第44話。一万人の負傷兵を癒して世界最強の軍隊を作ることになる
「あっ、そうか。確かにね……って、ことは私も、もっともっと強くなれるってこと!?」
アルフィン姉も、期待と興奮に目をキラキラさせた。
「父上の質問に答えるとその通りです。俺の【超回復】を使えば、負傷兵を復活させることで、世界最強の軍隊が作れます。アルフィン姉も、もっと強くなれると思うぞ」
「おおっ、やったぁ! それじゃ、どんな無茶な修業でもできるわね!? 何十キロもの重りをつけた状態で魔物の群れと戦うとか! 絶海の孤島にあるドラゴンの巣に忍び込んで卵をとってくるとか! それで瀕死の重傷を負うたびに、ゼノンに復活させてもらえば、すぐに世界一の大剣豪になれるわ!」
「えっ……?」
そんな無茶苦茶な修業をしたら、命がいくつあっても足りないと思うが……
「よし、決めた! 私はドラゴン討伐の修業をやるわ! ゼノンのために、爆速で世界最強になるのよ!」
アルフィン姉は、右拳を突き上げた。
「いやいや、アルフィン姉! 死んだら死ぬんだから、そんな漫画みたいな修業はやめてくれ!」
「マンガ?」
俺は慌てて止めた。
姉は小首を傾げてキョトンとしていた。
昔から彼女は、父上に禁止された魔法剣に陰で打ち込んだりなど無茶なところがあったが、ドラゴン娘化したことでか、それに拍車がかかってきている気がした。
「えっと、父上、もうおわかりでしょうが、俺の身体は、アルフィン姉に匹敵するくらいの身体能力を得ています。これも、【超回復】によるものです。怪我からの回復を繰り返せば繰り返すほど、強くなれます」
「なっ、なんということだ。それ程のスキルをワシは、外れ扱いしてしまうとは……!」
痛恨の表情を浮かべる父上に、俺は微笑みかけた。
父上をなじったところで、意味は無いからな。
「いえ、俺が魔法系スキルを得たら、それは俺が剣の修行をサボっていたと思われても、仕方がないと思います」
「このワシを許してくれるのか!?」
父上は驚きに目を見開いた。それから、深く頭を下げる。
「ゼノンよ。これまでの仕打ちは、この通り、謝罪する。できれば、これからもワシの後継者として、この地を守るために力を貸してくれぬか?」
プライドの高い父上が、ここまで素直に謝罪を口にするとは意外だった。
俺は頷いた。
「もちろんです、父上。俺が一万人以上の負傷兵を世界最強の兵に生まれ変わらせます。それでこの地は安泰です」
「誠か!?」
父上の顔が、希望にパッと輝く。
ここで俺は、破滅の運命を変えるための大勝負に出ることにした。
今回、帝国軍に大勝利したが、レティシア皇女は取り逃がしてしまった。
一万人以上の負傷兵を回復させるのは、さすがに時間がかかるし、ここに聖女アリシアの義勇軍がやってくれば、戦況はまだどう転ぶかわからない。
「だから、俺を辺境伯軍の総大将にしてください。聖女アリシアが、この地を滅ぼすために仕掛けてくる前に!」
「……なっ、お前を総大将にせよだと?」
途端に父上の表情が強張った。
「ちょ、ゼノン。何を言っているの? いくらなんでもソレは……!」
アルフィン姉が絶句している。
俺の言っていることは、領主の座を寄越せと言っているのに等しい。軍の総大将とは、すなわち領主だ。
本来なら、いくら手柄を立てても俺の方からこんなことを言い出せば、反逆だと受け取られてもおかしくなかった。
だが、父上は聖女を救世主と信じているタイプの人間だ。
聖女アリシアが計略を仕掛けてきた場合、父上がトップにいれば、いかに兵を強化したとしても、辺境伯軍は大混乱に陥って負ける危険があった。
次の局面では、ゲーム知識を持つ俺が全軍を指揮できる立場にいなければ、勝利はおぼつかない。
「しかも聖女様が、ワシらは滅ぼしに来るとは、いかなる了見だ? 聖女様は、神の御使い。この世界で唯一の【癒しの奇跡】の使い手であろう……あ、いや、今ではそうではなくなったが」
歴代聖女が、人々に癒しと救いをもたらしてきたのは事実だ。その聖女が敵と聞いた父上は、納得しかねる様子だった。
しかし、俺たちの破滅の運命を覆すためには、この点だけは、絶対に理解してもらわなければならない。
「実は聖女アリシアは、ヴァレリアを抹殺すべく襲い、その護衛であるシュヴァルツ・リッターを全滅させました」
「はっ? なに? 真か、ヴァレリア殿……!?」
「その通りです、バルド様」
ヴァレリアは首を縦に振った。
「聖女アリシアは、帝国軍にわざと王国を侵略させるべく、そのような暴挙に出たのですわ。すべては、自分が救世主と持て囃されるために。その名声を利用して王妃となり、この国を牛耳るために! そのために、聖女アリシアは、私に王太子暗殺未遂の濡れ衣を着せました。お父様もその計略によって王都守護役を解任されています」
「なに!?」
「ちょ、ちょっとホントなの!?」
父上だけでなく、アルフィン姉も仰天していた。
「だからこそ、私はゼノンを辺境伯軍の総大将にすべきだと思っております。聖女アリシアが、いかにこの国を支配しようと暗躍したとしても、王家の血を引く私の夫であり、真の英雄であるゼノンの前では、その存在は霞みますわ。人々はやがて、ゼノンこそ王になるべきだと叫ぶようになるでしょう!」
「はぁっ……!?」
俺は耳を疑った。
辺境伯軍の総大将どころか、王になるべきだとまで言うとは、いくらなんでも話が飛躍し過ぎている。
「いや、何を言っているんだヴァレリア?」
「あなたが望まなくても、民はいずれそれを望むようになるわ。あなたは王の器であり、王冠を手にする資格を備えているのだもの。当然でしょう?」
と、当然だって……?
「アスフォデル公爵家の令嬢にここまで言わせるなんて……ゼノンってば、すごいわね」
「う、うむ。ワシも驚いた」
父上とアルフィン姉も、目を丸くしていた。
「だが、ゼノンならば確かに、真の英雄と言われるようになっても、おかしくはない。それだけの将器と武力を備えておるからな」
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