「うっ……」


 その時、ヴァレリアが俺にもたれるようによろけた。俺は驚いて、彼女を支える。


「ヴァレリア、大丈夫か? 悪い、そろそろ休憩にしようか」

「……へ、平気よ」


 気づけばヴァレリアの顔色が、かなり悪くなっていた。


「いや、平気じゃないだろう?」


 日を跨いで行われた昨日の激戦の疲れが残っているのに、無理をさせ過ぎてしまったみたいだ。

 兵たちの治療に夢中になって、彼女の体調の配慮に欠けていたことが、悔やまれる。


「駄目よゼノン。今は、がんばらなくてはならない時でしょう?」


 ヴァレリアは気丈に言い放った。


「私は持てる力のすべてを尽くしてあなたを支えると誓ったわ。だから、気にしないで」


 その気持ちは、とてもうれしかった。 

 だけど、ヴァレリアは生まれつき心臓が弱いらしい。ヒールでは、生まれつきの体質までは改善できない。


 彼女が過労で倒れでもしたら、それこそ命に関わるんじゃないかと心配になる。


「ヴァレリアが倒れたら、本末転倒だろう? 誰もヴァレリアの代わりにはなれないんだぞ」


 昨日、「私はゼノンを心から愛しております」とハッキリ言われたことが、心に強く刺さっていた。

 おかげで、ヴァレリアのことが、ますます好きになってしまっている。


 なんとか、ヴァレリアの負担を減らしてやりたいが……彼女は強情で、何か代案でも無い限り、言い出したら聞かないからな。


「……アルフィン姉は、ダラム城から動かせないしな」


 今の俺は、アルフィン姉からも魔力供給を受けることができるようになっていた。

 だが、姉にはダラム城の防衛を任せている。


 父上が倒れたことで、自らの策が決まったと確信したレティシア皇女が、ここぞとばかりに侵攻してくるのを牽制するためだ。


 ダラム城は城壁の修復工事中だ。なにより、兵糧を失い大打撃を受けたとはいえ、帝国軍はまだ5万近い大兵力を誇っている。


 奴らは国境まで後退し、本国からの補給を受けて、軍の立て直しを図っている最中だ。

 だが、レティシア皇女も、侵攻に失敗したとなれば皇帝からお咎めを受けるため、こちらが隙を見せれば、ここぞとばかりに攻めかかってくるだろう。


 防衛力を整える時間を稼ぐために、アルフィン姉という最大戦力を、国境防衛の要であるダラム城に張り付かせておく必要があった。


 姉にはフェリクスを副官として付けたので、ドラゴン娘を怪物として見る至極残念な者がいたとしても、兵の統率に問題は無いだろう。


 フェリクスも「アルフィンお嬢様は、相変わらずお美しくあられます!」と、姉を温かく迎え入れてくれた。

 フェリクスが、マトモな感性の持ち主で、本当に良かった。


「私を気遣ってもらえるのはうれしいけど。ここにいる兵たちを、一刻も早く救わなくちゃならないわ」


 劣悪な環境に置かれた負傷兵たちを目の当たりにして、ヴァレリアの情熱に火が付いたらしい。


「大丈夫よ。【癒しの奇跡】の使い手であるあなたの側にいれば、命を落とすなんてことはないでしょう?」

「いや、俺のヒールは万能じゃない。過労や感染症といった病気までは回復できないんだ。とりあえず、少し休もう」


 病気を癒すための回復魔法も存在するが、まだスキルレベルが低いためか、覚えられていなかった。

 ヴァレリアが感染症にかかったら、俺にはヒールで生命力を回復する対処療法しかできない。


「いえ、もう少し、がんばりましょう。失った命は戻って来ないのよ」


 ヴァレリアの目には決然とした意志の光が宿っていた。

 護衛のシュヴァルツ・リッターを死なせてしまったヴァレリアは、もう二度と配下を死なせたくないと考えているようだ。


 高潔なその精神には感服するが……

 これは困ったな。


 どうやって、ヴァレリアを休むように説得するか、頭を悩ませた時だった。

 俺の頭の中にシステムボイスが鳴り響いた。


『おめでとうございます。

 スキル【超回復】(オーバーヒール)がレベル3にランクアップしました!


 新たな能力【回復薬作製】(ポーション・クラフト)が使えるようになりました。


 飲むと怪我が治る回復薬を作製できる能力です。

 消費MP10で、1リットルの水を回復薬に変換できます。1リットルの回復薬は、ヒール10回分の効果があります。0.1リットルで、ヒール1回分の効果です』


【回復薬】(ポーション)!?」


 思わず、素っ頓狂な声を出してしまった。

 

 聖女しか回復魔法が使えない鬼畜仕様のこのゲームには、無論、回復薬なんて存在しなかった。


 ゲーム開発責任者いわく、「そんなチートアイテムが存在していたら、人口爆発で世界が滅ぶからだ」そうだ。

 そのため、「回復薬など世界に有ってはならない!」とインタビュー記事で答えていた。


 しかし、まさか、回復薬を実装すべきと主張していたという一部の開発者が、こっそりと回復薬のデータをゲーム内に仕込んでいたのか?


 インタビュー記事によると、「回復薬は必要だ。ゲームの難易度が跳ね上がるじゃないか!?」「いいや、俺は回復魔法も回復薬も嫌いなんだ! 世界に有ってならない悪魔的な存在なのだ!」と開発現場はかなり揉めていたらしい。


 変なこだわりを持つ人が開発現場のトップにいると大変だなと、記事を読んで思った記憶がある。


「……どうしたのゼノン?」


 ヴァレリアが沈黙した俺を訝しんで、目をパチクリさせた。


「ヴァレリア、今日はもう、やめだ。もう休むぞ」

「えっ!?」


 突然、手を止めた俺に、ヴァレリアは面食らった様子だった。


「でも、それじゃ……!」


 食い下がろうとする彼女に、俺は言い放った。


【超回復】(オーバーヒール)が進化して、大勢の怪我人をもっと効率良く癒やすことができる能力を手に入れたんだ!」


 今のシステムボイスの説明によれば、ヒール1回分の消費MPで10人を癒す回復薬が生み出せることになる。

 効率は一気に10倍だ。これなら……


「おそらく3日もかからずに、ここにいる怪我人、全員を癒やすことができるぞ!」

「えっ!? み、3日で一万人の治療!? そ、そんな、そんなのまさに神の奇跡だわ!」


 この場にいる全員が、驚愕に息を呑んだ。


「い、いや、神の奇跡というより世界のバランスを壊す悪魔の力では……!」


 一人、軍医だけがなにやら恐怖におののいた顔をしていた。

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